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ビターカレー

著:来楽零
リクエスト:五條スクナのご飯作り

「またピーマン入ってるじゃねえか!」
 食卓をひと目見るなり、スクナは不満全開の声をあげた。磐舟は肩をすくめる。
「そりゃ入ってるだろ。焼きそばには、豚肉、キャベツ、にんじん、たまねぎ、もやし、そしてピーマンって相場が決まってんだ」
「焼きそばなんて青のりでもかけりゃそれでいいだろ!」
「それじゃ、カップ焼きそばと変わんねえじゃねえか」
 磐舟は呆れた顔で首を横に振った。
 そう言われても、スクナは焼きそばなど磐舟が作るもの以外は家出中に一人で食べたインスタントしか食べたことがない。磐舟が作る焼きそばがスタンダードなものなのかも判断ができなかった。
「別にいいじゃん、カップ焼きそばみたいなので」
「ダーメだ! それじゃあ野菜もタンパク質も取れないだろ。焼きそばはちゃんと具を入れて作れば、一品で必要な栄養が全部取れる優れもんなんだぞ?」
「野菜をたくさん入れて作るとべちゃべちゃになっちゃう、っていうのはありがちな失敗だけれど、イワさんが作る焼きそばはそんなことないものね。美味しくてバランスも取れてる、なかなか美しい一品だと思うわよ」
 紫が綺麗な所作でスルスルと焼きそばを食べながら言った。
 拘束衣姿の比水は手の代わりに車椅子に内蔵されているアームを駆使し、フォークでスバゲッティのように巻いた焼きそばを口に入れ、咀嚼している。
「肯定です。美味です」
 スクナはムッと頬をふくらませた。
「別に、肉や他の野菜はいーよ! ピーマンを入れるなって言ってんの!」
「好き嫌いをしてると大きくなれねえぞ」
「ピーマンじゃなきゃ取れない栄養素ってなんだよ? 人の嫌いなもん入れて作るのはただの嫌がらせだね!」
「この……イワさんの親心を……」
「なぁーにが親心だよ。ったく、よける作業も面倒なんだからな。……ほら、コトサカ、お前鳥なら野菜食うもんだろ。このピーマン食っとけ」
「イラナイ! イラナイ!」
 コトサカはプイと顔を背け、肉をついばんだ。スクナはため息をつき、仕方なく自分の皿の端にピーマンを弾いていく。
 磐舟は、握った拳をプルプルと震わせた。
「もーいい! 人の作った飯に文句をつけるようなやつは食べなくて結構! お前のぶんはもう作ってやらんからな!」

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K Fan ClanおよびK Fan Clan Nextの小説等コンテンツを再掲したものです。

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