見出し画像

ありのままの自然が好きなのか

朝から空気に湿り気が。猛暑の夏が戻りつつある。

夜、鶏蕎麦を食べたあと喫茶店に。PCで前日の日記を書く。隣りの席で保険の商談が始まる。某外資生保の営業職員。少し日焼けした肌に、きめ細やかな生地のグレイのスーツ。ジャケットの袖からは触れたら壊れそうなほど繊細なデザインのカフスがのぞき、留められたシャツの袖口には高級ブランドの時計が鈍く光る。彼の朗々たる声は自信に満ち溢れ、耳を塞いでも遮りがたい。

契約前の重要説明事項の規定を読み上げている。退屈なはずの規定説明を、ときおり冗談を交え、顧客トラブルの事例で聞き手の興味を惹きながら、明快かつ雄弁に語る。隣りにいた私まで、外貨建て終身保険のリスクや免責事項に詳しくなってしまった。彼の演説はなおも続く。

ご契約していただいた後は、引き続き私がアフターサービスを担当します。生保の営業マンって、契約した途端に冷たくなって、その後全然相手してくれなくなるんじゃないかって、心配になる方もいらっしゃるかと思います。もし契約後の私の対応に、あるいは当社のカスタマーセンターの対応に不満があったら、ぜひこちらの紛争解決機関の連絡先にコンタクトしてみてください。契約者保護を何よりも優先する第三者機関ですので、お客様の力になってくれるはずです。

紛争解決機関の情報を敢えて先に開示するあたり、アフターサービスにも絶対の自信があるのだろう。そうして彼は、某企業の株価情報や、警察に自動車のスピード違反で切符を切られそうになった時の切り抜け方(?)など、相手にとっておそらく耳よりな情報を次々と繰り出していく。圧巻。いつの間にか、グラスの氷が溶けて、アイスコーヒーが薄味に。日記は書き終わらなかった。

帰り道、奥さんがちょうど読み終えた小川洋子の『猫を抱いて象と泳ぐ』の話を聞く。読み終わってしまったことを、心から惜しんでいる様子だった。帰宅してから、冒頭の数頁を読んでみる。

その後はジム。中村寛『残響のハーレム』の続き。

イラストに描かれた「自然物」が、いずれも野放しの自然ではないことである。野生の森林がそこにひろがっているのではない。そこにあるのは、人間の手によって巧妙に制御され、丁寧に管理されつづける必要のある「自然」である。

中村寛『残響のハーレム』共和国,p.239

ハーレム地区に隣接するコロンビア大学のキャンパス拡大計画。引用は、同大学webサイトに掲載された同地区の未来イメージイラストに対する著者のコメント。文脈とは全く無関係に、昨日の昭和記念公園のことが頭に浮かぶ。ありのままの自然が好きなのか、人間による制御・管理の結果としての自然が好きなのか、どちらかよく分からなくなるときがある。公園の緑は、見事に美しく刈り整えられていた。歩道や自転車道も、人間が移動しやすいように舗装されていた。雀蜂などの危険な動植物の姿も、全く見当たらなかった。それらを制御し、管理する人間の姿は。

SmartNewsのトップに並んだ記事。

・イージス・アショアは「無敵の超兵器」か「大いなる無駄」か?(ハーバー・ビジネス・オンライン)
・フィジー沖とインドネシアで相次ぎ地震、ロンボク島で2回(CNN.co.jp)
・徳川埋蔵印、150年ぶり発見 通商条約批准書に押印(朝日新聞デジタル)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?