「さがす」(2022年3月9日鑑賞)

左回りの動きが印象的だった。上手くいかないビラ配りに苛立つ娘 楓の足踏みや、名無しの山内に計画の継続へ誘われる父 智を映す屋上のカメラワークや。逆進する時計の針を連想した。(「パラサイト」だけに、じゃないはず……)

通天閣のネオンがあの角度で見える街、という冒頭のワンカットだけで舞台の地域性やその家族の持つ環境を明かすのはザ・映画の魅せ方でとてもいいなー。西成の街も果林島(男木島)も、見覚えや歩き覚えがたくさんあって勝手に嬉しかった。港の風景、朽ちかけた家屋、階段状の石垣、その段差、見渡す海岸線。

楓の「さがす」に取り合ってくれない警察や労働福祉センターの窓口、親身になっているようで一定の距離を置く教師やシスター。そのありようから見える、社会の陽のもとで生きる人々が日々振りかざす「取り合ってくれなさ」。そうすることでとりこぼすものの存在。機能しないセーフティーネット。

「岬の兄妹」から一貫性して続く、生死の自己決定権というテーマ。自らの人権を他者へ委譲することの危うさ。救済を求める感情は主体的正読-誤読のいずれもに転じやすいからこそ、第三者に明け渡すのはせめても悲しいなぁと思う。2014年に「みなさま、よき倫理を!」と言い残してこの世を去った彼女のことを2022年の今も思い出す。

前作「岬の兄妹」「そこにいた男」よりかなりエンタメ寄りだったから、「さがす」に何をどう期待していたかによっては感想がわかれるかも?モヤッとするシーンも複数。

白い靴下への執着と畳に転がるプレモルはすごくいいディテールだった。
「お酒奢る」は本当やったんや……

お酒を買いカレーを食べます。