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週末グロッキー

最近(といっても今年の夏からだが)ある副業(バイト)を始めた。
体を使う作業だ。そして3K作業と言っていいだろう。

一般的に言う3K作業とは「きつい」「汚い」「危険」の3つを表すことが多いと思う。今 私がやっている副業は、その一般的な3Kに加えて「臭い」もあるため4K作業だったりする。

Kが揃っている作業であることは始める前から分かっていたことだし、それを分かったうえで自分から希望したため不満はない。

ただ、気持ち的に不満はなくても体は別問題だった。




副業(バイト)は完全な外作業だ。これから暑さが本格的になるぞという頃からシフトに入り始めたのだが、アルバイトリーダーに「ゴロゴロさんは一番最悪な時期に始めたね」と言われた。「でしょうね」と思ったのは言うまでもない。

初めてシフトに入ったのは2023年の夏はじめ頃。
午後から3時間ほどの予定で初シフトに入った。

まずはリーダーに、道具の使い方や作業のやり方のレクチャーを受けて「あとよろしく」と3ヶ所ほど担当することになった。「あとよろしく」この一言でいきなり独り立ちさせられたわけだが、(個人的にだが)特に問題はなかった。それくらい単純明快な作業なので、ただひたすら目の前の作業に没頭すれば良いので楽。

気持ちは楽だが、屋外なのに加えてずっと体を動かし続ける作業なのでけっこう疲れる。ある程度の力もいる。そして臭い。

そう、匂いがあるのだ。

この匂いは気温によって感じ方も違ってくる。気温が高いときはとにかく強烈。鼻をつんざく刺激臭が鼻腔の奥に襲いかかってくる。鼻の奥をずっと尖ったもので刺されているような感覚だ。

慣れればどうってことないのだろうが、いかんせん私は初めての作業になるためその刺激臭にやられ若干の眩暈を覚えるほどだった。蒸し暑い空間で「ムワォン」という、そんな効果音が似合いそうな匂いに全身包まれながらの作業となる。この匂いに関しても「ある」というのを分かっていて飛び込んだ世界だ。臭いからと言って嫌な気持ちになっているわけでない。

ただ、「想像していたよりも夏場のこの匂いは強烈だった」というだけのこと。その証拠に、この前シフトに入った時は真夏の時期よりも気温が落ち着いてきているからか匂いもそこまで強烈に感じず、気温というのは何かと影響してくるものだと思った。

話を戻して、蒸し暑さや想像していたよりも強烈だった匂い、常に体を動かし続ける初めて経験する作業という要素が、生まれて初めての眩暈からの気絶寸前という体の不調を引き起こした。

ぶっ倒れそうになったのだ。

「あ、これは危ないやつかもしれない」と思い、急いでアルバイト詰め所へ避難した。そこでリーダーに遭遇。こちらの様子を見たリーダーも異変を察知してくれたらしく、初バイトのこの日は残り1ヶ所を残して早退させてもらった。




バイトへは車で行っているのだが、初バイトの日は即帰るということができなかった。眩暈が酷く吐き気と頭痛も出てきたので運転ができない。そもそも座位を保っていることが辛くてたまらなかったため、暫く車のシートを倒して寝ることにした。

しかし、吐き気のせいで眠ることもできない。吐けば楽になるのか?とも思ったが、吐くと水分は失われるためどうにか堪えることに集中する。「水分が足りてない」と体が訴えている雰囲気を感じていたし、脱水になりたくないので吐きたくなかったのだ。

吐き気や頭痛と闘いながら暫く車内で横になっていると、どうにか眩暈が治まったので 今のうちだ!と急いで帰宅した。




帰宅後も吐き気が凄い。頭痛もする。そして体が猛烈に暑い。

とりあえず脇の下にアイスノンを挟んで、体の熱を取ろうと頑張ってみた。最初のアイスノンはあっという間にぬるくなってしまったので、予備達をとっかえひっかえしながら体を冷やすことに集中。暫く頑張っていると、だんだんと体の熱が下がってきたように感じ、汗臭さマックスだったので ほぼ水のシャワーを浴びてどうにか一息つけた。

この時は病院には行かなかったので自己診断となるが、恐らく熱中症とやらになっていたのではないかと思われる。

次のバイトに行くのが怖いなと思ったが、もうすでにシフトは入れてしまっている。ビビりながらも行かねばならない。ただ、何も対策せずに行くのは無謀すぎるなと思ったため、空調服を用意して2リットルほど入る水筒を調達し、ワークマンでひんやり素材で速乾性のある服を買い、今考えられる万全の状態で挑んでみた。


結果、熱中症になった。


倒れはしなかったし、割り当てられた担当場所全ての作業を終えることはできたが、帰ってからの体調が最悪の一言だった。また眩暈と吐き気と頭痛と体の熱に襲われる事態となりアイスノン大活躍だ。

