地球最後の日~のどごし生卵・梅茶漬け編~
深夜にズームで開催された“合コン打ち合わせ”(俺、ジャコドラムの笹、南京デリシャスの半ばリーチという6年目の同期3人)は大いなる盛り上がりをみせた。
ライブのコーナー案を出す時よりも脳の滑りがよく、明日地球が終わることはインチキ占い師の戯言に過ぎない気がした。
1年前、元号発表と同じ段取りで知らされた「地球最後の日」。それが明日。
俺は合コンで勝負をして、散る。
否、願わくは理想の死に方第1位の腹上死で終わりを迎えたい。
「何着てこかな」
「茶漬け、あれ着いや。1年目の時迷走して買った20万する亀甲縛りスーツ」
「あったな。キモすぎるやつ」
「あれあげてん」
「え? マジで」
「需要あるん」
「知り合いに駆け出しのAV監督おってさ。8万で売ったわ」
「8万という数字に複数回のやり取りが見えるな」
「ほんでAV監督に駆け出しの頃とかあるんや」
「誰にでもあるやろそれは」
「笹の場合、もはや服の問題ではないな」
「おい、手ぇ出んで」
「やってお前、頬こけてぜんじろうに似てきてるやん」
「悲壮感たっぷりや」
「いやあないにアホな思想家とちゃうねん」
「あいつに思想もくそもないやろ。何のツボもおさえられてへんて」
「テレビのツボ懐かしいな、おい」
「それなあ」
「突然ギャルなんな」
「ちゃうわ、タブレット純じゃ」
「は?」
「は?」
「は? いっちゃん可愛いねんぞ、タブレット純」
「大喜利でしか聞かん名前出すな」
この1年で街は狂人が増え、怒涛のようにエピソードが集まる毎日だ。
しかし話も金もあの世には持っていけない。
俺たちは終わる。何もかも、なくなる。
「なあ、そういや明日何時に地球終わるん?」
「23時59分とかちゃうの、相場は」
「分からんで、自然のことやし」
「まだ陰謀論もあるけどな」
「陰謀にしては誰も得せんすぎやけどな」
「え、まさか合コン前とかちゃうやろな」
「嘘やん。そこは耐えてくれんと」
「19時からやったよな。14時とかに早めた方がええんちゃう? 持ち帰れんくなんで」
「14時は頭おかしいやろ」
「起きる時間やん。勘弁やわ」
「いや、明日死ぬんやから寝んなよ」
「いや、寝るやろ」
「抗わな過ぎやろ」
「リーチはそういうとこあるからなあ」
「ええやんけ、寝させろや」
「「寝んのはほんまになし」」
「ほんまか」
「「ほんまや」」
俺は、明日が来ても来なくてもどちらでもいい気がした。
それは諦めなどではなく、このくだらなさのまま死ねるのなら本望だと思った。
「いやでも嫌やな、最後までお前らとおんの。やっぱ女の子がええわ」
「脳内で会話進めんな」
「ADHDやねん俺は、諦めろ」
「俺かてそうやわ」
「僕もやで」
「「そうなん?」」
「……死に方大喜利しよか」
「もう大喜利の枠超えてるけどな」
「明日体現すんのもありやろ、『こんな死に方は嫌だ』。あ、この場合『こんな死に方は最高だ』がええか」
「俺は腹上死って決めとうから」
「茶漬け、それ七夕でも書こうとして怒られてたやん」
「劇場に飾るやつに書くなよな」
「まあ、じきに答えは分かるさ」
「「だまれ」」
夜は更けぬ。
更けてはならぬ、いつまでも。
ハマショーの『MONEY』がすきです。