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初めてのキャンプ(2)

雨の中、彼と2人でテントとタープを運んだ。途中、さっきの元気なお兄さんがアドバイスをくれた。

「タープから張って、テントとくっつくようにした方がいいよ。」

本当に面倒見がいいお兄さんだ。何かわからないことがあったら連絡してねとも言ってくれた。頼れそうな人がいて安心した。


割り当てられたテントサイトに到着し、言われた通りにタープから張り始めた。ケースに付いていた説明書を一生懸命解読しながら、ポールを組み立て、布を広げ、ペグを打って…。

時々知らない言葉が出てきて、「これは何のことを言っているんだ?」となることもあったが、私たちはとりあえず作業を進めていった。


そして、7割くらい完成したタープを見て思った。

「あれ…?テントはどこに張ればいいんだろう。タープの向き間違えたかな??」

焦った。せっかくうまくできていると思ったのに、向きが違ったらやり直しだ。でも、仕方がない。打ったペグを外し、タープの向きを90°回転させることにした。


その時!!突然あの元気なお兄さんが、私たちのところへやってきた。

「調子はどう?」

ナイスタイミング過ぎて感動だ。ヒーローみたいに走って現れたお兄さんに、私はちょっとワクワクした。


私たちは、ちょうどタープの向きを変えようとしているところだった。

元気なお兄さんはタープの向きを教えてくれた。お兄さん曰く、タープの向きは初めに私たちが張っていた向きで問題ないということだった。ついでに張るのも手伝ってくれた。なんていい人なんだ。

去り際に、テントを張る場所のアドバイスまでくれた。


お兄さんの登場で元気が出た私たちは、続いてテントの設営に取り掛かった。

この時には既に、手も足も泥だらけだった。おまけに私は彼に借りたベンチコートを着ていたのだが、裾が長いせいでしゃがむたびに泥を付けてしまっていた。


だけど、そんなことは気にならないくらいに、楽しかった。

小さい頃からキャンプに連れて行ってもらっていたが、その頃私がやっていたのはテント張りのお手伝い程度だった。実際に全部自分たちでやってみると、あの頃思っていた以上に、テント張りは大変だった。

それでも、彼と協力しながら作業を進めていくのが、本当に楽しかった。


テントはタープよりもずっと張るのが大変だった。

作業中、周りからバーベキューのにおいが漂ってきて、お腹が鳴った。それでも、テントを張らなくてはいけない。完成しないと眠る場所がないからだ。

タープを張ったときのように、説明書にかじりつきながらテントを張った。たくさんの失敗をしながら、ようやくあと一息というところで、またお兄さんが登場した。

「いいところまで、いってんじゃん!!」

褒められた。


すごく気持ちがよかった。ここまで必死に、何かを作り上げようとしたのはいつ以来だろうか。お兄さんの言葉は私たちの頑張りを認めてくれたような気がして嬉しかった。

お兄さん、見守っていてくれてありがとうございました。


無事テントを張ることができた私たちは、お腹がペコペコだった。最後の力を振り絞って、寝床や食事の準備をした。

全ての準備ができるまで、3時間くらいはかかっていたと思う。

バーベキューコンロを囲み、持ってきたお肉と野菜、おにぎりをほおばりながら、1日を振り返った。


楽しいことだらけだったけど、ヘトヘトになってしまった。私たちは早めにテントの中に引っ込んで、眠ることにした。

テントの壁は薄い。屋根に雨が打ち付ける音、隣の人たちが夜中まで語りあっている声、いろんな音を聞きながら眠りについた。

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つづく

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