見出し画像

エントリーの舞台裏ー社会福祉法人山ゆり会

GOOD ACTION AWARDは2015年の第1回開催から、2024年3月の第10回開催まで、累計87件の取り組みが選出されてきました。燦然と光り輝く受賞ラインナップですが、そんな受賞企業も、はじまりは他企業と同じ「エントリーボタン」をクリックするところからスタートしています。

この「エントリーの舞台裏」は、「エントリーできるかな…」「どうせうちなんて…」と迷われていたりする皆さまに向けて、過去の受賞企業様にエントリーから受賞後の反響まで、リアルな舞台裏をあれこれお聞きするシリーズ企画です。

今回、お話を伺ったのは、第10回開催で「遠くても、通いたい保育園。」を目指した一連の取り組みで受賞を果たした社会福祉法人山ゆり会の松山さんです。

●GOOD ACTION AWARD not編集部(以下、編)

はじめに、GOOD ACTION AWARDにエントリーしようと思ったきっかけを教えてください。

●社会福祉法人山ゆり会松山さん(以下、松山さん)

実は…(笑)正直に申し上げまして、事務局から募集開始のご連絡をいただくまで、GOOD ACTION AWARDのことは知りませんでした。「へー、こういうアワードがあるんだ」と思い、ホームページにアクセスして歴代の受賞企業を見てみると、大企業だけじゃなくて中小企業も受賞しているし、業種業界も多種多様で、過去には社会福祉法人も受賞していることを知りました(※編集部注。第9回受賞・社会福祉法人幸知会「週休3日・1日10時間勤務制」)

一方で、保育業界というところはかなり特殊で、確かにわたしたちの取り組みは業界内ではそれなりに先進的かもしれませんが、「様々な業界を含めた働き方改革」となると、それほど特別なことのようにも思えませんでした。過去の受賞企業はキラキラしているのに、自分たちは普通だなーと、ハードルが高く感じたのを覚えています。ちょうど通常業務が忙しい時期でもあったので、エントリーを迷ってしばらく放置していたのが実態でした。

●編

過去の受賞企業がキラキラしていて自社には少しハードルが高く感じられた一方で、最終的にエントリーされたのはどうしてですか?

●松山さん

事務局から「締め切りまであと●日」と連絡をいただいたんですよね。なんとなく頭の片隅にはあったのでエントリーシートを開いてみると、想像よりもたくさん書かなくても良いような仕様で、「あ、これなら書けそうだ」と思い、締め切り前日の夜にひとりで一気に書き上げました。

●編

エントリーシートを書かれる際、工夫されたポイントはありますか?

●松山さん

どうせ出すならせめて爪痕は残そうと思いました。先ほども申し上げたように、一般企業では当たり前のように行っているけど、保育業界ではあまり取り入れられていないような取り組みを中心に書きました。

●編

書類審査通過後、訪問審査を受け入れていただくのですが、その時はどのような印象をお持ちになりましたか?

●松山さん

当たり前かもしれませんが、本当にちゃんと審査するんだなと感じました。取り組んでいることのエビデンスや現場で携わっている人の声など、わざわざ当園までいらっしゃって、丁寧に取材くださったので、こちらも次々と話したくなるような時間だったことを覚えています。

▲訪問審査は自然に囲まれたまつやま大宮保育園にて実施した

特に印象的だったのが、取り組みを評価いただいた点のひとつに「キャリアパスの構築」があるのですが、実はエントリーシートにはその取り組みを書いていないんですね。保育業界では「キャリアパスの構築」というのはかなり珍しいと思いますが、普通の会社からすれば当たり前のことなので、爪痕を残すためには大してプラスには働かないだろうと思い書きませんでした。ですが、この訪問審査で事務局の方から熱心に取材いただくうちに、「それ、いい取組みですね」と引き出してくださったのです。

普通、アワード審査というのは応募書類だけ見て、主催が優劣を判断する一方通行のようなものだと思うのですが、GOOD ACTION AWARDは双方向的で、訪問審査も、その前後のやり取りも、一生懸命こちらの良さを引き出そうとしてくださっている感じが伝わり、すごいアワードだなー思ったのを覚えています。

●その後、最終審査会を経て晴れて受賞されたわけですが、その連絡があったときのことは覚えていらっしゃいますか?

