「アイドル映画の皮を被ったオカルト映画。その名は・・・」
昔々、その昔。
昭和の頃の話だ。
インターネットなど夢物語だったあの頃。
地方都市に住んでいる我々にとって、かつて「映画を観る」事は「賭け」に近いものがあった。
細かい情報など殆ど無い中、予告とチラシとポスターと、映画雑誌の記事を読み込み、脳内でイメージを増幅させ、無駄に期待値を高めていくプロセス。
既にこの時点で『映画はスタートしている。』と云えよう。
さあ。劇場へ足を運び、蓋を開けて観よう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
大抵はハズレもなく、普通に夢の中で楽しいひと時を過ごせるのだが、中には宣伝されていたイメージなど何処吹く風・・・
失笑と失意と、怒りと悲しみが入り混じった感情の中、帰路につかねばならない時もある。
『騙された!』
もしくは。
『何だアレは!?』だ。
しかし、その時は
『時間と金の無駄』
と思っていても、何故か心に遺るのは『普通に面白い映画』ではなく、そういった『何だアレは!?』という映画なんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『愛・旅立ち』 舛田利雄監督 1985年
当時、トップアイドルであった主演の二人(中森明菜、近藤真彦)の演技は、それはそれは凄まじいものであった。しかし、それを遥かに凌駕する展開に度肝を抜かれた。
「耳なし芳一?!」「しかもお婆ちゃんに耳なし芳一を読み聞かせ?!」「仔犬に付けた名前が芳一?!」
荒唐無稽で奇想天外な物語に引っ張られる様に、グングンと加速度を上げ、観客をもブッチギって行く二人・・・。
幸運か、はたまた運命なのか、僕は劇場のスクリーンで、この映画を観た。
隣の座席で感涙の境地に至っている女子のリクエストとは云え、『何だコレは!?』を連発せずにはいられない。
というか何故キミは泣いている?!
だってこれは
『アイドル映画』の姿を借りた『オカルト映画』
なんだゼ!?
終演後、僕は彼女と何を話したか覚えていない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数年後。丹波哲郎さんにより、『大霊界』が本格的にスタートする。
この『愛・旅立ち』は、まさに『大霊界』のプロトタイプだ。
同時上映が何だったのか思い出せない位に、
『何だアレは?!』
な映画なのだ。
必見です!!(未DVD化)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?