【#ガーデン・ドール】壊れることは決してない。
【注意】
交流創作企画 #ガーデン・ドール において
最重要ストーリーとなるミッションの内容を含みますので、自己判断でお読みください。
また、流血や暴力的な表現を含みますので、お気を付けください。
こちら
の続きになりますので、先に見てからお読みください。
あれからどのくらい経ったのだろう。
頭上には未だに丸い月が浮かび、星と共に煌々と輝き照らしている。
悠久にも感じるその瞬間は、実際には数分も経っていないのだろうか。
静かに、ククツミを見つめる俺の傍にひとつの影が増える。
「最終ミッションクリアおめでとうございます。」
無機質な機械の通達は俺に向けて。
泣きもせず、笑みも浮かべず、ただ無表情でしかない俺はその音に顔を向ける。
「ここまで辿り着いたキミにガーデンから選択肢を与えます。」
そう言って機械は選択を提示する。
一つ、ガーデンからの卒業。
二つ、人格コアを奪った相手の人格を復元。
三つ、それ以外に望むことがあれば叶えることができる。
四つ、何も選ばない。
続いて膨大な量の情報が通知で送られてくるが、それには目もくれない。
俺の選択は既に決まっている。
「……もしも、叶うなら」
ぽつり。
「ククツミを」
約束は既に果たした。
これから先は、その続きだ。
「2/24までのククツミの人格を復元してほしい」
俺は願う。
俺自身の我儘を。
叶うかどうかなんて分からない。無駄だと笑われるかもしれない。
それでも、もう一度。
神話の原点に触れるように、このドールの原点に触れてみてもいいだろう?
「これくらい、叶えてみろ」
この呪縛から逃れられないのだとしたら、半分は俺が背負うから。
どうせなら、もう一度生きたっていいだろう?
「いい趣味してるネ、親愛なるドール。その趣味に免じて叶えてあげるヨ」
そう端末は告げる。
途端、視覚が狂い痛む左目。
先ほどまで端末を見ていたはずの視界は半分闇に包まれて何も見えない。
物理的に切りつけられた訳でもない、攻撃魔法が飛んできた訳でもない。
なのに、火が付いたように目が、焼けるように熱い。
全身の血が沸騰しそうな熱さにも思えるその痛み。
目を開けていられない程のそれに、生理的な涙がとめどなく溢れる。
「ッッ!!!!」
思わず左手で目を押さえて爪を立てる。
持っていた約束は手から滑り、地面に鈍い音を立てて落ちる。
痛い。痛い。痛い。痛い。
熱い。熱い。熱い。熱い。
これはなんだ。これはなんだ。
何が、何が起こった。何が、起こった。
分かってるはずだ。犠牲が零な訳ないじゃないか。
最初から決めていただろう。どんなことがあっても、止まらない。
痛い。痛い。痛い。痛い。
熱い。熱い。熱い。熱い。
死にそうな、くらい。
あまりの痛さに、声が出ない。
喉から出てくるのは獣のような唸り声。
「ヴ、ぐ……!!!!ア゛ァ゛!!!!!!!!!!」
咆哮にも聞こえるその音は、反響して葉を揺らす。
額には脂汗が浮き、果てには立っていられなくなり膝を突く。
落とした約束に縋りつくように手を持って行くが、思うように掴めない。
左目から意識を逸らす様に枯れ葉ごとそれを握りこむ。
まだ、終わっちゃいない。
アイツは、これ以上の痛みを味わったはずだ。
これくらい耐えられなくて、何が希望だ。
何が、約束だ。
この残された右目だけでも、未来を目にするまでは。
絶対に死わらない。
「キミの半分はいただきました。キミの願いは叶いました。」
そう機械的に告げて、ククツミの身体と共に消える。
残されたのは、地面に付いた血の痕と一人のドール。
ぱきり、ぱきり。
枯れ木を踏むような音は、左目から聞こえるのか。
ぴしり、ぴしり。
ひび割れるような音は、心から聞こえるのか。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺は、叫ぶ。
それは未来に希望を託すため。
俺は、嘆く。
それは過去に憎しみを残すため。
俺は、悔む。
それは現在に恋心を残すため。
それは、一人の咆哮。
それは、一人の感情。
それは、一人の人格。
肺が空になるほど息を吐き、音にしてそれは静まる。
ククツミ。
その言葉は声にも音にもならず、俺の中で解けてゆく。
そして、俺は意識を手放した。
【主催/企画運営】
トロメニカ・ブルブロさん
SpecialThanks ククツミ
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