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パークファクターを数字遊びで考える〜打力や投手力の影響はあるのか?〜

みなさん、こんばんは。
前回は多くの反響をいただきありがとうございました。


多くのご意見ご感想、風に対する考察などなど、私が最後にやっつけで書いた至らぬところを補って頂けるような内容も多くとても勉強になりました。
深謝。
自己満足で書いてますが、反応もらえると素直に嬉しいですね。承認欲求というやつですね

さて、今回は前回に引き続きパークファクター、ホームランの出やすさについて書いていきます。
テーマはパークファクターへの影響因子について、数字で遊びながら話を深掘りしていきたいと思います。
セイバーメトリクス関連の書籍や電子媒体での記事などをいくつか読んできましたが、パークファクターにフォーカスを当てて書かれているものがあまり見当たらず、私の知識もかなりぼやっとしています。
今回書くことは私のパークファクターへの理解の整理、構造の考察、疑問点の洗い出し的な要素が強いです。
パークファクターよく知ってるよ!という方も頭の整理がてら見て頂けると嬉しいですし、手探りでの内容となってますので…ご意見頂けるとありがたいです。


1.  はじめに

※最初に断りを入れておきますが、今回のパークファクターの話は「ホームランパークファクター」のことです。得点や単打、二塁打など様々な活用をされますが今回はホームランに絞って話していきます。

前回のnoteでの反応を眺めている中で、「パークファクターは打力や投手力が影響するのではないか」という話をいくつか見かけたので改めて考えてみようと思いました。

冒頭述べた通り、私の知識もかなりぼやっとしていたのでとりあえず手元のセイバーメトリクス関連の書籍や電子媒体で調べました。
ほとんど書かれていることは同じで、

「原理的には、チームの能力に影響される指数ではない。すなわち、攻撃力の高いチームでもそれによってパークファクターが高くなるわけではない。パークファクターの計算式は当該チームの試合において本拠地とそれ以外とでイベントの多さが異なるかを比較するものであって、攻撃力が高いことによって本拠地でもそれ以外でもイベントが多いのであれば、パークファクターは上がらない。
参考 : 1.02 -Essence of Baseball

基本的にはチームの打撃力に依存するものではないよ、ということが書かれています。
投手力も同じくそういうことだと思います。
個人的には、「自軍の投手と対戦できないことが影響するんじゃないの?」なんて考えも浮かんできました。
深夜に長々と頭の中で考えてましたがよく分からなくなったので、構造的なところから確認したいと思います。


2.  そもそもパークファクター(PF)ってなんだろう?


そもそもパークファクターってなんだろう?と原点に帰って考えてみました。

なんとなくイメージ的には「打力や投手力に左右されない球場固有の特徴によるイベントの起こりやすさ」という認識をしていました。
PFが1.3ならこの球場は1.3倍本塁打が起こりやすい球場なんだな〜くらいの認識。
球場特徴として挙げられるのは、


・両翼、バックスクリーンまでの広さ
・左中間、右中間の構造
・マウンドの傾斜、固さ、高さ
・ファールゾーンの広さ/狭さ
・芝の種類、長さ
・風(風向、風速、頻度)
・球場の方向(陽の差し方など)
・ナイター設備(光の差し方など)
・球場の塗装(京セラのフェンスの塗り替えなど)
etc..


などがパッと思いつきます。
これらはホームチーム、ビジターチームに等しく与えられる条件であり、これらを総合した"平均的な球場よりどれくらいホームランが出やすいか"がホームランパークファクターの示す数字なのかな、と漠然と考えていました。
DELTA社が監修している「セイバーメトリクス入門」でもパークファクターが1.10であれば、その球場は同じリーグの平均的な球場に比べて1.1倍記録されやすい球場ということになる、と記載されてますし、多くが同じような認識をしているのではないかな、という気がしています。


3.  パークファクターの構造を考える


先日のnoteにも掲載しましたが、

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パークファクターは上記のような式で示されます。
もう少し詳しく分解して構造を考えると

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こんな感じに細分化されます。
ホーム1試合あたり打った本塁打と打たれた本塁打を、他のビジター球場1試合あたり打った本塁打と打たれた本塁打で割る図式です。
これで1試合あたりどれくらいホームランが多いか(少ないか)を比較したものがパークファクターです。
この本塁打・被本塁打と言うのは基本的に守備に依存しません(ホームランキャッチを日常的にする選手がいれば別ですが)。
守備が介在しないので簡単に表すと、「打撃力」×「投手力」的な図式が考えられます。
この打撃力や投手力はもちろん個々のチーム、選手に依存してくるものなので少なからず影響があるのでは?と考えられます。
この打撃力や投手力のモデルを作ってパークファクターを考えたいな、というの今回のnoteの内容です。
完全に数字遊びですので興味ある方は読んでみてください。

4.  打撃力と投手力の影響を考える


まずはこのようなチームモデルを作ってみました。

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年間100試合を行い、5チームとそれぞれ20試合ずつ(ホーム10試合、ビジター10試合ずつ)、平均的な打撃力のチームと平均的な投手力のチームが対戦すると年間でチームで平均100本塁打、リーグで600本塁打出るようなリーグです。

