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Deep Currents

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ポッドキャストのDeep Currentsのお供に。 エッセイや批評という形の思考。 https://linktr.ee/taka88
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#イギリス

ブライトン人物録1 酒と哲学

私の昔からの友人JとNというイギリス人男性(白人)が住んでいるフラットに引っ越した。 ある晩、Nはキッチンで料理している自分を発見し、話しかけてきた。初めてのまともな会話である。Nは哲学を読むのが好きなようで、二人で「哲学をする」とはどういうことか?等と議論して盛り上がった。 ひとしきり会話した後、Nはかなり酔っ払ったようだったので、自分は部屋に戻った。Nも自分の部屋に帰って寝た様子だった。ところが10分くらい経ってから、ノックの音がする。開けてみると、腕と胸が血だらけで

レイシストとぶつかった日

イギリスのブライトンは、比較的リベラルな街だとは思うが、Brexitが決まった後は、今までに体験したことがない路上でのレイシズムを体験することが多くなった。その体験の中の一つを書こうと思う。 ある日の夕方、家の近くの住宅地を歩いていたら、白人の中年男性が、すれ違いざまに、'Go Back to China.'と言葉を投げつけてきた。私はすぐには反応できなかった。今のって俺相手の言葉なのか?と考えてしまったのである。外見的には似ているので、一緒くたにされる可能性があることは分

悲観的なだけでは誰の助けにもならない。イギリスの選挙

イギリスの選挙は残念ながら保守党の勝利に終わり、暗い時代が約束されてしまったかのようだが、そんな中、投票する権利のない自分が体験したイギリスの政治の一端をシェアしておきたい。 一ヶ月ほど前、イギリスの入国管理局からオーバーステイをしているという嫌疑をかけられた。入国管理局の手違いであることは明らかだったが、何はともあれ、その嫌疑を払わなければならない。 ある弁護士から、住んでいるエリアの議員に入国管理局宛てに手紙を書いてもらうように頼むといいというアドバイスを受けた私は、半信

マンチェスターの勇気

友人を訪ねてマンチェスターに行った帰り、駅で、「やった、やった!」という日本語が聞こえた。 何が起きているか観てみると、二人の日本人男性がイギリス初?の買い物に成功したことに興奮しているようだった。二人は、その後、記念撮影もしていた。 そのような興奮は自分はもう味わうことはないだろうけど、本当は、あちこちで、人に知られない小さな勇気が発揮されて世界が成立している。。。そんなことを思いながら、マンチェスターを離れた。