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名探偵誕生

今回読んだ本はこちら⬇️

  • 名探偵誕生

  • 似鳥鶏

  • 実業之日本社

この本をなぜ手にとったのかというと、X(旧Twitter)でフォロワーさんが読まれていたため、気になって読んでみました。表紙もなんだかすごく綺麗で気になった。ほぼジャケ買いですね笑。


概要

この小説は、主人公(星川)が小学4年生の話からスタートして、章ごとに成長していく青春物語。各章ごとに事件に巻き込まれて、隣に住むお姉さん(千歳)が明晰な頭脳で、見事解決していく。そして、小学生ながらに当時高校生である千歳に対して思いを寄せていく青春×ミステリー小説だと思う。

星川が経験することになる事件というのは、成長するごとに規模や深刻度が大きくなっていき、最終的には、刑事事件にも発展することになる。

様々な事件に巻き込まれていく一方で、歳の離れた女性に恋心を抱き、なかなか思いを伝えられずにいる星川も最終的には想いを伝えるべく行動に移すが如何に。

どんな人におすすめ?

せっかく、記事を読んでいただいているわけなので、やはり、おすすめしないとね。ってことで、私個人的には以下の方々におすすめできるのではないかと思っている。

  • ミステリーが好きな人

  • ユーモアセンスのある小説を読みたい人

  • 普段読書はしないけど、読書に挑戦してみたい人

ミステリー好きな人

当然、この小説は、ミステリー小説に分類されるものであるだろうから、ミステリー好きの方にはおすすめ。

序盤はそれほど、事件の解決スッキリ!とはいかないものの、中盤以降、事件の内容が深刻化していくにつれて、謎解きが深まり、背景の事情や、求められる論的思考も高度化していく。

普段ミステリー読まない方でも、ミステリー好きで難しい物語好きの方でも満遍なく楽しくことができると思う。

ユーモアセンスのある小説を読みたい人

似鳥鶏さんの作品を初めて読みましたが、注釈が面白い。普通、注釈といえば、専門的な用語や、あまり世間に浸透していない言葉を説明するものだけど、そういった説明に加えて、作者の主観や感情が描かれており、ところどころ笑える。

もちろん、シリアスなシーンにはそういったユーモアセンスのある注釈はついておらず、作品の重要な部分や世界観を崩すことはない。

普段読書はしないけど、読書に挑戦してみたい人

なんだか随分遠回しの言い方だが、端的にいえば、「普段本を読まない人でも挑戦できる本ですよ」ってこと。

私は電子書籍でしか読んでいないが、だいたい300ページくらいで、難しい漢字や表現も少なく、もちろん、専門用語なんかも少ない(というか注釈がある)ので文量は多く感じるかもしれないが、スラスラと読めてしまうのではないか。

感想

ここからは読んでいて面白かったところ、印象に残ったところについて、つらつら書いていきたいと思う。

ネタバレ要素があるかもしれないので、そのあたり、ご注意いただきたい⚠️

構成について

概要でも書いたが、この小説は主人公が小学4年生、中学1年生、高校2年生、大学2年生と、成長期かつ多感な時期を描いており、青春・恋愛小説のような一面もあるが、メインはミステリーである。

物事の見方、感じ方、考え方が、順を追って広くなり、成長していく様があらゆる場面で描かれている。

誰しもが通る道かもしれないが、こうやって改めて、文章で読んでみるとなかなかに面白く、なんだか懐かしい気持ちにさせてくれた。

最大の関心事はゲームやドッジボールからバスケになり、心のヒーローはアニメの主人公からプロバスケ選手になり、中二になることには僕は、今思えば周囲に流されてバスケに夢中になり、普通のスポーツ少年になっていた。

名探偵誕生(著:似鳥鶏)

社会風刺

あとがきで作者自身が書いているように、小説では社会風刺が効いた内容はあまり好まれないらしい。

なぜならば、5年後、10年度読者が読んだ時に理解しにくい内容になってしまうからだそうだ。

なるほど、そういうものだんだと。もちろん、例外はあるものの、ノンフィクションとかでない限り、現実にあった社会問題をメインテーマにしている小説はなかなか少ないのかもしれない(私の視野が狭いだけかもしれないが…。その場合はご容赦を)。

