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スコップひとつで動き出す/地中をめぐる水講座 はじめに

庭先のグズグズが気になる。家の水はけをよくしたい。風通しのいい家にしたい。そんなとき、まずどんなことをしますか?

たいていの人は、砂利やコンクリートで固めたり、草や植物をすべて除去してしまったりするのではないでしょうか。でも、それって本当に快適になるんでしょうか?

夏は室温も外気温も上がり、冬は乾いた風が吹き、雨が降ると湿気て降らないと乾燥します。そこで吹く風の匂いは、いい匂いがするでしょうか?


大きく変化した長良川

わたしは30年以上前から、リバーカヤックで川下りをしてきました。岐阜県の長良川が好きで、郡上八幡から美濃にかけて、区間はさまざまですが、年に数回、毎年下っています。
長良川は周辺に住むひとたちにとても愛されている川で、人工物も少なく、下っても楽しい川だからです。

はじめて下ったのは、カヤックに没頭し始めた1990年の夏。その当時は雨が降っても濁らず、水もじょじょに増えて、ゆっくりと水位が下がっていました。大雨が降ると1週間ほど水位が高めで、ゆっくり時間をかけて水位が下がっていました。もちろん濁りもほとんどありません。川底をのぞいたときの感動は、今でも忘れられません。

現在の長良川は、大雨が降るとカフェオレのように茶色く濁り、水位も一気に、昔に比べるととてつもなく上がります。減るのもはやくて、漕いでいても目に見えてわかるくらいに、ぐんぐん水位が下がります。
逆に雨が降らない時期が長く続くとカツカツで、流量が減って通れるルートが限られてしまうくらいに、水がなくなります。

長良川がこんな風になったのは、長良川に沿って高速道路(東海北陸自動車道)ができたためだと思っています。山の木を伐採し、重機で踏み固めることで山の保水力が下がり、降った雨がそのまま川へ流れ込んでいるからです。
実際に長良川では、この30年間で大きな洪水が2回、起こっています。ただ雨量が増えたわけではなく、山が固められているのも遠因だと感じています。

「山のようすが川に影響してる」
そんなことを、川の流れの上で感じていました。

土の中でも水が流れている

ちょっとしたきっかけで、矢野智徳さんの「大地の再生講座」に出会いました。矢野さんは滞った土の中の水と空気を動かして、山や川を元気にする内容の講座をひらいていました。

ワークショップを通じて、土の中にも水や空気の流れがあることを知りました。リバーカヤックは流れを読み取ってボートを動かすので、川の流れを読むのは一緒です。矢野さんの教えがすとんと胎落ちしました。

地形を読んで、土の中の水の流れを考える。小さなスコップと鋸ガマでも、環境が変わる。とどまっている水の動きがあれば、土を掘って動かす。水脈を読むコツや、川に倣って点穴を掘る場所がわかると、効果が出てくるのを実感してきました。

体の中の血液と一緒で、土中の流れが滞ると自然環境の不調が起きてくるのです。
地表を流れる水と同じように、土の中の水も速すぎず、とどまらず、ちょうどいい速さで動くと、植物にも、人間にも気持ちいいと感じるようです。
ずっと続けてきて、地表を流れる空気も感じとれるようになってきました。草の刈り方でも、風通しや、植生が変わります。今は草がふんわりと生えた、いい匂いのする庭になってきました。

庭先のグズグズや風通しの悪さを感じるなら、まだだいじょうぶ。そこから自然へと分け入っていける手がかりがあります。

先人の知恵を知る

大がかりに重機やコンクリートを使わなくても、小さなスコップで土の中の水を動かせます。小さな穴をひとつ掘ることで、変化していくようすを知ってほしいです。
実は特別なことではなく、重機やコンクリートなどが一般的になる前の昭和30-40年代までは、暮らしの知恵としてみんながやってきた方法でもあります。土中の水と空気の動きを知るほど、先人の知恵のすばらしさを感じます。土中環境を改善することは、その知恵を自分たちの手にとりもどすことでもあります。

庭先で起きていることは、山や川で起こっていることと同じです。土の中の水や空気の動きを感じながらほどよく動かしていくと、気持ちのいい風が吹きはじめてきます。

日ごろリバーカヤックを教えているので、川の水の動きについて説明するのが得意です。

「水は高いところから低いところに流れる。」
土中の水の動きについても、原理原則がわかれば、効果が出やすくなります。効果を感じられれば、実践するひとも増えるのでは。そう考えて、noteにまとめました。

土の中の水の動き、土中環境の改善について知りたい人への一助になると、うれしいです。

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土中の水と空気を動かすワークショップを、ご予約があれば、おひとりから、毎日開催しています。(参加費/3,000円)
3名以上集まれば、ご自宅の庭などで出張開催もいたします。

続きはこちら。


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