試しに、首に貼る冷えピタも使ってみたがはっきり言って何の役にも立たなかった。熱中症になった体の熱に冷えピタは秒で完敗する。

万全だと思った装備だったが何がいけなかったのだろうか?と考えてみたが、どうにも分からない。装備は今のままとして、次のバイトでは行動を少し変えてみることにした。

それまでは1ヶ所の作業が終わってから水分補給をしていたのだが、よりこまめな水分補給を心がけて、ワンアクションごとに水分補給をするに変更したのだ。

例えば「10個の段ボールを荷台に載せ倉庫まで運ぶ」が一連の作業だとしたら、今までは一連の作業後に水分補給していたところを、10個の段ボールを荷台に乗せたらちょっと水分補給。倉庫まで運んで持ち場に戻ったらちょっと水分補給といった具合に変更してみたのだ。

結果、バテたが熱中症の症状は出なかった。

よし!この手でいこう!と決定してお盆休みへと突入する。バイトしている会社はお盆など関係なく動いているが、私はお盆に予定が入っていたのでお休みとさせてもらった。もともと月に数回しか入れないと申し出ており、それを了承してもらったうえでの採用だったので、その辺は融通がきいて有難い。




お盆が明けて最初の週末。バイトだ。お盆が明けると妙に暑い。怖いなと思いながらも出勤し、割り当てられた場所の作業にあたる。しかし、その日は割り当てられた場所が悪かった。

半端ないくらい暑い。蒸し暑い。まるでサウナの中にいるかのようだった。空調服はマックス風量で動かしているし、しっかり風もきているのに何故か他の場所よりも暑く感じた。こまめに水分補給もしていたが、何だかちょっとおかしいなと感じていたので、小休憩を挟みながら作業していたのだがいかんせん暑すぎる。体力の奪われ方が半端じゃない。8月のせいか?とも思ったが、どうにも妙だ。


あれこれ考えながら作業していて最後の1ヶ所にさしかかったとき、一瞬 意識が飛んだ。


ブラックアウト。フラッと後方に倒れそうになったのだが、背中が壁にぶつかって意識が戻ってきた。どうにか倒れずに踏ん張れたのは壁のお陰だ。

「これは本格的に危ないかもしれない」と危機感を覚えたためバイト詰め所に緊急避難した。避難途中で、相当ヤバイ顔をしていたのか社員に「大丈夫?」と声を掛けられて、「今日は大丈夫じゃないです。」と答えていた。

詰め所で休憩していたら、別のバイトが最後の1ヶ所をやってくれると連絡が入った。通常の状態ならすっ飛んで行って代わるのだが、この日はどうにも無理だった。バイトを総括する社員からも帰った方が良いと言われ、帰る前に作業を代わってくれたバイトにお礼と謝罪を伝え、みんなのご厚意に甘えて早退させてもらった。


社員からもらったOS-1。
昔飲んだ時は、ただの食塩水で「まず~」と思ったがこの日はポカリみたいな味がしておいしかった。




この日もさすがにすぐ運転して帰れる状態ではなく、車内をキンキンに冷やし横になっていると、知らない間に3時間ほど寝ていた。12時にあがったのに15時過ぎてから帰宅することになった。

帰りながらこの醜態の原因を考えてみた結果、思ったことは2つ。

1つは、前回のバイトからこの日のバイトまで2週間のブランクがあったこと。お盆休み中も動き回っていたとはいえ、バイト先ほど過酷な状況下ではなかったため暑さの耐性が落ちていたのかもしれないと思った。

そしてもう1つは担当場所。各作業場所は入り口の対面にもドアがあり、解放されているのである程度 空気の動きがある。日によっては風が通って涼しかったりもする。しかし、この日 割り当てられた場所は、風が一切通らない完全な閉鎖空間だったのだ。

入り口の対面は壁。窓も換気扇もない。大型の扇風機を部屋の奥から入り口に向けて回しているが、はっきり言ってあまり意味がないように思うくらいに蒸し暑かった。なので、空調服もこまめな水分補給も太刀打ちできなかったのだろう。何でここだけ対面にドアがないのだろう?不思議だ。

そして、この閉鎖空間をほぼ高確率で担当しているバイトがいるのが、その人は超人だと思った。凄すぎる。

こうしてお盆休み明けのバイトでは、各方面に迷惑をかける結果となってしまい申し訳なかった。以降は、さらなる水分補給を心がけたのと、暑さがやわらいできたこと、作業に慣れてきたことなどがあり、倒れることもなく熱中症になる事もなく作業できている。




そしてふと思った。副業(バイト)を始めて以降の週末は、気持ちは元気でも体がついていっていないためか、毎週末グロッキー状態になっているなと。

気の持ちようで体はどうにでもなるというが、それは体がある程度 元気な状態での話だったり、病気を患っているときの話なのかもしれないと思った。どんなに気持ちが元気でも体が疲れすぎていると動けなくなるものだとバイトに入るたびに学んでいる。


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