菊芋サプリを飲む!効果の高い時間はいつ?
菊芋を摂取するのにいい時間は?
どうせ飲むなら一番効果がある時間がいいですよね
そんな疑問が浮かんだのでちょっと調べてみました
脳機能活性化や健康長寿の鍵となる機能性食品素材・農産物(後編)より出典
時間生物学を利用した機能性食品開発 ~イヌリンのヒト試験を中心に~ 金 鉉基*・柴田 重信
はじめに
哺乳類では1997年に時計遺伝子Circadian locomotor output cycles kaput(Clock)がクローニングされ,数十 種の時計遺伝子が同定されている.時計遺伝子の発見以 降,1日約24時間のリズムを刻む体内時計の生理的機能 は,次々と明らかになり,規則正しい生活リズムを送り, 体内時計を適切に調節することは健康を維持するために 重要であることが明らかとなっている.このように体内 時計の分子基盤研究が急速に進み,生物の種々のリズム 現象を調べる学問として「時間生物学」が発展してきた. 近年,体内時計の研究は栄養学の分野においても応用 されており,体内時計を考慮した食事・栄養のタイミン グを考える「時間栄養学(Chrono-nutrition)」が注目を 集めている1).また,糖尿病や肥満などの生活習慣病の 予防・改善のためのさまざまな機能性食品の開発も進ん でおり,時間栄養学の視点から機能性食品の摂取タイミ ングを検討することはより有効な摂取方法を提案するう えで重要であると考えられる. そこで,本稿では菊芋の構成成分の一つであるイヌリ ン(水溶性食物繊維)に着目し,イヌリンの摂取タイミ ングが血糖値の日内リズムや食後高血糖,腸内細菌叢に 寄与する可能性について解説する.
時間栄養学
体内時計は栄養素の消化吸収や代謝の日内変動を制御 していることが知られており,食事・栄養と体内時計は 相互関係にある.この両者の密接な関係は「時間栄養学」 として注目を浴びている.すなわち時間栄養学とは食事・ 栄養の内容や量だけでなく,“いつ”食べるかについて 調べる学問であり,食事・栄養と体内時計との関係を双 方向から明らかにする学問である.筆者らはこれを大き く2つの側面から考えている.1つ目は栄養素や食品成 分による体内時計への作用を明らかにする「体内時計作 用栄養学」であり,体内時計の周期,振幅,位相の3要 素に対する影響を評価する.1日約24時間のリズムの形 成に体内時計が重要であり,体内時計の乱れは肥満や糖 尿病を含めさまざまな代謝異常を引き起こしていることが示されている2).そのため,食事・栄養により,この 体内時計の乱れを改善することで健康増進を促す考え方 である.2つ目は,体内時計によって生み出される生理 機能の概日リズムを考慮して,健康の維持,改善を目指 すうえで効果的な食事内容や栄養成分の摂取タイミング の違いを解明する「時間栄養学」である.各種栄養素の 消化・吸収や代謝にも概日リズムがあり,消化・吸収や 代謝能の高い,または低い時刻が存在する.この時刻情 報を利用して,効率良く栄養素の利用または食品成分の 生理作用を増強するために摂取タイミングを考えること である
食物繊維(イヌリン)
食物繊維は,大腸に常在する有用菌の増殖または有害 な細菌の増殖を抑制することで宿主に有益な効果をもた らす難消化性食品成分のプレバイオティクスとして認め られており,血糖値のコントロールや腸内環境を改善し, 糖尿病や肥満などの生活習慣病のリスク低減につながる ことが示されている3,4).食物繊維は大きく分けて2種類 存在する.水に溶けにくい不溶性食物繊維と水に溶けやすい水溶性食物繊維である.セルロースに代表される不 溶性食物繊維は,胃や腸で水分を吸収して膨張するため, 便の量を増やしたり,腸の蠕動運動を高めたりする作用 がある5).一方,イヌリンに代表される水溶性食物繊維 は粘着性を持ち,糖の吸収を緩やかにすることで血糖値 の上昇を抑制する6).また,食物繊維は大腸内で分解・ 発酵されることにより短鎖脂肪酸となり,ビフィズス菌 などの善玉菌の栄養源となりその増殖を促すため,腸内 環境の改善効果がある7). 水溶性食物繊維の中でもイヌリンは,多くの植物から 生産される多糖類の一つであり,キクイモ,ゴボウやチ コリなどの根菜類に豊富に含まれている8).イヌリンは, でん粉を分解するptyalinやamylaseのような酵素によっ て分解されずに大腸に到達して腸内微生物によって発酵 され,腸内環境の改善と排泄機能の促進に効果があるこ とが示されている.さらに,血糖値抑制作用,脂質異常 症改善,カルシウムやマグネシウムなどのようなミネラ ルの吸収促進や免疫システムの活性化などさまざまな効 果が報告されている9). これらのことから,血糖値のコントロールおよび良い 腸内環境を作るためには,イヌリンのような水溶性食物 繊維の摂取が重要かもしれない.しかし,欧米化した現 代の食生活では,食物繊維の摂取量が不足している.そ れゆえ,食物繊維の摂取量を増やすのはもちろんである が,摂取効率を考慮することは重要である.
