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2024/1/7ビフォアシリーズについて語りたい 1

ビバ!!『ビフォア・サンライズ』リバイバル上映!とテンション上がりまくりの私だが、周りは至って冷静。どういうことかしら?もしかしたら『ビフォア・サンライズ』を単なる恋愛映画で終わらせていませんかね。ワタクシ、そんな輩を正座させて持論を述べたい気持ちでいっぱいだ。だからオレの話を聞け!

ビフォアシリーズは全3作。
『ビフォア・サンライズ』(1995)
『ビフォア・サンセット』(2004)
『ビフォア・ミッドナイト』(2013)

このシリーズの魅力は時系列で物語が進んでいることだ。役者も監督も変わらず同じ。脚本に役者が関わっていることも見逃せない。リアルタイムで鑑賞すると、ある男女の人生を追いかけつつも、自身と重ねて心情の変化を楽しめる映画なのだ。もはや恋愛がテーマではなく、人生だと思っている。

『ビフォア・サンライズ』は邦題が『恋人までの距離(ディスタンス)』。唯川恵の小説のタイトルっぽくてダサい。邦題やめろ!

私はリアルタイムでみておらず、『ビフォア・サンセット』の上映前にビデオを借りて鑑賞した。ガッツリ恋愛映画なのだが、瑞々しいジュリー・デルピーとさわやかイーサン・ホーク、列車での出会い、ウィーンの街並み、次第に惹かれていく様子、全てが絶妙でハマってしまった。そして半年後に会う約束をして「終」。連絡先の交換はしておらず、スマホも無い。冷静にみるとツッコミどころもあるが、そんなことさえどうでもよくなるぐらい、2人の再会を祈って終わる映画なのだ。

この『ビフォア・サンライズ』単体でみると、他よりはまぁ素敵な恋愛映画といった感想で終わるが、9年後の続編『ビフォア・サンセット』をみることで、他の恋愛映画とは違うことに気づく。

9年後、2人は30代半ば。半年後に会うことは叶わなかった2人だが、再会のきっかけがにくいのなんのって。っていうか、ありえないわーって感じだけどすんなり受け入れられる自然な脚本になっている。イーサン・ホークが作家になり、2人のウィーンでの一夜を小説に書く。小説のプロモーションでパリに来ていたイーサン・ホーク。その小説を読んだジュリー・デルピーと本屋で再会する。

オーバーなリアクションなどせず、自然な雰囲気で9年前の会話の続きが始まる。既婚のイーサン・ホークと未婚のジュリー・デルピー。年を重ねた2人は、色気と哀愁を漂わせており、9年の年月をちゃんと生きている。つまりちゃんと年をとっているのだ。私はこの年齢の重ね具合が好きだ。

小説に思い出を書いてしまうところに、既婚であるイーサン・ホークの余裕というか、ずるさを感じてムカつく男だなぁと思いつつも、2人の会話は止まらない。会話劇すぎて字幕に追いつかないぐらい。

黒のノースリーブにデニムといったシンプルでカジュアルなスタイルのジュリー・デルピー。なんて油断していたら、背中がパックリ開いていてドキッとした。さすがパリジェンヌ。イーサン・ホークの額のしわもセクシー。

そしてラスト、ジュリー・デルピーの部屋で過ごす2人。ギターを弾きながらワルツを歌うジュリー・デルピーを、ずっと前からそこにいるような雰囲気で見つめるイーサン・ホーク。そしてニーナ・シモンのモノマネをしながら「飛行機に遅れるわよ」と言うジュリー・デルピー。乗ったの?乗らないの?もう胸がキュンキュンして「終」。このシーンの2人は最高。幸せな気持ちになる。私はこの『ビフォア・サンセット』が1番好きだ。

さらに9年後『ビフォア・ミッドナイト』。予告からヒントが出てしまっているのだが、2人は結婚して双子の娘を授かっている。

実を言うと『ビフォア・ミッドナイト』は少し苦手。なぜなら、現実を突きつけられるからだ。前2作は恋愛中であることに対して、今作は結婚、つまり家族になっている。関係性が大きく変わっているのだ。また出会いから18年も経っているので老いていく様もリアル。ジュリー・デルピーの体の線がそれを物語っている。

相変わらずの会話劇。だがそこには恋愛中の駆け引きのようなものはない。子どものことが入ってくるとなおさらだ。

書いていて気づいたが、私はこの映画にリアルを求めていないのだろう。だから『ビフォア・ミッドナイト』で残念な気持ちになってしまう。結婚した私自身もすでに『ビフォア・ミッドナイト』側なのだが....。いいかげん現実と向き合え。と自分に言いたい。

まぁこんな長いひとりごとを延々と書いてしまったが、ぜひ多くの人に映画館で『ビフォア・サンライズ』をみてほしい。一気に3作みるのもいいが、できれば時間を置いてみることをすすめたい。そして自身の心情の変化にも気づいてほしい。案外人間って大人になっても少しずつ成長しているものなのだよ。

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