見出し画像

HR technology conference 2024視察日記(keynote day3)

2024年9月24日から26日までラスベガスで開催されたHR technology conference 2024の視察日記を公開します。
今回は3日目の基調講演の内容です。

KEYNOTE | The Skills-Powered Organization: How to Design and Activate the Enterprise for the “Next "of Work


「スキルベース組織」の未来について語った基調講演についてシェアしたいと思います。この講演は、これからの仕事の形がどう変わっていくのか、そしてそれにどう対応すべきかを教えてくれる素晴らしいものでした。特に、AIや技術の進化によって働き方がどう変わるかについて、多くの気づきを得ることができました。


技術が変える働き方 – スキルが新たな「通貨」に

講演の中で最も印象に残ったのは、スキルが労働市場の新しい「通貨」になるという考え方です。これまで多くの組織が「職務」という形で従業員を管理してきましたが、未来の労働環境では、その枠組みが大きく変わると言われています。特にAIや自動化技術の進化が、従来の職務中心の働き方に大きな影響を与えているのです。

AIによって多くの業務が効率化される一方、労働者に求められるスキルの幅はますます広がっています。つまり、職務や役割に囚われるのではなく、個々のスキルを柔軟に活かして働くことが重要になるということです。

例えば、マーケティング部門で働いている従業員が、データ分析のスキルを持っていれば、それを活かしてプロジェクトベースで他の部署にも貢献できる。こうした「スキルベース」の働き方が今後主流になるでしょう。


スキルベース組織とは?従来の職務中心からの脱却

では、スキルベースの組織とは具体的に何でしょうか?

従来の組織では、従業員が職務に基づいて配置され、特定の役割や業務に従事するのが一般的でした。しかし、スキルベースの組織では、職務ではなく、個々の従業員が持つスキルが中心となります。つまり、従業員はその時々のプロジェクトやニーズに応じて、スキルを活かした役割に就くのです。

このようにして組織は、変化する市場のニーズや新しい技術に素早く対応でき、柔軟で効率的な運営が可能になります。


成功事例から学ぶスキルベースの組織の効果

講演では、いくつかの企業が実際にスキルベースの組織運営を導入して成功を収めている事例が紹介されました。例えば、ユニリーバでは、従業員が自分のスキルに基づいてプロジェクトに応募できる内部タレントマーケットプレイスを導入。これにより、従業員は自分のキャリアを自主的に成長させながら、企業内で多様な経験を積むことができるようになりました。

また、ある大手保険会社では、データサイエンティストをプロジェクトベースで再配置し、従来の職務を超えて様々な部門に貢献することで、生産性が600%向上したという驚きの成果を挙げています。このように、スキルベースのアプローチを取り入れることで、従業員一人ひとりの強みを最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができるのです。


AIとスキルの関係性 – 新しい働き方の未来

未来の労働環境を考える上で、AIは避けて通れないトピックです。AIによる自動化が進むことで、多くの単純作業や定型業務はAIに任されるようになります。では、その中で人間の役割はどう変わるのでしょうか?

ここで重要なのが、AIと人間が補完し合う形で新しい働き方を作り出すという点です。AIが得意なデータ分析や業務の自動化を担当し、人間はそのデータを元にクリエイティブな意思決定を行ったり、感情的な対応を必要とする業務に集中することが求められます。つまり、AIができない部分での人間のスキルの価値がより一層高まるということです。


スキルアップとリスキリングの重要性

このような未来を見据えると、従業員にとってもスキルの継続的な習得が非常に重要です。技術の進化が速い現代では、1つのスキルだけに頼るのではなく、リスキリング(再教育)アップスキリング(スキルの向上)を通じて、新しい技術や業務に対応できるようにしておく必要があります。

講演でも触れられていましたが、企業は従業員がスキルを磨き続けられる環境を整え、教育やトレーニングの機会を提供することが求められています。例えば、社内でのスキルベースのプラットフォームを活用し、従業員が自分のスキルを活かして新しいプロジェクトに参加したり、新しい分野の知識を得られるような仕組みを整えることで、組織全体の成長を促すことができます。


まとめ: 未来の働き方に備えよう

今回のHRテック2024の講演から学んだのは、未来の労働環境において「スキル」がますます重要な役割を果たすということです。スキルベースの組織は、変化の激しい市場や技術の進展に対応するための鍵となり、従業員と企業が共に成長し続けるための基盤を提供します。

これからの働き方を考える上で、私たち一人ひとりがどのようなスキルを身につけ、どのようにそれを活かしていくかが非常に大切になってきます。未来に向けて、自分のスキルを常にアップデートし、AIや技術と共存しながら、より良い働き方を模索していきましょう。

この動画で紹介されているAI技術の導入事例

スキルベースによる組織の見直し事例は、従来の職務中心の労働モデルから、従業員のスキルに基づいて業務を再設計し、柔軟かつ効率的に運営する取り組みを指します。以下に、動画で紹介された具体的な企業の成功事例をいくつか挙げ、詳細に説明します。


1. 大手保険会社のデータサイエンティスト再配置事例

背景

この大手保険会社は、デジタル化が進む中で、特にデータサイエンティストのスキルが社内で大きな需要を持つ一方、既存の組織構造がそれに対応できないという問題に直面していました。データサイエンティストは、IT部門に固定されており、インフラ関連のプロジェクトに閉じ込められていたため、他の部門(例えば、マーケティングや人事)でのデジタルニーズに対応できていませんでした。

スキルベースの取り組み

この課題に対処するため、会社はデータサイエンティストを従来の固定された職務から解放し、アジャイルタレントプールに再配置しました。これにより、各部門が必要とする時にデータサイエンティストのスキルを利用できるようになり、プロジェクトベースでの働き方を導入しました。

  • 例えば、顧客データを分析して新しい製品提案を行うプロジェクトでは、データサイエンティストが他の部門のチームに加わり、Pythonや機械学習を活用して推奨エンジンを開発するなど、各プロジェクトごとに必要なスキルを持つ人材が柔軟に配属されました。

成果

この取り組みの結果、以下のような顕著な成果が得られました。

  • 生産性の向上: データサイエンティストの生産性が600%向上しました。これは、スキルベースでタレントを再配置し、特定のプロジェクトに迅速にアサインできるようになったことで、彼らのスキルが最大限に活用された結果です。

  • 離職率の低下: データサイエンティストの離職率が劇的に低下しました。スキルが多様なプロジェクトで活用され、キャリアの成長が促進されたことで、従業員のモチベーションと定着率が向上しました。


2. ユニリーバ(Unilever)のタレントマーケットプレイス事例

背景

ユニリーバは、従業員が自分のスキルやキャリアの可能性を十分に発揮できないという問題を抱えていました。多くの従業員が固定された役割の中でキャリアを築いていましたが、成長の機会が限られており、特に異なる分野でのスキルを活用する機会が不足していました。

ここから先は

1,369字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?