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子どもたちと土中環境改善<広場の水はけにチャレンジ>

土の中の水の動き。
子どもたちに伝えると、おとなよりも感じ取りやすいように思います。

愛知県豊田市のフリースクール「かのこ」で、土中の水の動きを考えるワークショップを実施しました。

参加者は小学2年生から5年生の7人。みんな男の子。
砂場が大好きだった子や、フリースクールの活動で川の作業が好きな子など、土や水に親しんでいる子も多い。

前半は、土の中の水の動きについて考えました。

水の動くしくみについて、考えてみる

水は役に立つ反面、環境を悪くすることもあります。その水の動きについて、説明しました。

人間にとって悪い土中の環境は、二つ。
ひとつは、水が集まって勢いよく動いている状態のとき。大雨が降ると、崖崩れが起きたり、道が削られたりします。
もうひとつは、水がたまって動かない状態。ぬかるんだり、周りの植物の元気がなくなったり、大雨が降ると溜まった水の重さで土壌崩壊が起きたりします。

早すぎず、でも留まらない。その間の「ちょうどよく」ゆっくりと水が動く状態が、人間の環境にとってはいい状態なのです。

やったのはこんな場所

川沿いにある、ちょっと開けた広場。以前、公園をつくろうという計画もあったそうです。地面を見てみると、じっとりグズグズな状態です。
今回は、この場所の水はけをよくするワークをやりました。

沢沿いをさかのぼったつきあたり。平らに整地された日当たりのよさそうな場所。
写真右側に林、左側に沢がある。

山側には、かつて棚田だったところに木を植えた林。
道の奥には砂防ダム、谷川には沢がある。

昔は棚田だった土地に、木を植えて林になっている。

作業の目標は、ぬかるんでいる広場の水はけをよくして、みんなでお弁当を座って食べられる状態にすること。

なぜぬかるむのか

水がはける以上に、水が集まってしまうので、水がたまってしまいます。
対処する方法は、ふたつあります。
ひとつは、水がやってこないように分散させる。ふたつめに、水がたくさんはけるように動かすことです。

水が集中しないように分散させる

水を分散させるのに、ふたつのことをやりました。
ひとつは溝を掘る、もうひとつは柵(しがらみ)を作ることです。

溝を掘る

斜面の地形は、水が地表を一気に移動しやすいので、地中へのしみこみが少ないです。水が直接平らなところへと流れこみます。
「斜面変換線」に溝を掘って、水にブレーキをかけつつ、しみこませるようにします。

斜面の角度が変わっているラインで、溝を掘る。

これは小さなスコップでできる作業。みんなで一列になって溝を掘っていきます。みんな土を掘る作業に慣れていて、あっという間に溝を掘れました。

しがらみを作る

水が斜面を抵抗なく移動するので、広場に水が集まります。
水平×垂直の段差を作ると、水平面では水がゆっくりとしみこみながら動き、段を乗り越える際に、垂直に落ちた水が地面にあたって減速します。

小さな段差(柵)でも水は分散される。キャンプ用のペグハンマーを使えば、子どもでも杭を打てる。

やり方は、水の通り道の近くに水の勢いを弱めるように、柵を作っていきます。手順は、杭を打つ、枝葉を横向きに置く、土を乗せて上面を平らにする、です。

水がはけるように動かす

杭を打つだけでも、垂直方向へと水を誘導します。
この杭を打つ作業も、何気に楽しい。
この杭は、直径3cm程度の木や枝。周辺に落ちているものを利用しました。キャンプで使うペグ用ハンマーで打ち込めるサイズです。

杭と杭の間に枝葉を横に置いていきます。できるだけギュウギュウに詰まった状態になっていると、枝どうしが密着して微生物がいつきやすくなります。やがて柵ごと土へと変化していきます。空気と水が、いい塩梅に隙間を通過し、しみこみながらじんわりと土の中を動いていきます。
平らにした面は、植物のタネや実から根づきやすい環境になります。

子どもたちは水脈を読みとって、水の流れをイメージしながらどんどん柵を作っていきます。たくさん準備しておいた杭が、あっという間になくなってしまいました。

溜まった水を動かす

ぬかるむのは、溜まった水が多すぎて停滞するからです。次に水がはけるように、作業をします。

点穴を開ける

穴を掘ると、高低差ができます。穴の底に向かって水が動き出します。
ぬかるんでいる谷側に点穴を掘って、水の動きを促します。

思いおもいの場所に点穴を掘る

点穴は、川にならって掘ると、水の動きで勝手に掘り下げられていきます。川が自然と深まる部分に相当するポイントに穴を掘るということです。

場所は谷側の水脈付近。水脈は水が大きく動くからです。
正解もなければ、間違いもありません。「適切な場所」があるだけです。

今回は雨の中の作業でした。
水の動きが目に見えるので、小さい子どもにとってはわかりやすかったです。
点穴を掘ると、水脈近くは水が滲み出してきました。

いい場所に掘ると、水がじんわりとしみ出してきた

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作業のあとは、変化を観察することがとても大事です。

土のようすが変わる
生えてる植物の種類が変わる
植物が生える場所が変わる

土中の水の動きは、すぐには効果が出ません。土の中で微生物が動き出して、すき間ができたり、枝葉を分解したり、植物が生えて根が広がったりします。
早くて一か月。長くて1年ほどたってから、気づくくらいのゆっくりさです。水はけがよくなってくると、目に見えて違いが出てきます。

雨の日に水の動きの変化を見てまわるのも、楽しそうです。

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メグル水講座は、小学生を対象にしたワークショップも行っています。

土をいじる作業は、まざまな自然体験の基本になるでしょう。

教え方はただ一方的に聞くだけではなく、どうしてこれをやるのか、何を目的にしているのか、どうなったらいいのか、自分たちで考えて作業をしていく体験型の学習です。
自然界はたくさんの変数があって、その時々で対処していく必要があります。自分で考えて、作業してみて、観察して、また作業して・・と、体を動かすだけではなくて、作業を通じて考える力を養います。

目の前で起こったことにただ対処するのではなく、全体を俯瞰して考え、「そもそも、なんで?」と、原因に思いを馳せる経験にもなります。

今回、子どもたちのようすを見て、大人では気づかない部分に気づけたり、感じとれたり。見えるものが違っているのだなぁ。教える側にとっても学びがありました。

子ども向けのプログラムは、水はけ、点穴掘り、道作りなど、場所や目的に応じてアレンジできます。
子どもたちにこそ、土中の水の動きの作業を体験してほしいです!

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メグル水講座は、毎日、おひとりから開催できます。
フリースクール、自由研究など、目的や場所に応じた出張ワークショップもやっています。

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