イヌリンと血糖値
イヌリンは,血中糖質の吸収を 穏やかにし,急激な血糖値上昇を抑制する.先行研究に おいて,2型糖尿患者を対象とし6週間のイヌリン摂取 が空腹時血糖値に及ぼす影響について検討した.その結 果,イヌリン摂取による空腹時血糖値の減少が示されて いる10).また,血糖値および血清脂質濃度がコントロー ルされていない2型糖尿病患者を対象とした他の先行研 究では,14日間のイヌリン摂取による影響を検討し, 空腹時血糖値濃度の減少や総コレステロール,LDL(悪 玉)コレステロールの減少を報告している11).すなわち, イヌリンの摂取は,糖尿病患者に対する血糖値コント ロールに有効である可能性を示唆している.
イヌリンの摂取タイミングと血糖値
血糖値は,空 腹時だけでなく食後のコントロールも重要である.食後 の高血糖は2型糖尿病や心血管疾患のリスクを増加させ ることが知られている12).さらに,食事摂取時刻により 糖代謝動態が異なることが報告されおり,同様の食事で あっても食後の血糖値上昇は朝食に比べて夕食で高くな ることが示されている13).夕食時には血中グルコース濃 度が高くなり,インスリンやその分泌を促進するホルモ ンなどの分泌量が低下することが知られている.つまり, 夕食時に糖代謝機能が低下して血糖値が高くなる可能性 が考えられる.そのため,イヌリンの摂取タイミングの 違いによって血糖値変動への影響は異なる可能性がある. そこで,筆者らは,食後の血糖値減少により有効な機 能性食品の摂取タイミングを検討すべく,65歳以上の 高齢者30名を対象とし,朝食前(15名,男性:7名,女 性:8名)または夕食前(15名,男性:7名,女性:8名) に菊芋パウダー(5 g)を摂取してもらい,その後の血 糖値変動および腸内細菌叢(後述)を観察した.菊芋は 日常生活の中でも手軽に入手が可能であり,乾燥重量基 準で68~83 %のイヌリンが含まれている14).また,24 時間の血糖値変動を評価するため,FreeStyleリブレPro フラッシュグロコースモニタリングシステム(Abbot社) を用いた.この測定器は,痛みをほぼ感じない針の先に ついているセンサーにより間質液中のグルコース濃度を 15分ごとに測定し記録する.センサーの寿命は2週間で あり,2週間分のデータを記録することができる.高齢 者であっても負担が少ないことが特徴である. 朝食前または夕食前の菊芋パウダー摂取による一日の 血糖値変動を摂食前と比較した結果,摂取期間において, 朝食前摂取,夕食前摂取とも血糖値の減少が見られ,特 に朝食前摂取において,より顕著な減少が見られた.筆 者らはより詳細に検討すべく,各食後4時間の血糖値変 動を検討した.その結果,夕食前摂取より朝食前摂取に おいて,より顕著な減少が見られた.各食後の曲線下面 積を算出して摂取前と比較すると,摂取期間において, 朝食前摂取では各食後において有意な減少が見られた. しかし,夕食前摂取では,夕食後と翌日の朝食後におい てのみ有意な減少が見られた.これらの結果から,菊芋 パウダー(イヌリン)の摂取は,食後の血糖値コントロー ルに有効であることが示された.