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ウェブ解析を巡る連想 Vol.14  ~ セッション分析とユーザー分析

Webマーケティングに不慣れな企業がウェブ解析を始めると、まず初めに「ユニークユーザー(UU)」という指標にこだわりやすい。企業やブランドが対象としている消費者/ユーザーは個客だから、それに対応するのがUUであると考えてしまう。このこと自体は必ずしも間違いではないが、UUに囚われすぎてセッションを軽視してしまうのは避けなくてはならない。ウェブサイト、ことコンテンツの分析にセッションは重要な指標だからだ。極めて初歩的な話なのだが、意外にネット上でそれに触れるコメントが少ないので、今回はそれを説明したい。

◆UUは弱点が多い。
UUは、クッキーで判別される。ユーザーが手動でOFFにしたり、一部のスマホのブラウザがデフォルトでOFFになっている場合などには判別が不能だ。また同じユーザーでも、ブラウザやデバイスの違いを把握できない(GAでは試行中)ので、UUは個人とまでは言い切れない。他に、UUは重複があるので総UU数の内訳となる経路別流入数を示すことができない、ページ遷移を追えない、期間によってマージされるので足し算ができないから手動計算/加工できず解析ツールが吐き出す指数を採用するしかないなど、弱点が多いので利用上留意が必要な指標だ。

◆解析ツールのほとんどの指標は、セッションに紐づいている。
例えばGAでデフォルトで設定されている指標のうち、新規/再訪率、平均セッション時間、直帰率、平均PV数などは、すべてセッションをベースにした指標だ。各種CV指標も基本はセッションベースだ。UUは、ユーザー属性などに限られる。また、経路分析や遷移分析はセッションで行うことが常道だ。

◆セッションは、ユーザーの来訪動機に応じた指標。
ユーザーの来訪にはその都度必ず動機がある。ユーザーAが、最初は「冷やかし」に来訪し、2回目は「購入検討」で来訪した場合には、サイト内の行動はその2回で全く異なる。初回は滞在時間も短く数ページ流した程度でも、2回目は特定商品の動画をじっくり見たり、資料請求ページを閲覧したりする。つまり、コンテンツ(ページ)の成果を検証したい場合、この2回の来訪は別物と考えて、「初心者」と「購入検討者」の来訪という別のユーザーの来訪と見做して分析したほうが、正しい示唆を得られやすくなる。UUではこの動機が異なる2回の来訪を同じユーザーと捉えるので、サイト内行動の差を見分けられず、結果としてコンテンツ(ページ)の成果検証が曖昧になってしまう。このように、「動機に応じた機会別に来訪を評価する」=「セッション単位での分析を行う」ことは、解析方法の主軸であり、理に適っている。

一方で、ユーザー分析のほうが、有効であり適切な場合もある。例えば、あるコンテンツXは、それを閲覧すると1回のセッションだけではCV(例えば資料請求の完了)まで繋げられなくても、何度も接するうちにじわじわと効いてきて、やがてCVしたくさせるような性格だとする。この成果を正当に評価したい場合には、セッション分析ではなくユーザー分析が適す。ユーザーAがコンテンツXを閲覧し、且つCVも完了しているかどうかを1回のセッション内ではなく、セッションを跨ぐ例えば3か月という期間で集計し、Xの期間内でのCV貢献度(当該コンテンツを通過してCVした数や率)を調べる。そうすると、今月初めてコンテンツXに接したユーザーが、結果的に3か月後にCVへ至ったかどうかを検証できる。このようにユーザー分析は、中長期のコンテンツ評価には非常に役立つのだが、GAでは最長集計期間がわずか3か月と制限があってあまりにも短い。

ユーザー分析の利点は、セッションを跨いだ中長期間の「ユーザーの態度変容」を捉えられることだ。DX化を睨むとこの視点は非常に重要であり、GA他解析ツールの同機能はまだまだ発展の余地を残しており、その強化は急務である。

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