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『THE POWER STATION』〜今だからこそ再評価の時!!奇跡のセカンドアルバムを味わう!!〜


(前回からの続き)

バーナード・エドワーズが作り出した、ダイナミックなドラムサウンドは、大胆なエディットの効果も相まって、当時台頭し始めたHIPHOPの要素をも多分に含むものとなっていた。

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(その事が功を奏し、80年代のサウンドが『古めかしいもの』として揶揄されていた90年代以降も、『THE POWER STATION』アルバムへの評価は決して下がる事は無く、21世紀になった現在(いま)も、名盤として愛され続けている)



ファンク、ソウルのみならず、ロックサウンドに対しても素晴らしい仕事ぶりを発揮する、バーナード・エドワーズのプロデュース力への評価は一気に高まり、テリー・ボジオ率いる凄腕集団『ミッシング・パーソンズ』など、数多くのロック・ミュージシャンからプロデュースのオファーが舞い込む。(ギターは後にDURAN  DURANへと合流するウォーレン・ククルロだ。)

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それは同じく『CHIC』の同胞、ナイル・ロジャースによる、デビッド・ボウイマドンナ、ミック・ジャガーなど、白人ミュージシャンへのプロデュースが続いていた時期と重なっていたのも、非常に興味深い話だ。


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そんなバーナードへの評価を決定付けたアルバムがもう一枚有る。
ロバート・パーマーの『リップタイド』だ。

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THE POWER STATION』で、一気にワールドワイドな知名度を上げたロバートの、大ヒットアルバムにして、代表作とされるこのアルバム。
バーナード・エドワーズのサウンドメイキングにより、まるで POWER STATIONアルバムと、双子の兄弟の様な仕上がりになっている。(実際、ジョン以外のメンバーが揃っている。)


クールでソウルフルなロバートの歌声と、ゲスト参加のアンディ・テイラーのハードなギターサウンドの相性の良さも、いよいよ決定的なものとなり、ファンは『THE POWER STATION』再編成を渇望するのだが・・・


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1995年。
THE POWER STATION』用の楽曲を用意すべく、ジョン・テイラーアンディ・テイラーは創作活動に励んでいた。

時代は90年代。
かつて栄華を誇っていたミュージックビジネスシーンは、シリアスなメッセージ性を声高に叫ぶ『ラップ・HIPHOP』『グランジ・オルタナティブ』サウンドに駆逐され、その時代を終えようとしていた。


『以前のサウンドの焼き直しは通用しない。』


ダーク&ハードなギター、ドラムンベース的なビッグサウンド、ブラックコンテンポラリーをも見据えた、R&B的な要素などなど・・・
新しい『』を曲に盛り込んでいく。

だがしかし、そこにはもはやジョンが目指した『セックスピストルズ』的な要素は皆無。
レコーディング直前にジョンはプロジェクトより離脱する・・・

そんなジョンのパンクへの憧憬は、
◯スティーヴ・ジョーンズ(ギター)
◯ダフ・マッケンガイ(ギター)
◯マット・ソーラム(ドラムス)
とのスーパーバンド『ニューロティック・アウトサイダーズ』となり、やがてアルバムを発表するに至るのであった。(アンディ・テイラーのソロ作品にプロデューサーとして関わっていた、元ピストルズのスティーヴ・ジョーンズが居るのが何とも・・・)

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ジョンが離脱した事により、ベースパートをプロデューサーであるバーナード・エドワーズが兼任。

元々ジョン・テイラーのベース・アイドルであるバーナードのプレイに、心配など無用。
10年の時を経て、ファン待望『THE POWER STATION』のセカンドアルバムが完成した。

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私が聴いた最初の印象は『良いけど地味』。

これは多くの人が抱いた感想だろう。
当然だ。前作があまりにも強烈なサウンドだったからだ。


だが何度も聴き進んでいくと、このアルバムの本質が分かってくる。

過去の焼き直しを良しとしない、一流アーティストとしてのプライド、そしてクリエイターとしての開拓魂が『』と成り、一枚のアルバムに封じ込められているのだ。

個人的な意見として、アグレッシブな『DOPE

レッドツェッペリンのBLACK DOGを彷彿とさせる展開、及びトニーのパワフルなドラムが炸裂するタイトル・トラック『LIVING IN FEAR

グランジとブラスセクションのご機嫌な融合『SHOUT UP』など、新時代のロックンロールというべき楽曲を前半に配し、ボーナストラックや数曲をオミットすれば、更に良い作品になっていた筈だ。

そう。CD時代最大の特徴であり、弊害でもある『長時間収録可能』の影響が、マイナス作用になっているのだ。

それにより通してCDを聴いてみると『方向性が絞り切れていない印象』が残ってしまうなんて・・


本当に勿体無い。


時代をも取り込み、全て自分の色にしてしまう、ロバート・パーマーの恐ろしさ!!

そして、もはやリズム隊が『CHIC』である事を忘れてしまう、90年代型ダイナミックサウンド!!


寧ろ間違いなく良作である。と私は断言する。


今日も私はCDをトレイにセットして、今は亡きロバート、バーナード、トニーの素晴らしいプレイを心から堪能する。



これからも・・・ずっと・・・

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参考文献『THE  POWER STATION』『LIVING IN  FEAR』、DURAN DURAN『NOTORIOUS』ライナーノーツより。


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