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「モダン」という憧憬 版画家・斎藤清

 斎藤清(1907-1997)の木版画の魅力は何と言っても、他の誰にも真似の出来ない構図だろう。
「もっとも作品の売れた版画家」とも言われるが、二十四歳で画家を志し上京した後も、美術学校に通ったことはなく、油絵にしても木版画にしてもずっと独学だった。


石庭 1955年 木版

 京都、竜安寺の石庭。
 あまりにもシンプルな、究極の単純化ともいうべき構図にピシャっと叩かれたような感じがして……と、そのときの印象を斎藤は書いている。
 
屋内から見た光景なのだろうけれど、画面の下三分の二が影という、一瞬目を疑うような構図。でもそれが、音の無い、しんとした石庭の様子を強調している。

目 1975年 木版

 この対象に自分は何故惹かれるのか。
 その追究の先にあるのが、斎藤独特の構図だったように思う。「モダン」とか「モダニズム」という言葉が使われることが多いが、他人からは見えない内面的なものを表現するのではなく、誰もが目に出来るものを独自の構図で切り取る、彼にしか選びえないその構図がまさに、斎藤の「モダニズム」表現だったのだろう。
 作品を見るたびにいつも、ラインの美しさにため息が出て、憧れる。

会津の冬シリーズ

写真は、斎藤清美術館(福島県柳津町)のポストカードと、版画芸術 173号(斎藤清 木版画モダニズム)から。

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