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Around The Lives By The Sea #4

Rapperとのコラボレーションについて

 3rdアルバム『Lives By The Sea』の大きなトピックは、Rapperとのコラボだと思います。今回は「The Age」という曲の話を。

 普段は頑張って数万回みたいなYouTubeの動画再生回数が10倍に跳ね上がるくらいの反響だったんですが、やっぱりRapperのパフォーマンスを動画で観るのはとても楽しいです。格好いいなと正直に思います。

 トラックをやりとりするなかでBASIさんから振られたキーワードは「HIPなこと」でした。「音楽的にイケてることをしましょう」という意味です。

 野暮を煮詰めたような俺にHIPな部分があるかは難しいところなんですが、シモリョーがブラッシュアップしてくれた「The Age」のトラックのふたつ目のヴァース(Aメロのこと)がぽっかり空いてたんですね。直ぐにBASIさんに送って、そこからはサクサクと創作が進みました。

祈りとか、赦しとか、そういう感覚

 ここ数年、関心があったのはゴスペルのようなフィーリングでした。「そこに居ていいんだ」というような「赦し」は、宗教的な感覚だと思うんですけれど、一神教的な感覚が一般的でない日本で生活する自分には、とても魅力的に映ってたんです。

 祈りとか、赦しとか、そういう感覚が、僕らの生活には足りないなと。神様はおろか、「ご先祖さまが見てる」というような感覚も僕らの欲望にブレーキをかける役割が薄れてしまったように感じます。

 ゆっくりと目を閉じたり、誰かを抱きしめるように認めたり、その源泉は「神の存在」が根底にあることなのだけど、神を信じていない僕らにも必要な感覚なんじゃないかなと思うんです。そのまま引用はできないけれど、折衷して取り込むようなことはできるのかなと。

返すように何か言葉を足さないといけない

 BASIさんの楽曲からも、同じようなフィーリングを感じていました。愛って言葉はとても難しいんだけど、愛と言う言葉や感覚に意識的だと思います。一緒に「The Age」を作れたのはとても嬉しいことでした。

 俺がやや毒っぽい言葉ではじめたヴァースに、「口に合わないなそのビーフ(罵り合いの意味があります)は」と冒頭で返すところがBASIさんの格好いいところですよね。最後には丸っと抱きしめるようにそれぞれの日常や社会を、未来を肯定するようにヴァースを締める。切先が鋭いけど、優しいんです。

口に合わないなぁそのビーフは
ここはピースにビールで乾杯ってのはどう?
Hey bro
まずはお前となりたいぜワンペア
1から2 重いdoor開け3へ
気分はsunday morning
聖者の行進みたくwalkin'
時代語るのも自分次第
立ち上がらなきゃ価値も生まれないな
傍観するよりも
どう感じてどう生きていくのかに同感
君はどうかな?
明日が手を振る たとえ雨降る日々でも
足下のビートは鳴り止まん
またunder the sun
What a wonderful world なんて歌ってる
lifeが見える

 この後は「Hey Brother 〜」というコーラスの繰り返しの予定だったんですけれど、このままじゃ終われないなと思いました。返すように何か言葉を足さないといけないという気持ちが強くなって、とりあえずマイクを立てて録音を始めて、即興で出てきたのがこの言葉でした。

「この世は生きるに値する」

 いろいろな有名人の自死に関するニュースもあって、俺も仲間も家族も、いくらかの精神的なダメージを受けているような状況だったというのもあります。ほとんどはじめて、メッセージらしい言葉を自分の曲のなかに書いたと思います。

 BASIさんに引っ張り出された言葉とアティチュードですね。たとえば、アジカンでは、それらしいことを書いたとしても、もっと抽象的で、誰かに向けた言葉ではなかったんです。もっと大きく時代に向かって投げているというか。でも、「この世は生きるに値する」というラインは、はっきりとこの言葉が必要な誰かに届いて欲しいと思いました。これはメッセージだなと思います。

 BASIさんだけでなく、唾奇君やJJJ君との作業は、言葉への意識をあげざるを得ない、とても有意義な体験でした。言葉、押韻と声、それをフロウと言うんだと思うんですが、まさにフロウはその人そのものです。その厳しさと難しさ。生半可な個性では残れないと思います。

 ペンとマイクで違いを表現する、自分らしさを表す、そういうアートに取り組んでいる人たちの姿勢からは、学ぶことが多かったです。

 そういう表現者たちの末席に、胸を張って座りたいと思いました。