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固定資産

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〇割賦

割賦とは、通常5年以内の契約期間のなかで、物品の購入代金を分割払いで支払い、契約満了後にその資産を受け取れる契約です。その際は取得原価(購入代価+不随費用)のほかに、利息が発生します。このときに発生する利息は、原則として取得原価に含めることはできません。

また、購入時にはまだ利息は発生していないので前払利息などで処理し、その額は支払総額から購入代価を差し引いて求めます。

例)当期首において、土地1,200円の購入を12回の分割払いで契約した。なお、利息分に関しては前払利息で処理し、毎回の支払額は110円である。
支払総額 = 110 × 12 = 1,320
前払利息 = 1,320 - 1,200 = 120
(土地)1200  (未払金)1320
(前払利息)120

割賦金を支払った際には、支払った分の未払金を減らし、該当の額を前払利息から支払利息に振り替えます。

例)上記で購入した土地について、1回目の支払いを現金で行った。
(未払金)110 (現金)110
(支払利息)10 (前払利息)10

※上記の例では購入時に前払利息で処理をしていますが、問題によっては支払利息で処理をする場合もあるので注意してください。なお、その際は決算日において未払いの利息を前払利息に振り替えをします。
例)
・当期首に購入
(土地)1200  (未払金)1320
(支払利息)120
・1回目の支払い 
(未払金)110 (現金)110
・決算日において3回分支払いが残っている場合
(前払利息)30 (支払利息)30

〇減価償却

・間接法、直接法

3級では減価償却費を計上する際に、減価償却累計額で処理をしていました。これを間接法といいます。直接法は減価償却費と同じ額だけ直接固定資産の金額を減らす方法です。

例)決算日において当期首に取得原価1000円で購入した備品の減価償却を行う。なお減価償却方法は定額法を用い、耐用年数10年、残存価格0円とする。
減価償却費=1000/10
     =100
間接法:(減価償却費)100  (減価償却累計額)100
直接法:(減価償却費)100  (備品)100

・定率法

定率法とは、期首時点の未償却残高(帳簿上の価額)に一定の償却率をかけて減価償却費を計算する方法です。

減価償却費 = (取得原価 ー 期首減価償却累計額)× 償却率

償却率は問題文で指示がない場合、次のように求めます。※令和5年1月現在

定額法の償却率 = 1 ÷ 耐用年数

定率法の償却率(200%定率法) = 定額法の償却率 × 200%

例)耐用年数10年の償却率
定額法の償却率 = 1 ÷ 10 = 0.1
定率法の償却率 = 0.1 × 200% = 0.2

例)3月末の決算日において、昨年10月1日に購入した1000円の建物の減価償却を行う。なお減価償却方法は定率法を用い、耐用年数10年、残存価格0円とし、記帳は直接法とする。
定額法の償却率 = 1 ÷ 10 = 0.1、定率法の償却率 = 0.1 × 200% = 0.2
1年分の減価償却 = 1000 × 0.2 = 200、月割計算:200 ×(6/12)= 100
(減価償却費)100  (建物)100

※2年目以降は次のようになる
2年目の減価償却費 = 900 × 0.2 = 180
(減価償却費)180  (建物)180
3年目の減価償却費 = 720 × 0.2 = 144
(減価償却費)144  (建物)144

定率法の場合、減価償却額が年々少なくなってしまうのである程度償却が進んだ時点で、定額法的な減価償却に変わります。判断基準は償却保証額よりも少なくなった時点です。償却保証額は次のように求めます。

償却保証額=取得原価×保証率

定率法で計算した減価償却額が、償却保証額を下回りそうになる場合、それ以降の年度は、通常の償却率ではなく、改定償却率で計算します。

下回りそうになる年度の減価償却額 = その年度の帳簿価額× 改定償却率

耐用年数、償却率、改定償却率および保証率は法により決まっているので、問題文に掲載されています。

例)決算日において当期首に取得原価1,000円で購入した備品の減価償却を行う。なお減価償却方法は定率法を用い、耐用年数5年、残存価格0円、償却率0.4、保証率0.108、改定償却率0.5とし、記帳は間接法とする。
償却保証額=1,000 × 0.108 = 108
1年目の減価償却費 = 1,000 × 0.4 = 400 > 償却保証額
(減価償却費)400  (減価償却累計額)400
2年目の減価償却費 = 600 × 0.4 = 240 > 償却保証額
(減価償却費)240  (減価償却累計額)240
3年目の減価償却費 = 360 × 0.4 = 144 > 償却保証額
(減価償却費)144  (減価償却累計額)144
4年目の減価償却費 = 216 × 0.4 ≒ 86 < 償却保証額
4年目の減価償却費 = 216 × 0.5 = 108
(減価償却費)108  (減価償却累計額)108
5年目の減価償却費 = 216 × 0.5 = 108
(減価償却費)108  (減価償却累計額)108

・生産高比例法

生産高比例法とは、当期に利用した分だけ減価償却費を計上する方法です。自動車や航空機など、総利用可能量等が明らかな固定資産には生産高比例法を適用することができます。

減価償却費 =(取得原価 - 残存価格)×(当期利用量 ÷ 総利用可能量)

例)決算日において当期首に取得原価1,000円で購入した車両運搬具の減価償却を行う。なお、この車両運搬具の総可能走行距離は100km、当期の走行距離は10km、残存価格は取得原価の10%、記帳は間接法とする。
減価償却費 = {1,000 -(1,000 × 10%)}×(10 ÷ 100)
                   =(1000 - 100)× 0.1 = 90 
(減価償却費)90  (減価償却累計額)90

