『高速道路』
カーラジオから流れてくるのは、当たり障りの無いスマッシュヒット・ナンバー。
余り車内の空気感は良くない。
それはそうだろう。
何せ突然の出張だ。
嫌になる・・・
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ウチの会社の景気は悪くない。
むしろ良い方だと思う。
その証拠に、納品した機械の修理・・・誰でも出来る様なほんの少しの手直しに、大の大人2名を派遣する位だ。
僕と・・・メンテナンス課の先輩。
殆ど面識の無い先輩と、組み立て工程課の僕の組み合わせは、実に謎だ。
ま。
上のお偉いさん達の考えた事だ。
取り敢えず現場へ向かうだけだ。
しかし、出張が決まってから数時間後・・・深夜3時には出発かよ。
しかも僕がハンドルを握りしめてから、かれこれ数時間が経っている。
先輩は助手席で気持ち良さそうに寝ているのだが、本当に大丈夫だと思っているのかな?
今、僕は猛烈に眠たい・・・
カーラジオから流れてきた、当たり障りのないスマッシュヒット・ナンバーはいつしか終わっており、何やらラジオドラマらしきものが始まった。
『お?!ホラードラマだよ!』
眠気覚ましにはもってこいの番組が始まったではないか。
ストーリーはこうだ。
『高速道路を走っていると、前を走る車が常に同じ車間距離を保っている事に気がつく。
坂道でも直線でも変わらずに・・・。
次第に距離の事ばかりに気を取られる様になり、追い越そうとするがやはり距離は変わらない。
気がつくとアクセルを踏みまくっていて、猛スピードを出したままガードレールを突き破り、そのまま・・・』
という話だった。
大して怖い話でもないし、『作り話にしては普通だ』と鼻で笑ってみた。
笑ってはみたものの、何か変な事に僕は気が付いた。
景色が全く動いていないのだ!!!
一体どういう事なんだ!!!
先輩!先輩!目を覚まして下さい!!
先輩!先輩!!
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おい!お前!!
起きろよ!!
起きるんだ!!
全然進んでないじゃないかっ?!
ここは最初のサービスエリアだぞ!!
早く起きろよ!!!
早く!!!
あ、あれっ?!
お、お、お・・・
お前?!
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