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丸太を積む (2)

建築に関してまったくの素人が、果たして一軒の家を建てることが出来るのか、建てたとしてそれは堅牢で安全なものなのだろうか。

その疑問を抱きながら本を読み漁っていたある日、ある本に(書名も著者も覚えていない)こんなことが書かれていた。

…アメリカ開拓時代、イギリスから渡ってきた人々は、斧一本で森に入り木を倒し、それを刻んで積み、屋根をかけ、ログハウスを建てた。春先に作業を始め次の冬までにやり遂げなければ家族全員が凍え死んでしまう。まさに一家の存亡に関わる大事業だった。しかし、渡米した人たちは全員が建築のプロだった訳ではない。仕立屋もいたしパン屋もいた。商人もいたし教師や医者もいただろう。それでも自分で木を伐り倒し刻んで積むことは、誰もがやらねばならない、必須のことだった。ラウンドノッチは素人が斧一本で丸太を堅牢に積み上げるための唯一の方法だ。今のようにスクライバーがないから歪んだり捻れたりしながら丸太小屋は建った。チェンソーもなかったからグルーブなど刻めず、ログとログの間は隙間だらけだった。金持ちは漆喰でその隙間を埋めたが、大方の人は子どもたちが集めてきた小石や土で隙間を埋めて風や雪の侵入に耐えた。開拓時代から数百年経ったいまでも、素人が建てた急拵えのログハウスが遺されている。…

私はこの一文に大いに勇気付けられた。スクライバー(それがどんなのか当時は見当もつかなかったが)とチェンソーがある現代なら、アメリカ開拓時代とは桁違いの精度の高いログハウスが建てられる、とも書いてあり、私は俄然、自分のような素人でも出来そうな気がしてきたのだ。

(つづく)

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