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わきまえていないのは #3 追記2

 選評に関する批判をたくさんいただいています。10作の選出から賞の決定にいたるまで、主催である僕の責任です。真摯に受け止めます。

 賞を盛り上げるためのラジオ特番でも僕は失礼な発言をしています。謝罪のブログの経ての選考会でしたので、妙な距離感を産んだのは僕の責任です。

 僕は今でも『Passport & Garcon』を語るのに緊張します。Moment Joonが撃っているのは、僕自身でもあると感じるからです。ネットに接続してタイムラインやコメント欄をのぞけば、彼がリリックとして書き留めた排他的な言葉や差別的な言説に簡単に触れることができます。「俺は違う」と言い切る気持ちはありますが、そうした言説が垂れ流される社会の一員であることからは逃れられないのも事実です。

 そして、現実に、尊敬する蔡くんやMoment Joonに憤りを与える言葉しか選べないでいます。「ネトウヨと何が違うんだよ」と言われても仕方がない。「そういうつもりはなかった」という申し開きが持つ暴力性があります。そうした自分の性質こそが、克服しなければいけない一丁目一番地だと思います(他の問題にも通底することです)。

 辛辣なリリックに、様々な描写に、グサっと刺されるような気持ちでアルバムを聞きました。自分が放った言葉ではなくても、自分が彼に言ったんじゃないかという罪悪感が湧き上がる。繰り返しになりますが、これは僕が属している社会が吐き続けている言葉でもあり、その事実からは逃げられないと感じるからです。

 わざわざトラップのビートを引用したKIMUCHI DE BINTA。DHC的な言説を目の当たりにして、こうしたちょっとしたユーモアというか偽悪的な態度も、初めて聴いたときよりも刺さるような感覚があります。

 サウンド的には攻撃性が落ちるLosing My LoveDOUKUTSUでは、自分のなかの多くの言葉が白々しい響きに変えられてしまう。いまここに綴っている全ての言葉もそうかもしれない。だから、もう徹底的にグワグワになります。揺さぶられる。落ち着くところがない。

 TENO HIRAという曲を先に知っていたことは、自分にとって本当に救いだと思いました。この鋭いリリックの先にある無数の「手のひら」を思って、アルバムの最後まで進み、そこではじめて強張っていた肩の力を少し緩めて、手のひらを彼に向けることができます。この曲の包容力によって、救われます。

 ただ聴き終わった後は、作品について語るのではなく「お前はどうするのか/どうあるのか」と問われているような気持ちになる。彼の渾身の私小説に乗っかって何かを話すのではなく、自分はこうした社会にどう抗うのか、どう変わるのか、それを示さないといけないなと思います(もちろん、自分が変わったその先に、日本が変わるということを求めて)。

 そして、刺さった問いと言葉が、作品を語ろうとする僕をグズグズとさせます。緊張させます。立ち止まらせます。間違えるんじゃないかと思ってしまう。彼が言う通り、臆病ですね。

 サウンドの話をするのはとても難しいです。このアルバムはリリックを抜きにしては考えられない。声とリリック、フロウも楽曲の一部。トラックとラップに分けられない関係性があることが、作品の統一感を高めています。ゆえに、サウンドだけを抜き出して特別な言葉を付け足すのが難しいと僕は感じます。

 賞のあり方については、去年のブログを貼っておきます。

 私設であることは何の免罪符にもなりませんが、手弁当のインディ音楽賞にほとんど善意のみで参加して、10作品(どれも本当に素晴らしい作品!!)を聴き、「作品の良さを語ってください」という僕のリスエストに応えて、言葉を重ねてくれた審査員のみなさんには心から感謝しています。

 賞のあり方については、一から、あるいはゼロから考え直そうと思います。

 相対的な優劣をつけることを目的とした賞ではないと自負していましたが、大賞を選ぶ以上、逃れられない性質でもあります(音楽を評価するアングルが無数にあるなか、例えば、ゆうらん船と角銅さんとMoment Joonの作品を比較するのはとても難しいことです)。拭いきれない権威的な性質もアワードにはつきまといます。その割に、僕に語る素養がないことが露呈しています。賞金がたくさん集まるならば全作品に分けたほうがいいのではないか?というのが、設立当初からの悩みでもありました。

 アワード以外のやり方でも、できることがたくさんあります。

 最後に。

 『Passport & Garcon』のDX版のCDには、僕と坂本龍一さんが参加したDistanceという曲が収録されています。一般発売の話はまだ聞いていませんが、クラウドファンディングに参加した人たちの手元には届いているようです。アルバムと共に、多くの人たちの耳に届くことを願ってやみません。

 まだD2021という番組の再放送が近々発表になります。Moment Joonのライブも観ることができますので、そちらもぜひ。僕のステージでも、1曲一緒に演奏しています。

D2021 2021.3.13,14 - HIBIYA PARKD2021 - 2021.3.13,14 - HIBIYA PARK - D2021 - わたしたちは震災から10年という、2021年を迎えようとしています。 この10年、どのような日々を歩んできたのか、そして次の10年をどのように生きるべきなのか。 過去と向き合い、未来を志向するためのひとつの岐路に立っているのではないでしょうか。 D2021は、坂本龍一、Gotchが中心となって、震災(Disaster)から10年(Decade)という 節目にさまざまな「D」をテーマとして、2021年3月13日・14日、日比谷公園にて開催するイベントです。 D2021は、不条理に対する抵抗の声(Demonstration)であり、民主主義(Democracy)を 維持させるためのムーブメントです。ダンス(Dance)や対話(Dialogue)を通じて、 社会の分断(Division)を乗り越えることを目指しています。 D2021 - わたしたちは震災から10年という、2021年を迎えようとしています。 この10年、どの d20xx.com