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「鎌倉高校前のまほうつかい」企画書

キャッチコピー

江ノ電 鎌倉高校前駅近く、まほうの店有〼

あらすじ

神奈川県藤沢市、私有鉄道江ノ島電鉄の沿線には沢山のヒトならざるもの――【モノノケ達】が暮らしている。
この春に【東日本魔法学園】を首席で卒業した舟屋千波(せんやちなみ)は空席が続いていた【鎌倉高校前のまほうつかい】に着任した。
彼女の仕事は店訪れた客の悩みを魔法を使って解決すること。彼女の目的は7年前突然姿を消した先代鎌倉高校前のまほうつかいを探し出し、死亡している場合はその死の理由を突き止めることである。

第1話ストーリー

『卒業生代表――、舟屋千波(せんやちなみ)』
彼女はずっとこの時を待っていた。この東日本魔法学園に入学した当初から今まで信念を貫き続け、結果こうして卒業生代表として舞台に立っている。
隣の席に着席していた友人の寺町小町(てらまちこまち)の壇上の彼女をみつめる視線はどこか誇らしげだ。

「――私はこの学園に入学したときより目標がありました。首席で卒業し、鎌倉高校前のまほうつかいに着任し、そして――……」


「……『困っているヒトビトと魔法で助けたいのです』だって! よう台本通りに言い切ったなァ、千波ちゃん」
先程の壇上で答辞を読み上げる千波の真似をし、真似された当人に飴を差し出すのは寺町通(てらまちどおり)と言い、寺町小町の双子の弟に当たる男子だ。
「ほんまやでちなみん。『先代を殺した犯人を見つけ出し、必ず報復致します』なんて言った日には添削担当の高崎先生が卒倒するよ」

小町がそう苦笑しながら言った台詞は答辞の草稿として千波が寮長の高崎教員に提出した原文だ。添削し返却された原稿用紙のその一文は赤ペンで塗りつぶされ大きく『物騒な言葉NG』と添えられていたのに、寺町姉弟が大爆笑したのは記憶に新しい。

「本心を書いて良いと言われたから書いたのに……高崎先生は難しい事を言う」
「まぁ本音と建前ってヤツよ」
真面目で品行方正、少し近寄りがたい高嶺の花――そんな舟屋千波に寺町姉弟は入学時から寄り添っていた。
姉弟の実家は京都でも有名なまほうつかいの家系だ。卒業後は実家を継ぐことを約束されているふたりにとって報復を主軸にした千波という存在想像以上に異質だったのだろう。7年間1度たりとも飽きることがなかった。

「ふたりは明日の新幹線で帰るんだっけ。魔法を使わずになんで新幹線?」
「小田原駅で鯵の押寿司買って帰りたんだもーーん」
「千波ちゃんは一度辻堂の実家に帰るん?」
「え、帰らないよ。このまま鎌倉高校前に直行」

「真面目か!」
「あ、でもまずは鎌倉さまにご挨拶に行くよ」
「え、今日? 今から? あの謎に満ちたイケメンさま方のところに?」
「姉ちゃん……着いてかんといてよ。部屋片付け終わってへんからな」
「通くん片付けよろしゅうな」
「あーー!」

私は此処で、この場所から、絶対貴女を見つけ出す。
貴女を傷つけたものあるなら、それすら壊して。

第2話以降ストーリー

神奈川県鎌倉市、沢山の人間が住まう都市。
その鏡合わせの存在、裏鎌倉。
ヒトならざるものだけが暮らすことが出来るとの地は、日に2度だけ門が開き、往来が許される。
行き方はとても簡単で、とても面倒。
丑三つ時と逢魔が時の江ノ電の車輛。普段は緑色の車体に一本赤い線が入っているその車輛だけが、裏鎌倉に通じている。
鎌倉さまは裏鎌倉を作り上げ、一帯に住むモノノケ達を統べている言うなればモノノケ達たちの大将だ。
そんな【彼ら】を慕う古今東西のモノノケ達だ江ノ電沿線に暮らし、また地域を守っている。

藤沢には烏天狗、
石上には猫又、
柳小路には人魚、
鵠沼にはドワーフ、
湘南海岸公園前には座敷童、
江ノ島は魔法学園があるためモノノケはあまり住んでおらず、
腰越にはセイレーン、
鎌倉高校前にはこれから千波が店を再開させ、
七里ヶ浜には吸血鬼がいるが近年全く姿を見せていないらしい。
稲村ケ崎にはエルフが暮らし、
極楽寺には梟(ふくろう)と名乗る女妖怪が居て、
長谷も彼女の管轄だそう。
由比ガ浜と和田塚は裏鎌倉が近いため結界を常に守っている陰陽師の兄弟が居を構えて居る。

舟屋千波は藤沢市辻堂地区出身で母親も辻堂で魔法の店を営む家系だ。
先代鎌倉高校前のまほうつかい――沖津円(おきつまどか)も母の弟子のひとりだった。
東日本魔法学園を第2席で卒業し、千波の母の店で修業を続けていた円が鎌倉高校前に着任したのは今から10年前。
日本で初めて魔法を取り扱う店が出来た鎌倉高校前は言わば魔法使いたちにとって聖地であり、憧れの存在。
それから3年後、千波がいよいよ魔法学園に入学するという年に円は突然姿を消した。なんの手紙も残さず、追跡魔法を以てしても見つからなかった。
意気消沈とする千波に円から荷物が届いたのは入学式前日。
大きく【祝・御入学】と書かれたその包みの中身は円しか所持出来ない鎌倉高校前のまほうの店の鍵だったのだ。

それから7年後、まほうの店が再開される。
鎌倉高校前の改札を抜けて坂を登る。登り切れば県立の高等学校があるが其処を背にして下り坂。
途中の日陰に人気のすくない公園がある。
遊具も少ない公園だ。その一番奥に枯れ木が1本立っている。
葉を付けない代わりなのか、枝先に風鈴がひとつ下がっている。
風鈴の短冊には【御用の方は鳴らしてください】。
目を瞑って風鈴を鳴らせば、次目を開けば其処は室内。
まほうの店。
不思議と寒くもない、暑くもない。
懐かしい空気が流れるその場所が、【まほうの店、せんの屋】。

江ノ電沿線のモノノケ達と、ヒトビトと、まほうつかいのモノガタリ。

#週刊少年マガジン原作大賞

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