フットボールと言葉の魔法
お久しぶりです。ゴリコンです。
なんとなくブランクが空いてしまって、書き出すタイミングを失ってました。
今日は自分のサッカーの思い出話です。
ものすごくその人のその時の言葉に影響を受けて、スポーツをやって来たんで、お暇な人はちょっと付き合ってください。
では、始まり始まり。
1. 昭和の終わりの田舎のフットボール
キャプテン翼世代ではあるものの、まだまだ周りは野球ばかり。
小学生の頃は、サッカー指導者どころか、ちゃんとしたサッカー経験者すら町に数えるほどしかいない環境でした。
なので、ただひたすらに校庭で友達とボールを蹴り合うのが、何よりも正しいフットボールライフ。
ワーワーと玉を蹴りあっている毎日でした。
ただそうは言っても、一応、顧問というのはいるもので、たまには役に立つこともありました。(そこは今でもあまり変わらないかな?)
ある日、先生が、突然、有益な情報を持ってきたのです。
なんとあの読売サッカー教室が我が町にやって来ると言うのです!
木村和司のフリーキックに憧れていた自分は、日産派だったのですが、当然、参加を表明。ワクワクしながら、当日、仲間たちと会場に向かいました。
2. 苦い失敗とひどいヤジの中で
当日のメニューは、市内で集まったたくさんの小学生が少しでも楽しめるように、インサイドキック等のパス練習をしてから、各学校毎にチームを組み、選手と体育館でミニゲームという流れでした。もちろんゴールを決められたら負け。次のチームと交代です。
長い髪をなびかせたラモスが華麗なリフティングからパスを出し、子供たちを沸かせます。戸塚がものすごいスピードのシュートを打って見せます。みんな大喜びです。
ミニゲームは順調に進み、いよいよ自分たちの出番です。
人一倍でかかった自分はスイーパーでの出場。ドキドキも最高潮です。
そこで事件は起こりました。
キックオフと同時にラモスは動かず、ボールを足の裏で押さえつけました。
「取れるものなら取ってみろ!」
ラモスは手招きして挑発します。一斉に飛びかかる仲間たち。
いくら蹴っても、ラモスの足元のボールはピクリとも動きません。
いてもたっても居られなくなり、自分は飛び出してボールに向かいました。「任せろ!」と言った気がします。
ボールに足を出した瞬間。
今でも頭に映像が浮かびます。
自分の足が出るのを計っていたように、きれいな軌跡でボールが体育館を走ります。
スルーパス。
もちろん、そんな言葉は知りませんでした。
とにかく、あっさり失点しました。
ものの5分もたっていません。
「バックが簡単に飛び出すんジャナイヨ!!」
ラモスに叫ばれ、見ていた子供たちは大笑いです。
下手くそ!
デブ!
相撲取り!
とか、ひどいヤジも飛んでいて、ものすごく恥ずかしかったのを覚えています。
お陰で仲間からも責められ、他のチームの試合を見ながら、情けない残り時間を過ごすことになりました。
3. 俺のサインでいいのか?
その後、ミニゲームは粛々と進み、読売クラブの選手たちの華麗なテクニックを見たという記憶もほとんどなく、イベントは終了。
苦痛だった時間もやっと終わりを迎えました。
最後にスタッフからプーマの手帳がもらえ、ホッとしたのも覚えています。
イベントも終わり、最後の最後、司会者の人が大声で言いました。
「はい! じゃあ出発の時間が許すまで、選手にサインがもらえるよ!さあ並んで!!」
もちろん子供たちはダッシュで選手に向かいます。
自分は落ち込んでいたので、完全に出遅れました。
パッと顔をあげたときに、ラモスと戸塚の回りにはたくさんの子供たちが既に集まってきていて、絶対に間に合わない状況でした。
やはりFWの選手は華やかで格好よかった。
人気がありました。
正直、自分もラモスのサインが欲しかった。
でも、もうもらえそうにない。
試合でボールにさわることも出来ず、散々、野次られ、馬鹿にされ、何ももらえないなんて。
もう涙が出そうでした。
でも、首を振ると、右目の端に痩せた一人の選手が映りました。
まだ二人しか並んでいない。ここしかない。
自分はありったけの力を振り絞って、ダッシュしました。
お陰で何とか一人目のサインが終わったところに間に合いました。
「俺のサインでいいのか?」
「ラモスならあっちだぞ?」
低く艶のある声でその選手に言われ、何と答えたら良いかちょっと迷いました。さっき自分がラモスの方を一瞬見ていたのがバレたのかと思い、ドキドキしました。
「俺、バックだから。」
なんとか、弱々しくかすれた声で答えると、その選手は、ニヤっと笑って、手帳を受け取ってくれました。
ちゃんと自分がDFが上手い選手だとわかって来たんだなと思ってくれたんだと思い、自分は安心しました。
「どうしたらサッカー上手くなれますか?」
少しだけ気持ちが戻ってきたので、わずかに残っている勇気を絞り出して聞きました。
サラサラとサインを書き、顔をあげると自分の方を見て、その選手は言いました。
「顔を上げて、よく見るんだ。
さっき俺のとこに来たときみたいにな。」
手帳を私に渡すと、その選手はスッと立ちあがり、頭をポンと叩いてから去って行きました。
そこでちょうど司会者から「時間切れ」の声が。
結局、私の友達は誰もサインがもらえませんでした。みんな人だかりの山に突撃したからです。
サインをもらった私は得意になり、自信を回復しました。 一瞬嫌いになりかけたサッカーも、より大好きになりました。
何よりあのとき掛けてもらった言葉は魔法の言葉のように聞こえました。
よく見て正しい判断をして行動すると、人とは違う成果が出せる。
これは今でも自分の中の行動指針のようになっています。
本当に価値のある言葉に出会えて感謝しています。
サッカー教室に行ってよかった。心からそう思いました。結局、サッカー自体は、残念ながらあまりうまくはならず他の競技に転向したけど、あのときの言葉は自分にとって大切な言葉であり続けています。
あのとき、あの言葉をかけてくれた小見幸隆さん、本当にありがとうございました。
今でも自分は、サッカーもヴェルディも大好きです。
ファン、サッカー選手、監督、解説者、協会、コミュニケーションが問題になることが多い、昨今、なんとなく書きたくなって書きました。
最後まで読んでくれた方々、長いお話付き合ってくれてありがとうございました。
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