〇買い替え

買い替えとは、使用していた固定資産を下取りに出して、新しい固定資産を買うことです。この時の仕訳は次の2つの処理に分けて考えます。
①旧固定資産の売却
②新固定資産の購入

例)取得原価2,000円、減価償却累計額1,000円の車両を下取りに出し、新車両3,000円を購入した。なお、旧車両の下取り価格は500円であり、差額は現金で支払った。
①旧固定資産の売却
(減価償却累計額)1,000 (車両運搬具)2,000
(現金)     500    
(固定資産売却損)500
②新固定資産の購入
(車両運搬具)3,000   (現金)3,000 
回答の仕訳:①+②
(減価償却累計額)1,000 (車両運搬具)2,000
(車両運搬具)3,000   (現金)2,500  
(固定資産売却損)500

〇除却

除却とは、固定資産の使用をやめて倉庫などに置くことを宣言することです。その際、処分価値(売ったらお金になる価値)が残っている場合には貯蔵品として記帳し、その差額は固定資産除却損として費用で処理します。

例)取得原価1,000円、減価償却累計額800円の備品を除却した。なお、処分価値は100円とする。
(減価償却累計額)800 (備品)1,000
(貯蔵品)    100
(固定資産除却損)100

〇廃棄

廃棄した場合は処分価値はないので、帳簿価額を固定資産廃棄損として費用で処理します。なおその際に発生した費用も含めて処理します。

例)取得原価1,000円、減価償却累計額800円の備品を廃棄した。その際に発生した廃棄費用100円は現金で支払った。
(減価償却累計額)800 (備品)1,000
(固定資産廃棄損)300 (現金)100

〇建設仮勘定

完成していない固定資産について建設中等に代金の一部を支払う(手付金)際は建設仮勘定として資産で処理します。

例)建物の新築のため、手付金100円を現金で支払った。
(建設仮勘定)100  (現金)100

完成をして引き渡しを受けた際は、請負金額で固定資産を仕訳し、建設仮勘定を固定資産の勘定に振り替えます。

例)建物が完成し引き渡しを受けたので、請負金額1,000円のうち未払金900円を小切手で降り出した。なお建設仮勘定の残高は100円とする。
(建物)1,000  (当座預金)900
        (建設仮勘定)100

◯滅失

固定資産が災害等で損害を受けたときは、保険をかけているかどうかで処理が異なります。

・保険有り

保険会社から支払われる金額が確定するまでは、固定資産の帳簿価額を未決算勘定として資産で処理します。未決済勘定には火災未決算保険未決算などがあります。

例)建物が火災により焼失した。なおこの建物の取得原価は1,000円、減価償却累計額は600円、火災保険は300円である。
(減価償却累計額)600  (建物)1,000
(火災未決算)400

その後保険会社から支払われる保険金が確定したら、未決算勘定を未収入金に振り替えます。その際の差額について、保険金の方が多い場合は保険差益として収益で、少ない場合は火災損失として費用で処理します。

例)保険会社から保険金が500円で確定したと連絡が来た。
(未収金)500 (火災未決算)400 
        (保険差益) 100

例)保険会社から保険金が300円で確定したと連絡が来た。
(未収金)300 (火災未決算)400 
(火災損失)100

・保険無し

保険にかけていない場合は、火災損失で仕訳します。

例)建物が火災により焼失した。なおこの建物の取得原価は1,000円、減価償却累計額は600円、火災保険は未加入である。
(減価償却累計額)600  (建物)1,000
(火災損失)400

◯圧縮記帳(直接減額方式)

・国庫補助金受贈益

地球温暖化のための廃棄物処理施設など、特定の事業のために固定資産を取得する際に、国や地方公共団体から受ける補助金を国庫補助金といい、国庫補助金受贈益として収益で処理します。

例)国から国庫補助金1,000円が普通口座に振り込まれた。
(普通預金)1,000  (国庫補助金受贈益)1,000

・工事負担金受贈益

水道、電気、ガスなど公共事業を営む企業が、利用者から施設等の建設や整備のために受け取る資金を工事負担金といい、工事負担金受贈益として収益で処理します。

例)工事負担金1,000円が普通口座に振り込まれた。
(普通預金)1,000  (工事負担金受贈益)1,000

・圧縮記帳

圧縮記帳とは、国などから補助金をもらって固定資産を取得したときに税金が掛からないようにする処理のことです。簿記2級では直接減額方式を用います。

通常建物2,000円を現金で支払い、取得した際は
(建物)2,000  (現金)2,000
と仕訳しますが、このままでは国からもらった補助金にも税がかかってしまうため、補助の意味がありません。そこ補助金の額だけ固定資産圧縮損として費用で処理し、相手科目は該当する固定資産で処理します。

例)国庫補助金の対象になっている建物2,000円を現金で購入した。なお国庫補助金受増益の残高は1,000である。
(建物)2,000      (現金)2,000
(固定資産圧縮損)1,000  (建物)1,000

こうすることで国庫補助金受贈益を固定資産圧縮損で打ち消すことができます。また減価償却は圧縮記帳後の帳簿価額について行います。

例)決算につき、上記の建物の減価償却を行う。なお定額法を用い、耐用年数20年、残存価格0円、間接法で記帳とする。
減価償却費 = 1,000 ÷ 20 = 50
(減価償却費)50  (減価償却累計額)50

◯固定資産台帳

固定資産台帳とは、所有する固定資産の状況を管理するために作成する補助簿です。

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