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『哀愁のオリエント急行』

「どうしよう・・・」

オクシデント急行に間違えて乗ってしまった僕は、途方に暮れていた。

本来なら今頃はオリエント急行の指定席でゆったり寛ぎながら、駅弁を食べていた筈だったのに・・・

よりによって逆方向のオクシデント急行に乗ってしまうなんて!
やはり僕はどうしようも無い駄目な男なんだ・・
本当に参った・・・


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元はといえば、あの婆さんのせいなんだ!
普通に切符を買って、普通に駅弁も買って、普通にホームに向かって、普通にベンチに座って、ただ列車を待っていただけなのに!

見知らぬ婆さんの悲痛なリクエストに対して、いらん優しさを発揮しなければよかった!!

大体、「反対側のホームにある駅弁を食べたいから買うて来てくれんか?」って言うから行ってみたものの、『オリエント名物・ステーキどんぶりガーリック弁当』が、あんなに時間がかかる物だったなんて知らなかったよ!!

しかも別のホームに勝手に移動していて、探すのに時間がかかるわ、見つけて弁当を渡しても「人違いです」と言うわで、本当に最低最悪!!

終いに出発のベルに慌てて列車に飛び乗れば、逆方向のオクシデント急行という・・・

これじゃ彼女との待ち合わせに間に合わない!!

早く次の駅に着いてくれ!!
早く乗り換えたい!!


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東京・ステーションより発車して、かれこれ2時間は経つ。
現在はオクシデント急行を降り、バンコク・ステーションにてオリエント急行が来るのをひたすら待っているところだ。

彼女に電話しても繋がらない。

恐らく地球の電磁層の影響だろうが、これには本当に参った。
かと云って有線電話を使おうとしても、此方では駄目だった。
どうしよう!?

きっと彼女も心配しているだろうに・・・

諦めた僕は待合室へと向かった。
待合室に設置してある大きなモニター画面の前には、先程から人集りが出来ている。


「何かあったのか?」


人垣を掻き分け、モニターが見える場所まで辿り着くと、どうやら緊急ニュース速報が流れている様だ。


「オリエント急行が脱線事故だって?!
しかも僕が乗る筈だった列車じゃないか!」


最新の行方不明者のテロップが流れている。


「僕の名前もあるじゃないか!!」


やはり急いで連絡しなくては!!

荷物を置いたベンチに戻ると、そこに有った筈の僕の荷物は忽然と姿を消していた・・・


『ドン!!』


男が僕にぶつかり、何か文句を言いながら去っていく。
ここはバンコク・ステーション。

異国の地。


日本語は通じない。

携帯デバイスに翻訳機能が有る事を思い出した僕は、ジャケットの内ポケットに入っている携帯デバイスを取り出そうとした。

「無い?無い!!!」

スリだ!!さっきの男の仕業だ!!!

やはり僕はどうしようも無い駄目な男なんだ・・・

このままでは本当に死んだ事になってしまう・・・


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「これで彼は帰る方法を失い、このバンコクの地に住まざるを得ないでしょう。これで宜しいでしょうか?」


「ありがとう。これが一番良い方法なのよ。私と居れば彼は間違いなく狙われる。死んだ事になれば彼の命は助かるのよ。」


「エージェント・K。次のミッションは?」




「そうね。貴方の口を封じる事よ。」




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「哀愁のオリエント急行」 つちやかおり

作詞・湯川れい子

作曲・筒美京平

俳優として金八先生などで人気を博していた「つちやかおり」さんが、遂にデビュー!!♫

リリース当時、音楽の最先端であったテクノポップを、筒美京平先生流に解釈し生まれたのが、このマジカルなナンバー!!♫

今もカバーを生み出し続ける、まさに名曲です!♫






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