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音楽って、音楽って、

2023年10月2日(月)
ものすごく満ち足りた気持ちで文字を綴っています。いつもより軽やかなフリック入力、踊る指先、嗚呼いますぐ楽器ケースを開けて音を奏でたい。後ろ向きなんて言葉では到底足りぬほど沈み込んでいたここ数日間の精神状態が嘘のよう。

実はね、人生で初めて、N響の生演奏を聴いてきたのです。
幼い頃から幾度もテレビで見てきたNHK交響楽団、いつか生で聴いてみたいな、と思いつつ、これだ!と思える演目と自分のタイミングが重なることもなかなか無く、"いつか" と思うまま ただ年月が過ぎていたのですが。

先月の22日。なんと、あのN響が山形に来るという情報がTwitterで流れてきたのです。しかも指揮は下野先生!(大学時代にオケや副科指揮を教わり、卒業した今も大大大好きで大尊敬している方)
で、メインは、、、ドヴォルザークの交響曲第8番?!?!!最高すぎて意味がわからない……これじゃん、わたしが求めていた演奏会これじゃん……行かなきゃじゃん……
山形とはいえN響が来るんだもの、だいぶ前に予約開始していたみたいだしチケットあるといいな、と思い恐る恐るサイトに飛んでみると、割といい席もちらほら残っており複雑な気持ちにはなった。ものの、ありがたくS席を確保。N響でこのプログラムを¥2,500で聴いていいのだろうか。オーケストラキャラバンに、文化庁に、ユースチケット制度に、感謝。

今回のプログラムは
・ドヴォルザーク:序曲「謝肉祭」
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」
・ドヴォルザーク:交響曲第8番
の3曲だった。

謝肉祭序曲は今までにも何度か弾いたことがあり、弾く度に、ん〜あまり好きじゃない…と思ってしまう曲。
それなのに今回の演奏会で、涙を流してしまった。自分でもびっくりした。
正直ド頭は思っていたほど音圧が来なくてン?と思ったのだけれど、聴いていくうちにやまぎんホールの響きに耳が慣れてきて、目の前でひたすら弓を動かす弦楽器セクションと、大学時代に何時間も見てきた下野先生の唯一無二の指揮棒さばきに見蕩れ、各楽器のコントラストに心奪われ、ほろりほろりと涙が。

ピアノ協奏曲は割愛。モーツァルトを飽きさせずおもしろく聴いてもらうことって本当に難しい、どうすれば良いのだろうね。弾いている本人の脳内がそのままお客さんに伝わればいいのにって思う。自分がモーツァルトの協奏曲を弾いている時、オペラみたいに、とか、ここはくまの親子が仲良く話している場面、とか色々味付けしているものはうまく伝わっているのだろうかと毎回不安になる。前途多難。

休憩時間は立ち上がる気分じゃなくて、本を読んで過ごした。

さていよいよ、ドヴォルザークの交響曲第8番。
大学4年の夏の定期演奏会で演奏して以来、愛している曲。2ndヴァイオリンの1プルトに座り、先生の指揮を目の前で堪能したあの夏を、わたしは一生忘れられないと思う。下野先生が私たちに本気で向き合い、投げかけてくれた、時にはものすごい剣幕で怒りながら伝えてくれた言葉の数々が、今でも脳みそに焼き付いている。

1音目、チェロの音色が響いた途端、制御しようのない涙がぼろぼろと溢れ出た。あまりにも素晴らしかった。2日経った今、思い出しながら書いているのに泣いてしまうくらいに。
本当に、各セクション、輝いていた。低弦が好きすぎるのでどうしてもそこは贔屓目に見てしまうのだが(クラシック音楽館でN響を見るときも必ずチェロバスに目が行ってしまう)、管楽器も、打楽器も、本当に良かった。みんながひとつの音楽を表現しようと、必死に音を鳴らしていた。東北での演奏だからって手を抜くことなんかせず、ちゃんと全力で、それが伝わってきた。だから尚更うれしくて、結局曲が終わるまでずっとずっとずーっと泣いてた。特に良かったのは2楽章の頭。もし私があの場に1人だったら、声をあげて泣いていたかもしれない。
コンサートが終わる頃には顔はべたべたで、でも、ものすごく満ち足りた気持ちだった。わたしのお隣に座っていたマダムも1曲目から泣いていて、途中から同士のような気持ちで居たからそれも含めて良かった。

ひとつのコンサートにこんなに長い感想文を書くのなんて久石さんのWDO以来だったけど、本当に、生の音楽のエネルギーというのはものすごいね。普段音を生業にして、向き合っているからこそ視野が狭くなりがちというか、難しく考えてしまいがちなのだけれど、感動するお客さんの気持ちを久しぶりに味わえて大変に良い夜でした。

音楽って、素晴らしい。

とっても立派なホール。
宮城もこのくらいデカい駅直結ホール作ってくれ。
階段横の壁が素敵だった
開演前に併設されているカフェでいただいたロールケーキ
パリパリふんわりで美味しかった…
アンコールの赤とんぼがまるでドビュッシーみたいな和声感で
とても良かった。西村朗さんがN響のために書いたらしい。

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