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無敵らしい

実はかなりの方向音痴で、どこに行くにも必ず迷ってしまう。
先日ある美術館に行ったとき、駅からの道がとてもわかりやすかったので、これならわたしでも迷わないとすっかり安心していた。
でも帰り道、完全に駅を見失った。
道をどこかで一本間違えて、それが運悪く高架になっていて、知らないうちに線路を跨いでいたらしい。跨ぐ時点で気づけよという話なのだが、全く気づかなかった。
方向音痴の最大の特徴は、前しか見ていないということなのだろう。

別の美術館に行ったときは、目的地がさっぱり見つからなかった。
でもどうしても行きたくて、近くで道路工事をしていたお兄さんを捕まえて、「ここに行きたいんですけど」とスマホを差し出した。
地図アプリをずっと見ていたのに、それでも着けなかったのだから仕方がない。
治安の悪い国ならとてもこんなことは出来ないだろうが、幸いここは日本だもの。
道路工事のお兄さんはすぐわかったようで、親切に道順を教えてくれた。

「その聞き方が出来た時点で、すでに無敵だから」
後日友人に話すと、呆れ顔で言われた。
そうか無敵かと思ったが、迷い続けるよりは、はるかにましだろう。

写真を撮るのも好きなので、本当は、季節ごとに山歩きにも出かけたいのだ。登山とまでは言わないから、せめてハイキングくらいはしてみたい。でも間違いなく遭難すると思うので、一人では出かけられない。
誰かと行動出来ればいいのだが、昔からそれが苦手で、写真を撮り始めてからはなおさら、人と一緒に行動することが出来ない。
あっちで立ち止まり、こっちで立ち止まり、また戻ってしばらく立ち止まり・・・そんな人間と一緒に行動したいハイカーなどどこにもいないだろう。
だいたい、人を待たせて撮る写真ほどつまらないものはない。

先日地図アプリを見ながら歩いていると、どこからか、ゴモゴモと何かが聞こえてくる。
何だろうと首を傾げていると、「右折」とか「左折」とか言っている気がする。
地図アプリがしゃべっているのだとようやく気づいた。
カーナビ並みにあれこれ指図している。
年中マナーモードにしているので、そんな機能があることを知らなかったのだ。
なんだ早く言ってくれよと思ったが、知っていたとしても、道路工事のお兄さんには尋ねていただろう。

「何のためにスマホを持っているの?」
また言われそうなので、友人にはまだ話していない。

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