この打撃力(投手力)は平均的な投手(打者)を相手にした際に、どれだけ本塁打を打てるか(本塁打を打たれるか)を示したものです。
打撃力1.5だと平均的な投手力のチーム相手に1試合あたり1.5本ホームランを打てるよという感じです。
各項目全部足すと6.0(平均1.0)になるように調整しています。
例えばチームAとチームBが対戦する場合、

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チームAは1.5×0.7=1.05本、チームBは1.3×1.4=1.82本の本塁打を1試合に打つという感じです。
これを平均的な球場で100試合行うと、

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こんな感じになります。
平均的な球場でホームでもビジターでも同じような打撃力と投手力が発揮されると、本塁打数も被本塁打数も同じになるのでPF 1.0になります。
これは打撃力が高かろうが低かろうが、投手力が高かろうが低かろうが分母と分子の数値は変わることはないので、パークファクターの"構造上"攻撃力が高いことによって本拠地でもそれ以外でもイベントが多いのであれば(本拠地でもそれ以外でも同等の力量を発揮するのであれば)、パークファクターは上がらない。」ということになるのかな〜と解釈しました。


5.  球場特性の影響を考える


先に挙げた球場特性ですが一番は広さが影響しそうですよね、ヤフオクであればテラスでホームランが増えるでしょうし、札幌ドームであれば広いからホームランが減るでしょう。
先日取り上げた風の影響、例えば甲子園であれば浜風の影響でホームランが減るでしょう。
これらはホーム有利ということはなく、等しく両チームに与えられる影響と言えるでしょう。
広いのに慣れてるからナゴヤドームでも中日だけは他の球場くらいホームラン打てる!なんてことな起きないでしょうし、阪神だけ特別に左打者は風を操ってホームランを打てるなんてこともありません。
それらの球場のあらゆる要素を複合した"平均的な球場よりどれくらいホームランが出やすいか"をパークファクターと呼んでいる、ものだと解釈していました。
この"パークファクターっぽい"ホームランの出やすさを定義して先ほどの数字遊びで検証したいと思います。

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例によって各項目全部足すと6.0(平均1.0)になるように調整しています。
例えばチームAとチームBが対戦する場合、

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【本拠地A'】
チームAは1.5×0.7×1.5=1.58本、チームBは1.3×1.4×1.5=2.73本の本塁打を1試合に打つことになります。

【ビジターB'】
チームAは1.5×0.7×0.7=0.74本、チームBは1.3×1.4×0.7=1.27本の本塁打を1試合に打つことになります。

これを先程同様100試合行うと、

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A'球場のホームランの出やすさを1.5に設定したところ、これらの数値からパークファクターを算出するとPF 1.68となりました。
あれ?1.5よりだいぶ大きくなってる…
とこういう事態が起こってしまいます。

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原因は分子のビジター球場での本塁打の出やすさに起因するもので、今回本拠地A'のホームランの出やすさが1.5、他の球場の合計が4.5(平均1.0未満)のため分母が小さくなり数値が上振れしてしまっています。
少し考えれば分かることですが、なんとなくこれまでスルーしていました。
この構造だと「平均的な球場と比較して」ではなく、「該当球場を除いた他の球場での平均と比較して」ということになるような気がしませんか。
このことから考えられるのは、純粋なホームランの出やすさが1.0に近い球場であれば、ホームランの出やすさ≒パークファクターとなりますが、ホームランの出やすさが大きい球場ほど(他球場の平均的なホームランの出やすさは相対的に小さくなるので)PFは上振れし、ホームランの出やすさが小さい球場ほど(他球場の平均的なホームランの出やすさは相対的に大きくなるので)PFは下振れしてしまう可能性があるのではないか、ということを考えました。
構造上の話です、構造上の。
ですので神宮とナゴヤドームのように両極端の球場があるセリーグでは特にPFが○だから○倍ホームランが出やすい!と捉えるのは現実との乖離が大きくなるのではないか、という疑問が浮かんできました。

この疑問点で何が問題かと言うと、打撃指標等にこのパークファクターの補正が組み込まれているものもあるわけで、例えば上に挙げたようなことになるのであれば神宮は本来のPFより高く出ている≒打撃補正を下げ過ぎてしまっている可能性がある?、ということになるかもしれないなと思いました。
(これはホームランパークファクターで、補正としては得点パークファクターなどを活用するので少し意味合いが違いますが)

これに対する補正が既に行われているのでは…?と思い調べてみました。
…特に見つけられませんでした。

詳しい方いたら教えてください。
疑問が解消されたらここに追記していきたいなと思います。


6.  もう一度考える打撃力や投手力の影響


4章で"構造的には"打撃や投手力は影響しないのではないか、という話をしていきました。
ここでもう一度先ほど使ったA'球場の打撃やホームランの出やすさを他の球場やチームと入れ替えて数字の変化を確認してみたいと思います。

