ココナッツミルクとバレエシューズ

「チューしとく?」

ぶん殴ってやった。

だいすきなのに、つい手が出てしまう。

わたしの悪い癖だ。

「いってぇぇ」

「おとといきやがれってんだ」

「呼んだのはミナミの方だろ?」

脳味噌にこびりつくチーズッタッカルビ、否、おこげ、否、記憶。

小指を絡ませて永遠を誓う少年少女。

ヤマトは幼馴染。

野蛮なギャル男だ。

「今日は悲しいことがあったの」

「なんだい、言ってみな」

腕を組んで偉そうなヤマトにケビンマスクのビッグベン・エッジをお見舞いし、

わたしはしゃべり始める。

「すきなコンビが、解散したの」

「それはてーへんだ」

ヤマトはわたしの発言(戯言あるいはお笑いメンヘラあるいは人生迷走)に慣れている。

言葉遊びの漫才みたいなコント、飴ばら撒き、合わせツッコミ、野球、化け物女とホームレス、サンキュー諸々。

舞台上に転がったキラキラの死骸をわたしは強く抱きしめて泣いた。

「ぜんぶ元通りになればいいのに」

「それは無理難題さ」

「眠って起きたら再結成」

「叶わぬ夢よ」

ヤマトは温めたココナッツミルクを差し出した。

わたしはバレエシューズを履いて部屋中をくるくる回った。

慌ただしいタイトル回収は失敗に終わり、

解散は解散のままに終わった。


人生は、それでもおもろいと、思いたい。

ハマショーの『MONEY』がすきです。