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『環境に配慮した宿』詳細

私たちは地球の恵みである“温泉”を甘受して生業を行っています。
地球環境に配慮するのは当然のこととして受け止め、地球環境にやさしい宿をつくります。

はじめに

1982年有馬温泉まちづくり計画。一般にいうマスタープランを30年先を視野に入れて作成しました。その時、高度情報化社会の行きつく先は“成熟化”と“高次元化”するということを教わりました。

成熟化とは一見相反するものを同時に求めるようになる。都会と田舎。東洋的なものと西洋的なもの。新しいものと古いもの、コンピューターの詳細なデーターと宇宙や神といった人間の英知ではわからないもの等。

高次元化とは利己主義から利他主義になる。ボランティア活動が盛んになる。地球環境を考えるようになる。という事を教えられ、その方向に御所坊は進んできました。

最近、SDGsが叫ばれていますが、40年前からその方向に御所坊は進めています。

今までの取り組み

御所坊リニュアル


1984年、古い建物を潰して新しく大きな鉄筋の宿をつくるのではなく、古い木造三階建の宿をリニュアルする事を始めました。

後で知りましたが、このような考え方は世界のホテルの最先端だったようです。そして阪神淡路大震災後、廃業した旅館を借り受けホテル花小宿に続きます。現在の古民家再生の走りだと思います。

ホテル花小宿

阪神淡路大震災で経営不振に陥り廃業した木造二階建ての旅館を借り受け、2000年にバリアフリーと環境に配慮した宿として、ホテル花小宿としてオープンしました。

花小宿は海外のホテルの様に歯ブラシなどのアメニティーは減らし、廃棄するものを出来るだけ減らすようにしました。例えば多くのアメニティーは再生できるものや、燃やしてもダイオキシンが出ないものに変えました。そして専用の回収箱を設けました。

送迎車のディーゼル燃料を調理場で使用した天ぷら油を再生してバイオジーゼル燃料にしました。その為に駐車場にプラントをつくりました。
その後、近くの障碍者施設で高性能なプラントが出来たので、廃油を送り、出来た燃料を購入していました。
現在は障碍者施設が取り組みを止めた為に普通の軽油を使用しています。

駐車場にコンポストを設置し、調理場などから出る食材残さを有機肥料にし、兵庫県北部の農地で野菜などを栽培する事も行っていました。

グリーンパパ


契約栽培というシステムを利用して、御所坊で提供するお米を栽培していました。

1995年に食管法が廃止されて、自由にコメの栽培と販売が出来るようになったので、栽培量を増やしてまいりました。そしてこの年に阪神淡路大震災が起こりました。

御所坊は農家の人に依頼して、日本海の魚と野菜をトラックに積んで運んでもらい流通が回復するまで維持してまいりました。
このような事があり、2009年兵庫県で最初の農業法人を立ち上げました。それがグリーンパパです。

有機農業御所坊の植物残さを有機肥料にしていましたが、成分が偏っていました。有機肥料だと何でも良いという事ではないのです。そして廃棄のジャムやハム会社の廃棄ハム、馬糞などを調合した有機肥料を使用していました。しかし、神戸大学名誉教授の保田茂先生の“保田ぼかし”を使用した農法に共鳴し、現在は可能な限り保田ぼかしを使用した有機農法の農産物を使用するようにしています。

バイオジーゼル燃料送迎車に使用しているロンドンタクシーは日産製のTD-27というエンジンを積んでいます。このエンジン、古くなると黒煙が出るようになるのです。有馬温泉は坂が多いので、御所坊の送迎車が坂を登る時に黒煙を撒くのを見てお客様方に「なんで環境の悪い車だ!」と思われないかいつも心配していました。

ある時、バイオジーゼル燃料と、その製造方法を知り、さっそく製造システムを購入しました。酸化した天ぷら油をろ過して、ゼオライトという多孔質の物質を使って還元するのです。
そのままでは粘度が濃いので、灯油を混ぜて使いやすいように薄めてバイオジーゼル燃料にするのです。使用する際、県税に行ってガソリン税を納付しなければなりません。

