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「いい音」ってなんだろう(その4)

リマスター盤がいつ頃から登場したのかだが、僕が最初に意識したのは、1994年にVirginから一気にリリースされたローリング・ストーンズの”Sticky Fingers”から”Tattoo You”までのアルバムだ。ベルギーのストーンズファンクラブメンバーから連絡があり、安く手に入るからまとめて買わないか?と言うので、まとめて買った。勿論、未開封の新品だ。

バーコードのあるスティッカーにはUK, F, Dという記号が付いてるが、Printed in the USAであった。CD自体は紙ジャケで、透明なプラスチックのケースに入っている。リマスター盤に馴染みがほとんどなかったので、どんな音なんだい?と尋ねると、「う〜ん、ま、言ってみれば”more analogue”だな」と返事が返って来た。

その頃の僕はLPで持っているものはCDは買わないという潔癖主義だったのだが、なぜか持っていた”Exile on Main Street”(日本盤SONY)と聴き比べてみて、びっくりした。一番感動したのは、ヴォリュームを上げても音がつぶれたり割れたりしない。ヴォリュームを上げるに連れて、音量がスムーズに上がっていくではないか。”Rip This Joint”みたいにグシャっとした印象のナンバーでそれは顕著だった。単に音圧を下げたと言うわけじゃない。前回も触れたが、ノイズが減って解像度が上がっているんだろうと思った。こりゃ、これがあれば日本盤は要らないな、と思い、売ってしまったので、今の耳で聴き比べることはできないが、当時のその印象は強烈だった。ファンクラブメンバーがいみじくも僕に言ったようにCDが出てから10年は経っていたので、必ずしもCDがアナログよりいい音だと言うわけではなく、リマスターすることで、まろやかさとか音の自然な感じを求めていたのかも知れない。

今では旧譜がリマスターでリイシューされるのはすっかりお馴染みになってしまったが、60〜70年代のものでなく、80年代、いや、もっと近年にリリースされたアルバムもあまり感覚を空けずにリマスター盤が出たりすると、なら最初っからリマスターで出しゃいいんじゃない?みたいに思ったりもする。また逆にリマスター盤でない方は価格的に安かったりするから、ただ聴いてみたいと言うようなのはリマスターであろうとなかろうとあまり関係はない。

リマスター盤がなぜ「音がいいか」については、ネットにいろんな記事があるが、基本的にはCDが登場した頃に比べ、デジタル技術が進歩したことと、ノイズ除去やいくらかの補正などをして、音のクオリティを向上させているという魔法でもなんでもない仕業のようだ。しかし、度重なるリマスター/リイシューには「今回のリマスターはよくないね」などという評価がされているものもあり、当たり外れと言うと身も蓋もないが、たしかにそう言うのがあるようだ。ストーンズで言えば、この1994年リマスターは名エンジニアのボブ・ラドウィック氏が手掛けていると言う点でこのバージョンが最も音がいいと言う声が多いようだ。2020年に出た”Goats Head Soup”はリミックスもされているので1994年盤とガチでの比較にはならないが、1994年盤より、細やかなタッチを感じたものだ。

ところで、最近のリイシューではやたらメリハリのある「今風」のサウンドになってるのもあったり、ノイズがないのはいいけど、アナログで出た際のギラギラ感がイマイチ無い風なのは、やっぱどうしたものかなぁと思う。僕はスピーカーで聴かないと聴いた気がしないので、YouTubeやその他、ネットでちょい聴きする以外は音量は低くてもCDやLPをオーディオセットでスピーカーで聴いている。しかし多くのリスナーはヘッドフォンやイヤフォンでのリスニングが当たり前になっているから、直接音を聴いてしまう分、僕以上に「いい音」にこだわっているのかもしれない。
(続く)

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