また,その効果は,摂 取タイミングによって異なる可能性があり,朝の摂取が より効果的であることが示された. 菊芋パウダー摂取によるこれらの影響は,次の食事ま での絶食時間の違いが影響していると推察される.朝食 時に摂取すると,その次の食事は当日の昼食,夕食と続 き,約半日のうちに3食を取ることになる.一方,夕食 時の摂取は,その次の食事は翌日の朝食,昼食と続くた め,菊芋パウダーを摂取してから約10~12時間以上経っ て初めて2食目を取ることになる.そのため,朝に摂取 することで,次の食事とさらに次の食事までの絶食時間 が短くなることからセカンドミール効果が働き,菊芋パ ウダーを摂取していない食事でも血糖値が低下したと考 えられる.セカンドミール効果はFirst Meal(1食目)で血糖値の上昇を緩やかにする食事を取ると,Second Meal(2食目)での急激な血糖値の上昇が抑えられると いう効果である15).セカンドミール効果の詳細なメカニ ズムについては未だ解明されていないが,絶食時間が長 くなると血中への放出が多くなり,インスリン抵抗性を 引き起こす脂肪酸の関与が考えられている16,17). また,菊芋パウダー摂取によるセカンドミール効果の もう一つのメカニズムが,短鎖脂肪酸(short-chain fatty acids;SCFA)によるグルカゴン様ペプチド-1(Glucagonlike peptide-1;GLP-1)の分泌促進である18).菊芋に多く 含まれているイヌリンが腸内微生物により分解発酵され ることで産生されたSCFAがGLP-1の分泌を促進し, インスリンを介した血糖値コントロール機能を改善させ たことでセカンドミール効果が現れたと考えられる.
イヌリンと腸内環境
近年,腸内細菌叢と疾病の関 連についてさまざまな報告がされている.我々の腸内に は100兆もの腸内細菌が存在し,その集合を腸内細菌叢 と呼んでいる.腸内細菌には,善玉菌,悪玉菌,日和見 菌(ひよみり)が存在し,そのバランスを保つことが健 康にとって重要である.一方で,悪玉菌が優位になり腸 内環境が悪化すると,糖尿病や高血圧などの疾病につな がることが知られている19,20).つまり,腸内環境を整え, 健康の維持,改善のためには善玉菌を増やし,悪玉菌を 減らすことが重要である.このような腸内細菌叢は食事 や運動などの影響を受けて変動する.これらの要因の中 で良い腸内環境を生み出すためには,特に食物繊維の摂 取が重要である.
イヌリン(水溶性食物繊維)は腸内細菌叢を標的とす るプレバイオティクス(消化できない食品成分のことで あり,腸内細菌の成長や活動を刺激することで宿主に有 益な効果をもたらし,宿主の健康を増進する)であり, 善玉菌の栄養源となることで微生物の組成および活性に 影響を与える.それと同時に,善玉菌に代謝される過程 で生じるSCFAは腸管内のpHを下げ,我々の体内の免 疫や代謝機能の調節を担う8).いくつかの先行研究にお いて,イヌリンの毎日の摂取は腸の微生物組成を変化さ せ,糞便中のビフィズス菌(善玉菌)を増加させること が示されている21,22).さらに,腸内細菌叢は,体重,イ ンスリン感受性やグルコース代謝との関連が示されてい る23–25).