●松山さん

はい、覚えていますが、実はその時もまだあまり実感が沸かず(笑)。受賞後に、動画の撮影にいらっしゃるじゃないですか?その時あたりから「あれ、もしかして、すごい賞を受賞したのでは?」と思うようになったんですよね。

表彰式に参加させていただいて、リクルート本社の会場に審査員の先生方がいて、他の受賞企業がいて、多くの報道陣がいて、たくさんの取材を受けているうちに、本当にすごい賞を受賞したのだという実感が沸いてきました。

▲審査員のアキレスさんから賞状を受け取る松山さん

わたし自身は、いわゆる普通の企業が普通にやっていることを保育業界でもやっていかないと、この先、本当にまずいことになると考えて、大変な苦労をしてこの取り組みを推進してきました。そのくらい、保育業界は特殊で遅れているところがあるのですが、GOOD ACTION AWARDのように、全産業を対象としたアワードで第三者の方からご評価いただけたことは本当に嬉しかったです。一緒にやってきたメンバーも本当に喜んでくれました。

●編

受賞後の反響にはどのようなものがありましたか?

●松山さん

この受賞をきっかけに、ラジオや新聞など数多くのメディアに取り上げていただきました。これまで「園経営」や「少子化」といったテーマで注目されることはあっても、一般メディアで幅広い業界の参考となるような「働き方改革」という取り上げられ方はなかったので、大きな成果だと思います。講演依頼などもたくさんいただくようになりました。

また、同業の仲間から「よくやった!」と言ってもらえることが格段に増えました。例えば、全国紙に取材いただいた記事がポータルサイトのニュースに転載されたことがあったのですが、炎上することで有名なコメント欄(笑)を見ていたら、「世の中に、こういう保育園が増えるともっといい」といったようなポジティブなコメントが多数寄せられていたときは嬉しかったですね。残念ながら最近は、虐待や不適切保育など、保育に関わるニュースは暗くネガティブなものも多いので、少しでもこういった明るいニュースを届けられるのは業界全体の役に立てていると感じます。

あとはインナーブランディングの観点からも大きな効果がありました。組織の中で、変革を推進していくことは本当に大変なので、このように第三者的なお墨付きをいただけることで、自分たちのやってきたことは完璧ではないかもしれないが、間違いじゃなかったんだと一緒にやってきた仲間に伝えられるのは、何物にも代えがたい価値です。

▲中央が松山さん。保育士のみなさんにも現場の声をヒアリングさせていただいた

ちなみに余談ですが、わたしは長く野球をやってきたので、この取り組みがスポーツ新聞で大きく取り上げられたのが個人的には最高でした(笑)。

●編

最後に、エントリーしようか悩んでいる企業さまへメッセージをお願いします。

●松山さん

組織の中で何かを変えてきた方、変えようしてきた方には、仲間もいると同時に、敵もいるケースがあると思います。今後、更に変えていこう、変革を進めていこうとしているのであれば、こういったアワードの受賞が、もしかしたら敵を仲間に変えるきっかけになるかもしれません。

もちろんアワードなので受賞できるかどうかは分かりませんが、確実に言えるのは、行動を起こさなければ、何も変わらないということです。このことは、組織の中で試行錯誤を重ねて来られた方、つまりGOOD ACTION AWARDにエントリーしようか悩んでいる方なら誰よりも理解していることだと思います。

わたしも締め切り前日に、ハードルの高さを感じて放置していたエントリーシートを覗いてみて、夜中にひとりで書いたから、今日、お話したような大きな変化や成果を得られたのだと思います。チャンスがあるなら、まずは行動してみることをお勧めします。組織で変化を起こしてきた実践者は、アクションを起こすことは得意なはずですからね。

●編

今日はお忙しいところありがとうございました。

第11回GOOD ACTION AWARDのプレエントリーはこちらからどうぞ。
https://forms.office.com/r/itsUFbdKmr

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!