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遠距離② 冬が巡る度、きっと思い出す

出逢った頃は、確かもう秋服に袖を通していたと思う。丁度silentというドラマが始まったけど、最近動画配信サービスでまた放送され始めた。あのドラマは過言なく私の人生を変えてくれたバイブル。やっぱり特別な作品だった。


劇中でスピッツの曲が出てきて、私は恥ずかしながら当時1つも知らなかったけど、一瞬であ、この曲好きだな。と惹き込まれた。当時その曲のことを話すと彼は全て知っていて、「スピッツ、よく聴くよ」と言っていた。スピッツが好きっていいな。そんな単純な偏見だけで、『この人良い人なんだろうな』と思った。


おすすめしてもらった曲をプレイリストにしまって、一人で何回も聴いて覚えた。部屋で流して、車の中でもかけて二人で口ずさんだ。

車でどこかへ連れて行ってもらうとき、彼は色んな話をしてくれた。狭い車内でマサムネの声に乗せて、ああなりたいこんなことがしたいと夢を話したり自分に無い考えをお互いに交わしたりする時間は、私にとってまさに誰も触れない二人だけの国だった。

だから彼の助手席が好きだった。この人とならこのままどこへでも行けると思っていたし、この人の横でこれからどこまででも行きたいと思った。


うじうじするし男らしくない。優しすぎて刺激的じゃない。控えめすぎる彼に、いつから惹かれてたんだろう。


気づいたときにはこの人がそばにいてくれる限り、私は私で居られるし輝けるし何者にもなれるとさえ思えていた。


この人といるときの自分が好き。それは「どこを好きになったの?」という問いかけに対してこの上ない解だと思う。


今と変わらず、出逢った頃から穏やかで、好きな言葉をくれる人。喧嘩してもいつも思い出すのはあたたかい「日常」とやさしい笑顔ばかり。帰ってくる場所、眠りについて目覚める場所が同じがいいなといつも願った。


明日どこ行く?何する?お散歩いこう。アイスコーヒー飲みたいな。休みの日に会う度に、毎回同じ場所で同じことをしようと嬉しそうに提案してくる。もう飽きたよ、それ。でも結局そうしてしまう。村上くんと過ごす変わらない日常が好きだよ。

大好きなキャップを買ってあげても、すぐに目移りしてあれも欲しいこれも欲しい、買ってもいい?と聞いてくる。似たようなものもう持ってるでしょ。でも結局買ってあげたくなってしまう。村上くんが喜ぶ顔が好きだよ。


彼の大きな愛と優しさに触れるたび、生きていることと意味を実感する。得たことのない愛情と歓びを目の前に、堪えようとするけどどうしても耐えられずいつも溢れてしまう。



この先の私の人生に必要な人だから、一緒になる。それだけで、理由は充分だった。愛してくれてありがとう。愛させてくれてありがとう。


冬が巡ってくる度に私は、スピッツをそっとイヤホンから流し出逢って初めて過ごしたの冬の日々を思い出すんだろう。

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