◎先ほど使ったA'球場

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◎打撃力が低いチームがA'球場を使用すると

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◎A'球場をホームランの出にくい(係数0.5)球場にすると

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◎ホームランが出にくく打撃力が低くなると

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いくつかパターンを試してみましたが、打撃の影響を受けて1枚目から2枚目ではパークファクターが1.68→1.63に変化しました。
このように再現性のある力を発揮したとしても、打撃力や投手力の大小によってパークファクターが変化してしまう可能性があるのかな、と考えました。
…という解釈をしましたが、現実的な問題として打撃力や投手力にここまで大きな差がチームとしてあるとは考えにくいため、気にしなくてもいいのかもしれませんね。


7.  相性の影響を考える


ここまでチームの打撃力や投手力、球場のホームランの出やすさのモデルから検討してきましたが、それぞれのチームに等しく同じ打撃力や投手力を発揮できるわけではありません。
楽天は西武によく殴られているような気がしますし、ロッテはホークスをこれでもかと叩いている気がしますし、そういう相性がチームごとにありますよね。
楽天は菊池雄星選手や山岡泰輔選手を何度も当てられるので、平均的な力量より対戦成績が悪くなっている(相性が悪い)…みたいなことも起こっているかもしれません。
それらも同様に数値化して考えてみます。

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この場合、チームAはBの投手と対戦する際、1.5倍の力が発揮でき、チームBはAの投手と対戦する際、0.4倍しか力を発揮できないという感じです。

これを100試合反映させると、

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基本的に相性をホームでもビジターでも同じように反映させている場合ほとんど影響はなく、少し数値がズレる程度の影響しか及ぼしていません。
かなり極端に数値を振っていますが、他の球場でも同様にこれらで数値に影響することはほとんどありません。
しかしホームとビジターで相性の違いが大きい(成績の違いが大きい)と分母と分子の値の変動によってパークファクターが変化する≒投打がパークファクターに影響する、みたいなことなのかなと個人的には考えています。
楽天生命パークでだけやたら(他の球場での対戦や球場の影響以上に)西武打線が爆発してしまう、ようなことがあるとそういうズレが大きくなってしまいます。


かなり私の個人的な解釈になってしまいますが本質的な投手力や打撃力、これは動かないものだという前提で、相性やあとは運の要素ですよね、これがパークファクターに影響を及ぼす的な話なのかなと勝手に解釈しています。
投手や打者の本質的な力量というより、相性や運的な要素で成績の差が大きい→ここを打撃や投手の影響を受けると捉えるかどうかですよね。
このようなあらゆる不確定要素で変動は起きますし、ホームランのイベント数自体が少ないので数本増減すると安打や得点などのそれと比べるとパークファクターに与える影響(変動)が大きいと思います。
ただ指標として使う際は3-5年の平均を使うので、そこらへんの影響は少なくなっていくのではないでしょうか。


8.  まとめ


今日の内容を簡単にまとめると、

・「平均的な球場と比較して」ではなく、「該当球場を除いた他の球場での平均と比較して」が適切なのでは?

・純粋なホームランの出やすさが大きい/小さいほどパークファクターの変動要因になってしまうのでは?

・この補正は存在するの?補正されて指標の算出に使われているのか?

・ない場合、PFの上振れ下振れが指標の補正に影響を与えてしまうのでは?
(ただし今回のはホームランパークファクターで、指標の補正に使われるのは得点パークファクターなので今回の議論とはズレている話です)

・ホームとビジターでの出来、不出来(成績の乖離)がパークファクターに影響してしまう(≠?,≒? 投手力や打撃力が影響する、運の要素も大きいよね

それと今回の話とはあまり関係ありませんが、実際に指標に組み込む際には、

補正係数=(本拠地試合/総試合)×PF+(1-本拠地試合/総試合)×(6-PF)/5

このような補正係数を使います。
パークファクターが1.5の球場を本拠地としていてもトータル1.5倍得している訳ではなく、使用するのは年間の半数程度で、残りは他球場を使うのを補正している訳ですね。(この場合は1.2とかになりますね)


このような形でかなり極端な例を使いながらパークファクターに影響する要因について構造的な部分を踏まえて考えてみました。
エビデンスもクソもないですが、パークファクターの構造的な部分はなんとなく理解できた気がしました。
ただここまで検証しといてなんですが、こんな露骨に投手力や打撃力、相性の差がプロレベルでついているかはかなり疑問なので、あまり問題となるものではないかもしれないですし、今回の趣旨であった本質的な打撃力や投手力の影響はある程度小さいのかな、という解釈に落ち着きました。

分かりにくい部分も多々あったかと思いますが、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
かなり個人的な解釈が盛り込まれているので、本筋とズレている部分も多いかもしれません。
構造上の疑問点が生まれたので、解消できる情報があれば教えていただけると幸いです。
私の疑問が解消されたらここにまとめて追記していきたいと思います。

ここまで書いて投稿する前にふと思ったんですが、本塁打と被本塁打の内訳を年次推移で見たりすると面白いかもしれないですね。
気が向いたらやりたいと思います。

以上、ごしまでした。

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