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コラム:新NISAで失敗する人、しない人

私の母は、若い頃、知人に勧められて郵便局の個人年金保険に加入しました。今にしてみれば、かなり高利回り(しかも複利)の終身年金です。受給し始めて数年経ちますが、お金の話になると、母は決まって「あの頃、お金のやり繰りが大変だったけど、やってて良かった」と口にします。

しかし、これからの時代、上記のようなエピソードは全く参考になりません。

確かに、知人に勧められて素直に加入した母の選択は正しいものでした。しかし、郵便局の個人年金は、円建ての確定利回り商品であり、為替リスクはありません。信用リスクもほぼ無いに等しいですから、初めから成功が約束されていたと言えるでしょう。

私は、過去25年にわたり、金融業界で投資商品や保険商品を対面で販売してきた経験から、全く知識のない方に比べれば、経済、金融についての知識は持っている方だと思います。実際に、たくさんの顧客の相談も受けました。

その私から見て、新NISAは、うまく使い切れれば、将来の資産形成に有効だと考えています。

基本的な仕組みについては、書籍も出ていますし、YouTubeなどで解説動画がたくさんアップされていますので、それらを参考にすると良いでしょう。

若い人のうち、ある程度の経済的余裕があって、この仕組みをきちんと理解して、オーソドックスな手法で運用すれば、一定の成果を出せると思います。一方で、情報の渦に呑まれて、失敗する人も一定数いるはずです。

今回は、せっかく新NISAを利用しても、タイプ別に、失敗しそうな人と、上手に活用できそうな人についても私の考えを述べます。

私は投資の専門家ではありませんし、掲載評論家・アナリストでもありません。しかし、多くの顧客と面談する中で、人には「向き」、「不向き」があることも知っています。人の性格という切り口で新NISAを語る記事は稀かもしれません。興味があれば、お読みください。

<新NISA で失敗しそうな人>
1.相場の変動に一喜一憂してしまう人

当たり前ですが、相場は値動きは必ずあります。少々の値上りに舞い上がって、慌てて利益確定売りをしたり、相場の下落にいちいち気持ちが落ち込んで、損切りをしたりを繰り返すと、間違いなく失敗します。

2.他人の意見に左右される人
新NISAの利用方法は、オーソドックスな方法を愚直に続けるに限ります。しかし、他人の意見に左右され、ファンドをコロコロ変えたり、人マネをすると、失敗する可能性はどんどん高まります。根拠のない陰謀論を信じ込んでしまう人もこれに当て嵌まります。

3.金融機関のカモにされる人
私は銀行にいたので、銀行員のズル賢さを知り抜いていますが、今でも、銀行に対して一定の信頼を寄せる人がいます。しかし、今も昔も、銀行や証券会社は、顧客の利益よりも自己(自社)の利益を優先します。言葉巧みに、信託報酬の高いアクティブファンドを勧めてくるでしょう。これに騙される人は一定数いると思われます。

4.自分のパフォーマンスを誇示したがる人
投資は自分のために行うものであって、他人と比べるものではありません。しかし、自己顕示欲の強い人は、SNSなどで、自身のパフォーマンスをひけらかすことでしょう。いつの間にか、誰のための投資かわからなくなり、ネタ作りのために、売り買いをすることもあるでしょう。

5.そもそも新NISAの仕組みを理解していない人
新NISAの仕組みそのものを理解できない人、理解しようとしない人が一定数いると思います。上記2とも関連しますが、「知人が良いというからやってみた」というレベルの人です。


上記の2、3、5の人は、結果が期待を下回った時、それを他人のせいにしがちです。

<新NISAで一定の成果を得られそうな人>
新NISAに限らず、いつ投資するか、どのファンドを選ぶか、いつ現金化するか等、全ては自己責任です。各種リスクについて、あらかじめ理解しておく必要があります。

それを踏まえて、新NISAをうまく使いこなせる人は、どんな人かを以下の通り予想します。

1.ある程度の勉強する人
まず、株式、債券に関する基本知識、各種リスク(価格変動リスク、為替リスク、信用リスク)についての知識や、経済・政治などの国際情勢に対して興味を持っている人は、向いていると思います。

2.長期的戦略を立て、実行できる人
投資の基本として、リスクヘッジの仕方がキモになると思います。長期的な視野に立って、「分散投資」や「時間分散」をする必要がありますので、株式・債券の投資比率や、ドルコスト平均法の利用などの仕組みを理解でき、それを基に、あらかじめ投資戦略を立てられる方は、新NISAに向いていると思います。

3.的確な情報を得ることができる人
世の中は情報があふれています。中には出まかせも多く含まれますが、良識のある人の意見を集約すると、「セオリー」があることがわかるはずです。良質は情報を発信する人は、必ず「根拠」を提示します。どのようなデータを提示するのか見極めたいところです。

4.他人の意見に惑わされない人
勉強していない人は、人の意見に左右されます。「あの人は経済に詳しいから」といったノリで、安易に他人の意見を聞いて実行してしまう人は、投資に向きません。投資の結果は自己責任なので、自分の考えを行動に反映すべきです。1~3ができる人は、他人の意見の間違いや勘違いに気付くことができるはずです。

5.十分な「余裕」がある人
投資資金は、余裕資金で行うべきです。数年後に支出が決まっている資金は絶対に投資に回すべきではありません。毎月の収入のうち、生活費や将来の必要資金を差し引いた余裕資金の中で行うべきだと考えています。

また、ここで言う「余裕」とは、金銭的な余裕に限りません。「時間的余裕」も必要です。例えば、今30歳の人が新NISAを始め、15年後にリーマンショック並みのリセッションが発生しても、残り15年あれば、どこかのタイミングで復調が期待できます。

もう一つの余裕は「精神的な余裕」です。失敗しそうな人の1で記述したように、短絡的な行動を起こす人に、新NISAは向きません。精神的な余裕のない人は、大きなキャピタルゲイン狙う傾向にありますが、投資の目的を、「長期的なインフレリスクに対応する」ととらえる人は、それに見合ったパフォーマンスが得られれば良いと考えるので、過度な欲を出しません。

多くの専門家が言及する通り、プロでない我々が、果実を受け取る方法は、コストの削減、分散投資、インデックス型ファンドの活用、長期運用による複利効果期待などが王道でしょう。

一喜一憂せず、コツコツと積立られる人は成果を受け取ることができると思います。

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