軽油には硫黄が含まれていますが、灯油には含まれていません。またヨーロッパの軽油にも硫黄が含まれていないのです。この辺を替えれば良いのにと思います。

ロンドンタクシーから黒煙が消えましたが、安物の居酒屋のような油の臭いがします。(笑)

有馬山椒とスローフード有馬山椒復活する取り組みを10年以上続けています。

その流れからスローフードを知り、食の多様性や在来種の価値を知りました。スローフード・インターナショナルの考え方の中にスロー・フィシュやスロー・ミートがあり、御所坊で使用している但馬玄は、スロー・ミートといえると思います。

現在の取り組み

電気自動車の使用


現在の御所坊の送迎車はロンドンタクシーから日産の電気自動車になっています。御所坊のロンドンタクシーを日産の社員がやってきて各部を計測してできたのが現在の日産の黄色いタクシーです。

このタクシーはガソリンとプロパンガスが使用できるのですが、荷室が狭くなることから、御所坊ではガソリン使用のみを使用しています。

白色と銀色の送迎車は電気自動車ですし、その他社用車3台が電気自動車です。

電動トライク


有馬の街をそぞろ歩きして頂く手段の一つとして、電動のトライク(4人乗り)のレンタルを行っています。

光岡自動車製 電動トライク

Easy Ranble

温泉システム


有馬温泉に都市ガスが引かれるようになりました。
他館はボイラーを重油から都市ガスに変えるというとOKだったのですが、御所坊は後回しでした。なぜかと聞くと重油の使用量が少ないからでした。

つまり御所坊は有馬の温泉を有効活用して、源泉を加熱加水することなく適温で提供するシステムを構築しています。
その為に他館より重油の使用量が少ないという事です。

高架水槽を撤去して屋上に温泉タンクを設置しました。
泉源からは直接屋上のタンクに温泉が供給されます。
配管さえすれば館内のどこにでも源泉を供給出来ます。

湯たんぽと豆炭炬燵


木造の建物の欠点の一つとして保温性があげられます。
そこで冬場、熱い温泉を詰めた湯たんぽをお客様に提供しています。
御婦人方から好評です。

屋上に温泉タンクを設置したので、湯たんぽに温泉を入れる事も可能です。

御所坊の食事処のソーシャルディスタンスを確保する為に、それまで24席あった席数を16席に縮小しました。
そうすると間が抜けて殺風景になってしまいました。

ベニヤ板で必要なテーブルの大きさをシミュレーションしました。

そこで御所坊の料理を提供する為の必要な大きさのテーブルを製作しました。そして換気をよくすると冬場寒い。テーブルを炬燵にしたらと考えました。普通ですよホームこたつの電気ユニットを取り付ければよいのですが、テーブルを動かす際にはコードが邪魔になるし、電気容量が足りそうにありません。そこで豆炭あんかを使用しています。朝、あんかを入れれば夕食の提供まで大丈夫です。

さくらキッチン


御所坊の厨房は館の中心部に位置していましたので、そこを触るという事はお客様に対応できません。
ある時、倉庫部分に最先端の厨房機器を備えたキッチンを整備しました。それが さくらキッチンです。

さくらキッチン内部

最先端の厨房機器を使用して、それまで廃棄していた魚の骨やアラや野菜の皮などを活用してより美味しい料理をつくっています。余った素材を加工して、保存するシステムを利用し、アレルギーの方やビーガン、ベジタリアン、ハラルなど、多くの人に楽しんで頂く多様性のメニューを提供できるようにしています。

2030年に向けて

温泉の有効活用をする事や、送迎車をすべて電動化し、複数の宿と連携し域内交通を見直し、効率の良い運行を行う事でCO2の排出量を減らします。

また最先端の厨房施設を活用し、顧客のニーズに合わせた食を提供する事で結果的に食物残さの低減を目指します。

その様な取り組みを総合して、環境負荷を50%削減しようと考えています。


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