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流れのままに ⑧


 春にわたしがパートになるのを待って、主治医の先生の外来診療の日に合わせて休みをもらう勤務体制にしていくことになった。本格的に体外受精にむけての治療が開始された。そして、体外受精にむけて、まずは採卵のため自己注射が始まった。注射の手技は思っていたよりも平気だったが、やはり痛い(痛くない時もある)。


 治療が進んでいくなかで、子どもを持ちたいという思いは同じなのに、その過程で微妙に夫と思いのずれが生まれていた。夫はもう少し自然に任せてもいいと思っていたようだけれど、わたしは1日でも早い方がよかった。卵巣機能が低下していくことは知っていたし、今後、もし、子どもを育てていくとなると体力が必要だったからだ。

 今、仕事と家庭のことでこんなにへとへとなのに、子育てできるのかと不安になっていた。


 わたしが1人で婦人科に受診した時には、夫からどうだったか聞いてほしかったし、普段飲まない薬を飲むことへの体の負担や、少なからず痛みを伴う自己注射を打ってることに配慮してほしかった。
 そんなことをいちいち言わないと察すれない夫に苛立った。わたしが不機嫌になり、夫はその理由がわからない。説明をしないといけないことがなんだか虚しかった。自分1人が辛い気持ちになり、モヤモヤした。一度、心がきゅっと固くなり、トゲトゲした心になるとなかなか元には戻れない。夫に対して、一度、【妊活していることは、あなたにとって他人事】といってしまい、ひどく夫を傷つけてしまった。自分がこんなにひどい人間だったのかと自己嫌悪になる悪循環。
 


 どれもこれも、全部ホルモンのせいにしてしまいたかった。


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