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FRB入門#5 逆イールド

【注】7/26配信の記事をもとに、9/15時点の状況を踏まえ上書きしました

前回、「逆イールド」とはなにかなぜ「景気後退(リセッション)の兆候」とされるかを説明しました。今回は過去の逆イールド局面も簡単に振り返ります。

上記は1987年以降の長期チャートです。のシャドーが「景気後退(リセッション)」(NBERベース)です。そして赤丸が「2年-10年」の逆イールド。いずれも景気後退の少し前に発生しています。前回は理屈の面で逆イールドが景気後退の予兆となりうる話をしましたが、経験則でもかなり当てはまっています。

ちなみに2020年のリセッションはコロナによるもので、「2019年の逆イールドがコロナを予見していた」というのは無理があり、特殊な事例です。ただ、2019年当時は米中対立による世界貿易の鈍化が懸念されていました。コロナがなくともリセッションが訪れていた可能性は否めません。

そして今回、久々に逆イールドが発生しました。景気の先行指標とされるISMなどの企業景況感、コンファレンスボードなどの家計の景況感とも下向いており、リセッションリスクは現実味を増しているというわけです。

ここで私が重要だと思うのは「逆イールド」の金利水準が過去に比べ低くなっている点です。1989年は9%台2000年は6%台2007年は5%程度でした。しかし、2019年と今回は3%程度です。

前回お話ししたように10年債は長い目でみた経済の力も映しています。アメリカ経済は先進国をけん引しているとはいえ、マクロでみた経済の成長力は鈍化していることを表しています。

もう一つ大切なのは、実際に景気後退が訪れた時の対応力です。景気後退時には黒の2年債金利は急低下しています。これはFRBが利下げによって景気を支えようとしたことの現れです。

ただ、金利は基本的に0%が下限です。逆イールド時の金利水準が低いというのはそれだけ利下げ余地が乏しいということです。今回の金利は2019年と地価水準ではありますが、FRBは2020年、利下げと別に大量の国債購入も進め、総資産は急膨張しました。量もあわせると19年当時よりかなり緩和的な状態です。

いまはインフレ退治のためどこまで利上げできるかが焦点になっていますが、いざ景気後退が訪れたとき、どこまで金融緩和できるかという悩ましい問題にも直面する可能性があります。

「FRB入門」、政策金利と長期金利の関係はここで一区切りとします。7/27のFOMCが近づいているので、あすFOMCプレビューを配信します。FOMC通過後、「FRB入門」のほかの論点を展開していきます。8月前半に終了予定です。


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