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【春ゆきて、レトロチカ】感想

実写ミステリーADVゲーム
『春ゆきて、レトロチカ』(PS5版)の感想を備忘録的につらつらと。
ただ、公式からネタバレ厳禁が強く言われている作品なので、本編ストーリーに関するネタバレは無しで書いていきます。


①概要
上述の通り、実写ムービーをメインとして進行するADV推理ゲーム。
物語的な流れは、現代(2022年)で起きたとある殺人事件をキッカケとして、100年前、50年前の殺人事件も絡んできて、時代を跨ぐ大きな事件を、主人公である推理小説作家が挑む内容となっている。
システム的には
問題編(基本的に実写ドラマを見るパート)
推理編(問題編で手に入れた手がかりを元に仮説を組み立てるパート)
解決編(推理編で組み立てた仮説を元に、犯人を特定するパート)
を、各事件毎に繰り返していく形となります。
ここからは各パート毎の感想と、最後にトータルの感想を。


②問題編
基本的にこのパートは実写ドラマを“見る”だけのパートとなる。
稀に選択肢が出るが、別に物語的な分岐がある訳ではなく、そもそも正解以外の選択肢を選ぶと『なんか違う気がする』と選べなかったり、どちらも選んでも結果同じ会話になる等という形の為、特に選択肢に意味はない。
視聴中の要所要所で“手がかり”が表示されるが、これは表示された時にボタンを押して取得出来るものの、次の推理編に行った時に未取得の手がかりは自動的に全取得されるので、やはり特に意味はない。
とはいえ、じゃあホントにボーっと見てるだけのパートかと言ったら勿論そうではない。
新本格ミステリーを謳うだけあり、この問題編のドラマにはいろんな伏線や、上記の表示される“手がかり”以外にも色々な情報やヒントが小出しにされているので、このパートをちゃんと見聞きしてるかどうかでこの後のパートの難易度が大きく変わってくる、重要なパートではある。
また、システム面で言うと一時停止やバックログは勿論としても、登場人物の簡易説明や入手した手がかりをムービー中にいつでも確認出来るなど、この問題編のUIは個人的に凄く親切で嬉しいなと。
地味に、舞台となる場所の見取り図がいつでも見れるのも嬉しいよね。


③推理編
主人公の脳内空間。
問題編で提示された“謎”に、問題編で手に入れた“手がかり”を繋げて“仮説”を生み出す事がメインとなる。
まず最初に苦言(笑)
操作性はよくない。ヘックス型のマスに“謎”があり、そこに面が合うように“手がかり”を入れて行くのですが、この際の操作が恐らくPCでのマウス操作が前提になっているようで、PSコントローラーでは軽くストレスの貯まる仕様かなぁと・・・
また、この“マス埋め”に関しては“模様”で分かるようになっており
例としては“アリバイに関する謎”には○印が付いていて、凶器に関する“手がかり”には□印が付いていてマスにハメられない。というような形になっており、この仮説を生み出す過程は気づくと“絵合わせ作業”になってしまっている感があります。
ただ、苦言だけかと言えばそうではないです。
ここで“謎”と“手がかり”を組み合わせて生み出すのは、あくまで“仮説”であるというのが、ココの肝です。
この手の推理ゲームは、少し間違えると
『必要な情報を集めたら、後は主人公が勝手に推理を始める』
という事になってしまう事がありがちではあるのですが、このゲームはそうではないのです。
例えばコレもあくまで、一例ですが
『犯人が逃走に使ったと思われる経路に、本来殺人現場にあったはずの灰皿が落ちていた』
という手がかりに対して、生み出される仮説は
『犯人が持ち出したが、逃走中に落としてしまった』
『犯人が逃走中に、何らかの理由で敢えて置いていった』
『犯人が殺害現場から何らかの理由で投げた』
『偶然、その場所に灰皿が飛ばされた』
というような“仮説”が出てきます。
どれが正解なのか?それはこの推理編では分からないのである。
無論、問題編のドラマをちゃんと見ていれば、そこにヒントがありこの仮説の中で正しいのはどれかが分かるようになっている。
推理編は言葉通りの意味で多数の“仮説”を生み出し、それを整合性のある一本の推理に纏めるのはあくまでプレイヤーなのである。
つまりこの推理編は、プレイヤー自身の推理の材料を整理するパートであり、同時に所謂ミステリー小説における“ミスリード”を可視化するという、今までのこの手のゲームにはなかった事をやってのけているのである。
操作性や、絵合わせになってしまう問題は孕んでいるものの、とても画期的で面白いシステムだなぁというのが個人的な感想です。
あ、もう一つ苦言(笑)
各“仮説”を生み出した時に、その“仮説”をCG再現してくれるのですが、コレが遅い・・・初回プレイ時はともかく、二週目以降はこれスキップか倍速させてほしかったなぁ・・・。


④解決編
推理編で生み出した“仮説”を元に、犯人を追い詰めるパートです。
『犯人は○○を・・・』という形で選択肢に入り、正しい選択肢を選ぶ事で進んでいきます。
因みに、ここで出る選択肢は推理編で生み出した“仮説”のみです。
どういう事かというと、推理編では各“謎”に対して最低一つの仮説を立てればこの解決編に行く事自体は可能です。
ただ、選択肢は生み出した“仮説”のみなので、例えば先程の灰皿の件
『犯人は灰皿を持ち出したが、逃走中に落としてしまった』
の“仮説”しか生み出してない場合は、この灰皿の件ではコレしか選択出来なくなってしまうのです。
それが正解なら良いのですが・・・勿論、間違いだったら先には進めません。
因みにココで間違った推理をすると、専用の推理ミスムービーとなるのですが、これだけ差分撮影をした役者さん達への敬意と共に、真面目な本編とは打って変わったコメディチックな空気が流れてちょっと面白いです(笑)
まぁゲームオーバーではあるんですが(笑)
更に言うと、ココでは犯人が反論をしてくる事もあります。
ただ、この反論に対する切り返しは上記の推理編で生み出した“仮説”よりも問題編のドラマをちゃんと見ていたかどうかが問われる瞬間だった気がする。
やはり推理ゲームなので、ココでキレイに推理がハマって犯人を追い詰めた時の爽快感は最高ですね!