では、この小説に、社会風刺のような場面があったのか。そこである。

私は、あったと感じている。

各章で1つの事件が起きている。そこでは、先述の構成でも書いたように、主人公である星川の成長(恋愛模様も含む)、事件がメインの内容だが、裏テーマとしてなのか、ぼんやりと背景の問題も浮き上がってくるような気がしている。

第一話「となり町は別の国」
ここでは、「シンカイ」さんという団地に住むご老人の認知症、孤立という問題があった。実際、「孤独死」というのが超高齢化社会の日本では問題になっている。

第二話「恋するドトール」
盲目的な人が相手のプライバシーを詮索して、付きまとう事件の発生。最近はSNSでの特定やトラブルがあって、そういった事件を連想させる。

第四話「愛していると言えるのか」第五話「初恋の終わる日」
政府や官僚に関連する不祥事の揉み消し。この小説では、政治家の息子が起こしたスキャンダルが忖度によって隠蔽されてしまい、その息子に直接制裁を加えるべく、事件が発生し、星川と千歳は巻き込まれた。
最近では、「上級国民」なんて言葉をよく耳にするようになったが、「権力を持つ側」と「持たない側」の分断がより色濃く出てきて、多くの人が感じ取っているように思う。

メインテーマではないところに目をつけてしまったが、個人的な興味関心もあり、社会風刺ふんわりと描かれていて、作品に何か滲ませているあたり、面白みを感じた。

共感できること

共感できることとは、個人的に多くあったように思う。

第一話「隣の町は別の国」では、登場人物は主に小学生であり、高速道路を隔てた隣町は別世界であると感じているようだった。

自転車で遊びまわっているうちに意図せず高速道路の前まで来てしまった時あなどは、「やべえ行きすぎた」「戻ろうぜ」といって急いで自転車を反転させたし、親からは「遠くへ行かないように」という意味で「高速道路のむこうは子供だけで行っちゃ駄目」という言い方をされていた。もっとも学校や家からは二キロ近くは離れていて学区も違い、むこう側の公園は全て「朝日ヶ丘小学校の人」という得体のしれない子供たちの縄張りだったから、行く理由もなかった。…
小二の子供たちにとって「高速道路のむこう」は異国だった。

名探偵誕生(著:似鳥鶏)

こういった感覚、皆さんにもあるのではないでしょうか。

私はありましたね。

小さい頃は、作中同様に子供たちだけで遠くへ行くことは禁止されていた。遠くというのは隣の市には行ってはいけないというもの。私は小さい頃、とても田舎に住んでいた。隣の市には、大きめのデパートができていたので、友達と遊びに行きたくて、でも禁止されていて、市の境界線に行くとどこかで大人が見張っているんじゃないかとドキドキしていたことが思い出される。

今となっては、どこまで遠くへ行こうが自己責任で、特に自分のテリトリーとの境界は意識しなくなったが、子供の頃は大人が示す安全圏内で過ごしていたから、このような感覚があるのかもしれない。

だいぶ作品の本題とずれてしまったが、序盤で自分の小さい頃を思い出して、懐かしさに少し浸っていた。

名探偵誕生

基本的に主人公(星川)が事件を解決するのではなく、年上のお姉さん(千歳)が明晰な頭脳をもって解決する展開となる。

ただタイトルの伏線を回収するように、終盤に星川が千歳を救うべく事件を解決すべく立ち上がる。このシーンはこの小説の中でもなかなか感動的なところであったと思う。

僕は抱きしめる腕に力を込めた。そしてたぶん生まれて初めて、本気で神様に祈った。神様。僕はこれから死力を尽くします。体力も知識も頭脳もすべてつぎ込んで、真相に辿り着くためならどんなことでもします。全て捨てても構いません。…だから神様。どうか彼女に幸福を。

名探偵誕生(著:似鳥鶏)

解決したら、星川の初恋は完全に終わるのだが、愛する人に幸せになって欲しいがために、死力を尽くせる最高にかっこいいシーンじゃないですか。

人間らしい欲望とあるべき姿の間で揺れ動く様がよく描かれていて、最後に至るまで読み応えがあった。

さて、今回はこの辺りで。また次回お会いしましよう。

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