1,真面目なヘルパーさんが、陥る甘いワナ

これは真面目なヘルパーさんに非常に多いと思われることで、1つ。
それは、ヘルパーの善意が、ヘルパーさん自身の首を締め付けるということ。
この善意というもの、とっても厄介なものなのですよ。
やったらやった分、例えばこれこれをすれば100%のレスポンスが返って来るみたいなもの。
一見、真っ当に見えるじゃないですか。
これやったら、その分感謝されるという図式ですよね、つまりは。

でも、この100%イーブンな関係というのが、
介護をする上では、お道真っ暗な事態に、
自らを追い込んでいく事になるケースがあるんですよね。

まず言っておきたいのは、利用者さんへの善意は、
こちらがどれだけ真心を籠めようが絶対に100%は返って来ない。
むしろ、マイナス500%は覚悟して挑まなければならないということ。
ただ、場合によっては、100%以上の感謝の"気持ち"を返してくれる事がある。
しかし、これはヘルパーを歴任する中でも、滅多にない事である。
という事です。

基本的にヘルパーとは、このようなアップダウンの激しい感情の応酬で
成り立っているお仕事なのですよ。

この事をよくよく理解してない生真面目なヘルパーさんは、
これだけやっているのに、どうして解ってくれないんだ!!
と恨み辛みを拗らせていきます。
それはそうでしょう。
生真面目なヘルパーさんにとって、"これだけ籠めている"という
事実だけが真実であるのです。これは、真っ当な感情です。
これだけやってあげて、それでも感謝しないヤツはムカつく、それだからです。

でも介護業界には、生活のために止むを得ず、
つまり、嫌でも介護を受けざるを得ない利用者さんがとても多いのです。
そんな中で突然ヘルパーがキラキラとこんちわ〜と挨拶しに来ても、
利用者さんにとっては、つべこべ言わず早よせーや! という事になるのです。
ヘルパーという存在は基本的に、ウザがられる。
これはある意味、ヘルパーを表した真理と言えると思います。

しかし、中には感謝をしてくれる利用者さんもいますよ。
でも、そんな利用者さんと出会うのはとてもレアなケースなのです。

ヘルパーにとって、利用者さんとの出逢いは、のちの活動の死活問題に繋がります。ウマが合う利用者さんとの出逢いとは、100%”運”です。
出逢う人は、なんて事もなく出逢うもんだし、
運の巡ってこないヘルパーさんは、いつまでも巡って来ないもんなのです。

いつまでも運が巡って来ない人にとっては、まさに介護業界は地獄です。

そんな自分の頑張りが認められないというフラストレーションの中で、
仕事をモクモクとこなす事をしていては、いつか心身に異常が出ない訳がない。そしてその挙句が、利用者さんを階段から、、という最悪のシナリオなのです。特に、介護施設とかでは、たまにニュースになっていますね。
もちろん、このような事がすべてであるとは、言えませんが。。

どうですか? 恐ろしいでしょう。。
これが、善意の持つ負のパワーなのです。

しかし、介護業界にいて、よーく考えされられるのは、
上の方にも書いた、時たま発する利用者さんの”気持ち”なのです。
というのはこれ、本当に些細な時にしか頂けない、貴重なものなのですよ。

それは、不意の笑顔かも知れないし、感謝の言葉かも知れない。
それかいつもとは少し勝手が違い、なんだか元気になったかな?
といった瞬間や、ほんのささやかな利用者さんの安堵の表情に
ハッとする事もそう。

このほとんどすべては、瞬間的にやって来ては、
瞬時に過ぎ去ってしまうものばかり。

その刹那的な利用者さんの変化に、
こちらがどれだけのものをキャッチ出来るのか、ようはこれですよね。
それは、生真面目にやってあげている時には決して見えては来ないものなのです。

こっちがどれだけやってあげてるんだ、
なんでこの意図が汲めないんだろう、、等々
ヘルパーとして精一杯の誠意を見せるのは、至極真っ当な気持ちです。
それは、人としての儀礼でもあります。一種のプライドみたいなもんですね。

でもね、こちらがどれだけの誠意を籠めようとも、
それがいつでも善意で返してくれるとは限らないものです。

それは、普通の関係の中でも同じですよね。
それがただヘルパーだからといって、ミラクルパワーになれる訳ではないのです。たとえヘルパーの右胸に介護の肩書きが付こうとも、利用者さんが求めるのは、きちんとした一対一の人間関係だったりもします。

ヘルパーだから、特別な人間、これはヘルパーの持つ自惚れなのですよ。
だからこちらが誠意を籠めれば、籠め続けるほどに、
人間関係としては、泥沼にはまって行くばかりです。
これは恋人関係でもそうですよね。
相手を想う、または籠めるという誠意には、底がありません。
そう、底無し沼な訳です。
はまったら最後、なかなか抜け出せませんよね。

そうではなくてね、そんな事をあれこれ思案しつつ、
そして、なにクソ!と思いつつも、
ある一瞬に、ふっとチカラが抜けて、「・・・だよね」と溜息が漏れる瞬間、
利用者さんも同時に何かに呼応してくれている、感じがする、
そんなひと時が、ヘルパーにとっては最高にハッピーな瞬間だったりするのです。その”瞬間”を感じれると、”うん、また頑張ろ”というモチベーションになるのです。

またそんな風に、感じられる人でないと、ヘルパーは難しいかも知れませんね。特に福祉業界では、ただ辛いかも知れない。


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