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直接原価計算

◯全部原価計算と直接原価計算

材料費のように製造、販売量に比例して発生する費用を変動費、支払家賃のように製造、販売量に関係なく発生する一定額の費用を固定費といいます。

これまで学習した原価計算は変動費と固定費に分けておらず、このような計算方法を全部原価計算といいます。全部原価計算の場合、固定費の性質が無視されるので、製造や販売量との関係が分かりづらいため、変動製造原価のみを製品原価として集計し、固定製造原価は発生額全額をその期間の費用として計算する方法があり、これを直接原価計算といいます。

例)次の資料をもとに、利益を出す最低限の製造量を計算せよ。
・製品1個あたりの販売単価@100円
・製品1個あたりの原価@70円
・固定費の発生額は200円

製品を7個製造すると、売上700円、原価490円、費用200円となり、
700 - 490 - 200 = 10円の利益が出る。

◯損益計算書

次の例をもとに、全部原価計算と直接原価計算の損益計算書を比較してみます

例)次の資料をもとに損益計算書を作成せよ。なお販売単価は@150円とする。

・全部原価計算

直接材料費 = 30 × 5 = 150円
加工費(変動費) = 20 × 5 = 100円
加工費(固定費) = 150円
当期完成品 = 150 + 100 + 150 = 400円
当期完成品単価 = 400 ÷ 5 = @80円
期末製品 = 80 × 1 = 80円
売上原価 = 400 - 80 = 320円
売上高 = 4 × 150 円 = 600円
販売費及び一般管理費 =(10 × 4)+ 100 = 140円

・直接原価計算

直接原価計算では、売上原価と販売費及び一般管理費を変動費と固定費に分け、変動製造原価のみを製品原価として計算します。また、売上高から変動売上原価を差し引いた金額を変動製造マージンといいます。

そして変動製造マージンから変動販売費を差し引いた金額を貢献利益、貢献利益から固定費を差し引いた額を営業利益といいます。なお、固定費製造原価は発生額を記入します。

直接材料費 = 30 × 5 = 150円
加工費(変動費) = 20 × 5 = 100円
当期完成品 = 150 + 100 = 250円
当期完成品単価 = 250 ÷ 5 = @50円
期末製品 = 50 × 1 = 50円
変動売上原価 = 250 - 50 = 200円
変動販売費 = 10 × 4 = 40円
売上高 = 4 × 150 円 = 600円
貢献利益 = 600 - 200 - 40 = 360円
固定製造原価(加工費の固定費) 150円
固定販売費及び一般管理費 = 100円

◯固定費調整

全部原価計算の営業利益は140円、直接原価計算の営業利益は110円と30円の差額が生じています。これは全部原価計算には加工費(固定費)のうちの期末商品分(30円)が含まれていないため、生じる差額です。

そこで直接原価計算の営業利益を全部原価計算の営業利益に一致させることを固定費調整といいます。

固定費調整
全部原価計算の営業利益 = 直接原価計算の営業利益
                                                  + 期末製品に含まれる固定製造原価
              - 期首製品に含まれる固定製造原価

◯CVP分析

CVP分析とは、原価(Cost)、製造・販売量(Volume)、利益(Profit)の関係から利益を分析する手法です。これによって損益分岐点の売上高や目標利益の設定などができます。

・損益分岐点

損益分岐点の売上高とは、営業利益がちょうどゼロになる時の売上高です。これを求めるにはまず販売量をV(個)、営業利益を0(円)として販売量を求めます。

上記の例の場合、
売上高 = @150 × V
変動費 =(@30 + @20 + @10)× V = @60 × V
貢献利益 = 150V - 60V = 90V
固定費 = 250
90V - 250 = 0 より、V ≒ 2.8なので、
損益分岐点の売上高は150 × 2.8 ≒ 420円となります。

これとは違うパターンとして、損益分岐点の売上高をN(円)として、計算することもできます。
この場合、変動費の売上高に占める割合(変動費率)もしくは貢献利益の占める割合(貢献利益率)を先に求めます。なお売上高から変動費を差し引いた額が貢献利益のため、変動費率 + 貢献利益率 = 1 です。

上記の例の場合、
変動費率 = 60V ÷ 150V = 0.4
貢献利益率 = 90V ÷ 150V = 0.6
となります。
これより損益分岐点の売上高は0.6 × N - 250 = 0 よりN ≒ 420円と求めることができます。

損益分岐点の売上高 = 固定費 ÷ 貢献利益率

・目標営業利益

目標営業利益を計算する場合は、先ほどの0のところを目標営業利益に置き換えるだけです。

例)売上高100V(円)、変動費60V(円)、固定費200円、目標営業利益1,000円とする。目標営業利益を達成する売上高を求めよ。
100V - 60V - 200 = 1,000より、V = 30個
よって売上高 = 100 × 30 = 3,000(円)

別パターン
変動費率 = 60V ÷ 100V = 0.6、貢献利益率 = 1 - 0.6 = 0.4
0.4N -  200 = 1,000 より、N =3,000円

・目標営業利益率

目標営業利益率とは、営業利益の売上高に対する割合のことです。これまで学習した内容と合わせて、次のような公式が成り立ちます。

目標営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高
目標営業利益を達成する売上高
= 固定費  ÷(貢献利益率 - 営業利益率)

例)販売単価@200円、変動費@60円、固定費200円とする。目標営業利益率50%を達成する売上高を求めよ。

変動費率 = 60 ÷ 200 = 0.3
貢献利益率 = 1 - 0.3 = 0.7
目標営業利益を達成する売上高 = 200 ÷(0.7 - 0.5)= 1,000円

・安全余裕率

安全余裕率とは、売上高が損益分岐点をどれだけ上回っているかを表す比率で、これが高いほど経営が安全であることを意味します。

安全余裕率 =(予想売上高 - 損益分岐点の売上高)÷ 予想売上高 × 100

例)損益分岐点の売上高が100円、予想売上高が200円の時の安全余裕率を計算せよ。

安全余裕率 =(200 - 100)÷ 200 × 100 = 50%

◯原価の固変分解

直接原価計算では、原価を変動費と固定費に分ける必要があります。これを原価の固変分解といい、項目ごとに分ける費目別精査法と過去の一定期間における生産量とその時の原価データにもとづいて分ける高低点法があります。

・費目別精査法

費目別精査法は費目ごとに原価を変動費と固定費に分類する方法なので、これまで通り、問題文に指示された通りに分類して計算します。

・高低点法

高低点法では、まず与えられた資料から最高の生産量と最低の生産量、およびその時の原価を抜き出し、その差額から変動費率を求める方法です。

変動費率
=(最高点の原価 - 最低点の原価)÷(最高点の生産量 - 最低点の生産量)

変動費率を求めたら、そこから変動費と固定費を求めます。

例)次の資料をもとに、変動費率と固定費を計算せよ。

最高点:6月の生産量9個、原価発生額1,800円
最低点:3月の生産量3個、原価発生額1,200円
変動費率 =(1,800 - 1,200)÷(9 - 3)= 600 ÷ 6 = @100円
固定費 =
1,200 - 100 × 3 = 900円


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