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著作権は「使いたい人は、一定のルールに基づいて自由に使える」ようにするしかない


【サマリー】
・著作権は権利者の利益を守るものだが、著作権侵害のセーフとアウトの線引きは曖昧で難しい
・著作権を完全に守ることは至難。新技術や新サービスが次々と出てくるので、違反者を取り締まるという対処療法的なイタチごっこになる
・著作権を守ることに拘泥しても誰も得しない。権利者は、「権利者の利益が増えるように利用者に使ってもらう」発想が必要

任天堂がYouTubeでのゲーム配信を認め、反響が広がっている

2018年11月29日に任天堂が公表した著作物の利用指針の反響が広がっているとの日経新聞の記事です。二次創作(著作物にオリジナリティを加えたもの)に対し、著作権者がOKを出すという潮流が、ますます加速しそうです。

これまでは、任天堂のゲームをプレイし、その様子をYouTube等で配信する行為は著作権的にアリなの?ナシなの?というところがグレーゾーンとされていました。

というのも、
① 単にプレイ動画を共有することは問題か?
② プレイ動画が視聴されるとプレイヤーにお金が入る(=YouTuber等)ことは問題か?
という点が著作権的には曖昧なところだからです。

①は何か大丈夫そうじゃないの?と思われるかもしれませんが、著作権法では「複製権」「公衆送信権」というのがありまして、要は著作物をそのまま使ったり、ネットで配信したりすることは、アウトっぽいそうです。②は①の行為でお金をもらうことなので、アウトに近いところにあります。

ところが、YouTuberによるゲーム実況が流行し、それがゲーム等の売上に貢献するということが起きました。YouTuberは配信した動画を視聴してもらうとお金が入る仕組みとなっています。

これは著作権的にはアウトっぽいところがあるものの、「ゲームファンの獲得につながるのであれば」ということで著作権を持つゲーム会社は黙認してきました。

著作権者は、ある程度は二次創作を容認し、ユーザーとの共存共栄を目指すしかない

デジタルコンテンツが増え、著作権を守ることは難しくなっています。コピペも不特定多数への配信も容易になり、チェックは難しくなっています。また、ユーザー側も、著作権を侵害しようという悪意がない場合であっても、意図せずグレーなところに触れてしまうケースも増えているように思います(例えばゲームの実況中継などは、有名YouTuberが実施していることから、本当は著作権的に問題があると認識しているユーザーは多くはなさそうです)。

そんな中、「あれもこれも全部著作権的にアウトだ!」と取り締まりを厳しくしても、企業にとってプラスになることは少ないでしょう。また、仮に取り締まりを厳しくしても、YouTubeに替わる新しい仕組みができたりすれば、イタチごっこが起きそうです。

魅力的なコンテンツが制作者からネット等に提供されていなかったことから、YouTubeなどに違法コンテンツが流通しているという背景もありそうです。ニーズに応えていないから、ユーザーが違法な方向に流れてしまう。それが権利者を頑なにし、さらに保守的になってコンテンツが提供されなくなっていく、という悪いスパイラルになってしまいやすい構造となっているように思われます。

著作者にもユーザーにも良いスパイラルで流通が起こるようにするには、著作者もユーザーも双方の利益が最大化され、持続可能な関係を築くしかありません。

YouTube等の違法コンテンツは、アップロードを禁ずるのではなく、著作者もユーザーも著作コンテンツをどんどんアップしたくなる仕組みにするしかない

YouTubeのみならず、ネット上では、テレビ番組やアーティストのライブ映像、スポーツの中継など、著作権的に違法なコンテンツも多数アップされているのが現状ですが、そうした違法コンテンツを完全に断つことはもはや不可能です(違法コンテンツを推奨しているわけではありません。違法はダメですが、それでもやり続ける人は後を絶たないのでどうしてもゼロにならない、という話です)。

であれば、そうした違法コンテンツを、著作権者の広告・PRに活かすとか、違法コンテンツによって利用者が得た収益を権利者とシェアするとか、著作権者も違反者をしたたかに利用するくらいのマインドセットでいたほうがお互いにメリットがあると思われます。イソップ寓話の「北風と太陽」のような発想です。

実際に、任天堂もお笑い芸人のよゐこさんを使って、マインクラフトやスマッシュブラザーズなどのゲーム実況動画をオフィシャルに配信するようになりました。どうせなら、自分も任天堂のゲーム実況をしたいと思う人を増やして、ゲームファンの獲得につなげてしまおう!という動きです。

著作権は、「何が何でも権利を保守し、違反者は取り締まる」という発想から、「著作物を使いたい人は、一定のルールに基づいて自由に使うことができる」というマネジメントにシフトできるかどうかで、今後ビジネスの展開が大きく左右されることになりそうです。

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