イヌリンの摂取タイミングと腸内環境
イヌリンの 摂取は腸内環境を改善するが,「いつ」摂取するとより 効果的であるだろうか.筆者らは,マウスを用いてヒト の食生活を模した食モデルを作製し,イヌリンの効果を 検討した.マウスの活動期始めを「朝」,終わりを「夕」 と定義した.まず,それぞれの時間帯に高脂肪食を与え る群(高脂肪食群)と高脂肪食にイヌリンを添加した餌 を与える群(イヌリン群)に群分けを行い,検討を行った. その結果,イヌリン群は高脂肪食群に比較して盲腸内の SCFAが増加し,弱酸性になることが示唆された. また,同様のモデルを用い,イヌリンの摂取時刻の違 いにおける腸内細菌叢への影響を検討するため,朝のみ にイヌリンを摂食した群(朝摂食群)と夕のみにイヌリ ンを摂食した群(夕摂食群)を用意して検討した.その 結果,盲腸内の弱酸性の度合いは,朝と夕で有意な差は 認められなかったが,盲腸内のSCFA量は,夕摂食群と 比べて朝摂食群でより増加した.さらに,高脂肪食群, 朝摂食群,夕摂食群の腸内細菌の構成を測定すると,高 脂肪食群と比較して,朝摂食群で腸内細菌の構成の大き な変化が見られた. さらに,筆者らはヒトに応用すべく,ヒトを対象とし, 菊芋パウダーの摂取時刻の違いが腸内細菌叢に及ぼす影 響について検討を行った.その結果,朝食前の菊芋パウ ダー摂取は夕食前の摂取に比較して腸内細菌叢の変化が 大きいことが観察された.さらに,血糖値と相関が見ら れ,ヒト腸内細菌叢で優勢な菌群であるBacteroidetes 門とFirmicutes門の変化と24時間血糖値の曲線下面積 の変化率との相関を調べた.肥満・高血糖のヒトでは, Bacteroidetes門が少なく,Firmicutes門が多いというこ とが報告されているため,一般的に腸内細菌叢にとって Bacteroidetes門が増加しFirmicutes門が減少すること が良い変化だと言われている26).その結果,夕食前の摂取と比べて朝食前摂取においてより好ましい変動が見ら れた.これらの結果から,イヌリンは夕食前に摂食する よりも朝食前に摂食する方がより健康維持に効果的であ る可能性が示唆された
間食(イヌリン)と食後血糖値 日本における2型 糖尿病患者の約半数が週2回以上間食を摂取していると 報告している27).また,2010年の国民健康・栄養調査 では,日本人男性は1日の摂取カロリーの約10 %を間 食から摂取していると報告している28).これらの報告か ら,間食を避けることは容易でないことがわかる.間食 は場合によって血糖値を急上昇させ,糖尿病などの生活 習慣病のリスクとなる可能性があるため,注意を払う必 要がある. 一方,先行研究において間食の摂取による夕食後の食 後血糖値変動についての検討が示されており,昼食と夕 食の間での間食の摂取は,間食摂取なしと比較して夕食 後の血糖値上昇が緩やかであることが示されている29). しかし,間食の種類や成分の違いにおけるその後の食後 血糖値変動への影響は明らかにされていない.そこで, 筆者らは若年男女12名(男性:6名,女性:6名)を対 象とし,間食に含まれている成分の違いにおける夕食後 の血糖値変動への影響について検討を行った.介入期間 の2週間のうち,任意の3日間で食物繊維が多く含まれ ているクッキーA試行(154 kcal,食物繊維9.1 g),ビ スケットB試行(154 kcal),または間食なし試行のそれ ぞれを行い,比較検討を行った.各試行の夕食は規定食 (761 kcal)を摂取してもらった.昼食,間食,夕食の間 はそれぞれ4時間あけてもらい,間食後と夕食後の血糖 値変動を検討した.血糖値の評価は,フラッシュグルコー スモニタリングシステムを用いて行った.その結果,間 食後4時間の血糖値変動ではクッキーA試行,ビスケッ トB試行で間食なし試行と比較して血糖値の上昇が見ら れたが,曲線下面積においては有意な違いは認められな かった.しかし,夕食後4時間の血糖値変動では,クッ キーA試行でビスケットB試行と間食なし試行と比較し て血糖値の低下が見られ,曲線下面積において有意な低 値が認められた.これらのことから,食物繊維を含んだ 間食の摂取は,食物繊維が含まれていない間食の摂取と 比較して夕食後の血糖値コントロールに,より有効であ ることが示唆された.
おわりに
本稿では,主に血糖値や腸内細菌叢に着目し,イヌリ ンまたはイヌリンの含まれている機能性食品(菊芋)の 効果について検討した筆者らのいくつかの研究を紹介し た.機能性食品を含む食事・栄養を用いた食事療法は, 肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防・改善のためにさ まざまな観点からのアプローチがなされてきている.既 存の食事療法に時間(タイミング)の視点を取り入れる ことで食事療法のより有効なタイミングまたは,新しい アプローチ方法の開発が期待できるだろう.
文 献
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27) 橋本善隆ら:Ther. Res., 38, 77 (2017).
28) 厚生労働省「平成21年国民健康・栄養調査報告」:
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h21-
houkoku.html (2019/9/3).
29) Imai, S. et al.: Diabetes Metab., 44, 482 (2018)
結論から行くと朝がいいみたいですね!
食事で摂取するのはやはり大変なので、サプリやパウダーがお勧めかな
効果を維持させるには毎日の習慣が大切ですね
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