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永遠のテンポエムチャイルド その13前編最終話

十詞子は

少しよろけながら

通路の端に歩いていき

何が起こったか考えました。


3年間も

遠くに住んでいたから

ダメになったのだろうと

思いました。


あんなに仲良しだったので

大丈夫と

思っていたのに

悟を

信じていたのにとも

思いました。


「それに悟が連れていた女性は

私よりとってもきれい人だったわ。


髪も長めで

清楚な感じ

きっと

キャリアでは

なさそう。


悟には

そんな女性の方が

似合うのかも知れないわ。


私も

東京に行くまでは

あんな感じだったのに


あのとき

東京に行かなかったら

こんな結果には

なっていないだろうに

、、、、



もう私は

身を引くほうが

彼のためになるのかもしれない。


やっぱり

3年間はながいかもしれなかったわ。」

と考え

3年間→女性→身を引く

という図式が

回りまわって

他の考え方である

悟と私の愛は永遠に不滅という考え方に

ならなかったのです。


ふたりは

ふたりとも些細なことを

全く

根拠のないことを

大きなことと誤解して

こんな結果になってしまったのです。


もっと

もっと

立ち戻って

冷静に考えれば

そんな誤解など無いはずなのに

そして話さえすれば

簡単に

解ける誤解なのに

十詞子と悟はそれをしませんでした。


相手のことを思って

深く思って

自分が犠牲になることを

選んだのです。


十詞子は

ゆっくりと

大阪駅のほうに

戻りはじめました。


そのすぐあとに

悟と女性が

映画館を出たのですが

ふたりは

その後

出会うこともなしになってしまいました。


十詩子は

新大阪から

新幹線に乗って

新宿の独身寮に

帰ったのは

夜の12時近くでした。


食事も摂らず

お風呂にも入らず

着替えもせず

化粧も落とさず

布団の中に入りました。


寝ようとしましたが

寝付けませんでした。


涙が流れて

寝られませんでした。


翌日も

何も食べずに

一日中泣いて暮らしました。


夕方になって

鏡の

自分の姿をみて

驚きました。


お風呂に入って

涙を洗い流そうとしました。


止めどもなく

出る涙で

お風呂の水が

冷たくなったように思いました。


お風呂を出て

冷蔵庫の残り物を

食べて

またお布団の中に

入りました。


その夜は

寝てしまいました。


翌日

十詩子は

答を

出しました。


机の上の

年賀状に

十詩子は

向かいました。


いつものように

丁寧に

悟の住所を書いて

悟の名前を書いて

横に

十詩子の名前を書いて

裏に

「おめでとうございます。

お幸せにお暮らしください。」と

書いて送りました。


これが十詞子に出来る

精一杯の

最後行いだったのです。


同じころ

悟も

見合いした相手の女性に

何か物足らないところを感じていましたが

理由はよく分かりませんでした。


十詩子のことを

思い出していたのです。


11月頃までは

十詩子以外の

女性には

女性を

感じていなかったのです。


もっと言えば

今でも

十詩子以外の

女性は

人間という

くくりで

考えていたのです。


見合いの相手は

一般的には

極めて

女性らしい

女性でしたが

悟の目には

そんな風に

映らなかったのです。


悟もまた

毎年出している

十詞子への最後の年賀状を

書きました。


文面は図らずも

十詞子と同じだったのです。


そのお互いの年賀状が

元旦に届きます。


二人は同じ文面に驚き

悩みますが

これで最後と

思うのです。


もっと

冷静に

もっとよく考えれば

「これは変

連絡してみよう」と

なるものなのに

相手の事を考えると

なぜか

連絡を取らずに

年賀状だけを

見返す日々が

その後続くのみでした。


その後悟の母親が

急逝すると

見合い話は

立ち消えになって

悟は

一人暮らしになってしまいます。



悟は春から

大阪市役所に勤め

建物を内部設計出来る唯一の人材として

働きます。


仕事は

確実にこなす

悟ですが

出世もせず

建築設計だけを

していました。


方や十詞子は

東京本社に勤めながら

企画・営業・総務など各部署を体験していました。


34歳になると

業績から

部長職に就いて

ますます忙しくなっていました。




ふたりの恋愛はそれっきりで

ずーと独身で暮らしていきました。


仕事では大変忙しかったけど

恋愛しないふたりは

心静かな

日々だと思っていました。


そして

時間はゆっくりと経過します。

(「永遠のテンポエムチャイルド」の前編は

終わります。


続篇の

クリスマス編

その後

完結編を

連載します。


なお

完結編のみ

一定期間

有料にする予定です。


万が一にも

収入があれば

全額

ユニセフに寄付する予定です。


そんなことはないと思いますが

ご期待ください)

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