⑤全体の感想
まずですね?このゲームは序章から始まり1-6章と続き、6章終了時点で黒幕というか、起きた事件に対しての大体の謎を解き明かしてエンドロールが流れるのですが・・・
この時点での俺の感想は
『は?』
の一言でした(笑)
もしこの時点で所謂☆を付けるレビューをしたら、間違いなく☆1を付けてました(笑)
確かに犯人は分かった。でも、ぶん投げられてる伏線は多数あり。説明不足、意味の通らない部分も多数ありの状態。
エンドロールを見ながら、よく映画とかでもありますがエンドロール後にちょっとしたシーンがあるやつ。それがあるかとも思ったのですが、残ってる伏線の量を考えるとちょっとした1シーン追加されたくらいじゃ多分全部の風呂敷を畳みきれない・・・じゃあ、クリア後シナリオが出るタイプ?それとも二周目以降でトゥルーエンドに行けるタイプのゲーム?それともガチでこれで終わり?でもディレクターは428~封鎖された渋谷で~の人だから、こんな形で終わる訳あらへんよな・・・と、色々考えてました(笑)
そしてエンドロールが終わりタイトル画面に・・・
軽く絶望した時に見つけましたよ“終章”の存在を
(ココでは敢えて、終章への入り方は記載しません)
そして、寝ようと思っていたものの終章を始めたところ・・・
前述の評価は全てひっくり返りました。
全ての謎、伏線をキレイに畳み、またその上でさらなるサプライズをプレイヤーにしかけてきました。
心の底から『やられた・・・』という、良い意味での敗北感を感じました。
詳しくはネタバレになってしまうので語れませんが、小説ならともかく、まさか映像を主体とした作品でコレをヤラれるとは思ってもみなかった・・・。
間違いなく傑作ですよ、コレ。
粗というか、推理編については操作性の問題などがあるのは事実ですから、手放しで全てを褒める訳じゃないですが、少なくてもシナリオと、その見せ方、またあくまで“仮説”を集めるに止めプレイヤーに推理させる構成、ミステリーを題材とするゲームにおいて、最高のモノだったと思います。
デメリットとしては、何度か書いている推理編の操作性と、絵合わせという作業になってしまう部分。
また、コレはしょうがない部分ではありますがこの手のゲームはどうしても“知らない”から面白い。
二周目までは、真相を知った上でやり直す事で伏線に気付くプレイも楽しいですが、そこまででしょう。一周のプレイ時間は人にも寄るとは思いますが15時間前後だと思うので、二週目は真相が分かってる事を加味すると合計でも25時間くらいかな?これでフルプライスだとちょっと値段が高く感じるかもしれませんね・・・(自分はセールで買ったのでそこまでではなかった)



余談
これは、メリットデメリットというより人に寄るなと思ったので、余談という形で。
このゲームは、基本的には現実に即した世界での話ではありますが、物語の核のとなる設定の部分に一部ファンタジー要素があります。
ミステリーというジャンルに対して、このファンタジー要素をどう捉えるか。という部分でシナリオに対する感想が分かれるかなぁと思いました。
個人的な気持ちで語ると、確かにファンタジーではありますが
『この密室殺人は、犯人が魔法で殺しました』
みたいな、ミステリーの根幹であるトリックに関わってくる話ではないので、別に良いのかなぁと。
動機には思いっきり関わってくる設定ではありますが、同時にこのゲームの最大の肝でもあるこの“唯一のファンタジー要素”
これをどう捉えるか。それを話題にプレイヤー同士が語り合うのもまた一興かもしれませんね。

2022/08/12追記
8/10にアップデートが入り、自分が記載した不満点のほとんどが解消されましたので、その点を追記。
①推理編の操作性アップ
まず、カーソルの移動速度が変更出来るようになった事、ヘックス型の型に嵌める際の当たり判定が大きくなった事で、単純に操作のストレスが大きく軽減されました。
②推理編で、仮説を生み出した時のムービーがスキップ可能
言葉通りですが、二週目以降のプレイにおいての快適性が段違いでした。
③推理編の【手がかり】の模様のオンオフ
これも言葉どおりではあるのですが、オフにする事で【絵合わせ作業】ではなく、きちんとプレイヤー自身が【この謎に対する手がかりはコレ】と思考する必要が産まれ、推理ゲームとしては段階が上がったなぁと思いました。
また、単純に無くすのではなくオンオフとした事で、プレイヤーサイドによる難易度調整という側面が出来たのも個人的には凄く良いアップデートだなと。
④前文の修正
解説ページで見れる前文・・・『犯人は単独』とか、色々前提が書いてある部分があるのですが、そこが変更されました。
敢えてココでは何がどう変更されたのかは書きませんが・・・。
結論としてはかなりの良アプデ。
だって、個人的に思っていた不満点全部改善されましたしねw
惜しむのは、この完全な状態で一周目がやりたかったこと。
この手のゲームはどうしても一周目の初プレイが一番面白いですからね。
これからプレイされる方には、オススメ度合いが相当レベルアップしたアップデートとなっていたので、未プレイの方は是非!


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