ある空オケヴィオラ奏者の殴り書き、あるいは回想に類するもの

(この文章は色々と試行錯誤してなんとかヴィオラソロ・オーケストラ内のトリオを弾ききった奏者のぼやき、というか回想らしい。しらんけど。)

ヴィオラは渋い楽器です。

ヴィオラは良い楽器です。バイオリンより低くチェロより高い音が出て、ある意味人の声に近い音域で演奏できます。
良い曲はたくさんあるけど、ブラームスのヴィオラソナタなんてほんま渋くて良い曲です。

そんなヴィオラですが、やっぱり渋い音というか良い音を出すには力みすぎず丁寧なボーイング、柔らかい左手の運指が必要だったりします。
クラシックなら、、、、

対して今回は、ギラヒム様ですよ。ギラヒム様。
そんな渋いとかいうお方じゃ有りません。
バリッバリにとんがって、インパクトあるお方です。
そんなお方の音楽だからこそ、ソロだったら音量もあって美しくも歪みのある音を届けるしかないでしょう。。。

そうなったときにビオラでそういった音が出しやすいのか。
非常に渋いです。特に音量が出ません。出ないのですよ。。。
(音楽教室のコメントにも手厳しく書かれる始末な楽器です。)

そういう楽器ですので、本番で客席に音が届くまでになかなか大変なみちのりを経てきました。

ヴィオラソロが本番当日に客席に届くまでのみちのり

序盤:やっぱりならへんわ・・・

まあ聞いていただいた方はわかると思いますが、重音の山ですしテンポも速い楽譜です。初合わせはぼろんぼろん。テンポが速くて指が追いつかない、ピアノ・カスタネットともなかなか合わない。ということで最初期はかなり必死で譜面をさらっていました。

そんな感じで練習することで一人で演奏する分にはなんとか弾けるようにはなりました。だけれどもやっぱり音量が出ないし、固い音しかでない。この時点でちょっとやばいと焦り始めてます。特に楽器がならない。元々比較的圧力をかけてあげないとなりづらい楽器だったので、圧力をかけると今度は音色が死ぬ。

中盤:楽器を買う、師匠に教えを請う、暗譜を考え始める

どうするんや!ということで決断しました。楽器買い換え。円安の影響も出る前で今しかねぇ!というタイミングで楽器屋さんへ。
ヴィオラという楽器はなかなかマイナーな楽器でしたのでなかなか良い楽器には出会えません。
ただ運良く1挺がなかなか良い感じじゃないですか。楽器の弦も普段使う弦に変更させてもらって、2週間ほど検討してお買い上げです。
お金はふぁさっふぁさっと飛んでいきましたが、満足感は半端有りません。
ちゃんと鳴るんですよ。しかも弓の圧のかけ具合やらなんやらで音色もしっかり変わってくれる。良い楽器を手に入れることが出来ました。
(懐具合は最悪やけどな)

楽器は良くなったわけですが、奏者の腕はすぐに上がりません。昔から数々のアンサンブルをこなし、ハーリヤーノシュのヴィオラソロをこなしたりと経験は比較的多い方ですが、なかなか音に艶感と激しさが両立しません。
ということでゲーム音楽の師匠になきつきました。
ここで古い楽器での癖で弓の圧力をかけすぎていた、という事を理解出来てまたちょっと良くなってます。

そういえば、重要なイベントもというかきっかけもこの時期です。
オーケストラのパートソロは基本スポットライトがあたったりなんてしないわけですが、今回急に「スポットライトあてるよ」とか言われるわけです。
え?目立つスポットライトですか。楽譜とか立ってたら後々色々問題になるかも、ということで暗譜を検討し始めます。

終盤:え、そこで調子悪くなるんですか?ホール、おまえもか。

さて個人的に色々工夫してきたのは中盤ぐらいまでです。そこからはトリオの練習を全体練習の隙間時間にやったり、編曲者のりゅうさん交えて音色などをすりあわせたり粛々と進めていました。誰かがなんか書いてるやろうとは思いますが、終盤になってオケのクオリティもぐっと上がって良い感じなってきました。この辺りで暗譜でいける程度まで個人の品質も上がり、暗譜で行くことを決断しました。

こんな感じで良かったんですが、やっぱりトラブルはいつもそこに居ます。

本番5日前、来るべきソロに向けていつものように上行形の音形の練習していました。C線:悪くない、G線:なかなか、D線:(すこっ)、A線:普通。なんかD線がおかしい。音の曇るポイントが拡大している。なんやこれとよく見たらD線がほつれはじめてて芯線が折れかかっている。。。
普段半年は持つはずのD線が1ヶ月ちょっとで劣化ですわ。。。
交換したらよいもんですが、アマチュアの練習頻度なら音程などが安定するのに1週間以上かかります。本番にちょっと間に合わねぇ。
ここでも決断です。駄目なD線とリスクのあるA線を交換しました。音程を安定化させるために結局本番前日以外はかなり弾きこんでいます。

そして本番当日です。ギラヒムサウンドを出すために準備してきたものを全て発揮する日です。
そうして直前の練習に入った訳ですが今度はホールの響きがなんか微妙な感覚に。にしやんに聞いてもらうと、チェロやヴィオラが全然きこえないとのこと。

ホールよ、おまえも妨げるのですか。。。
弦楽器はホールに音響を助けてもらわないとなかなか響きません。
ホールの助けがないのですから、マイクの力を最大限借りるしかないわけです。けれどもマイクをホールで使った経験はほとんど無く、練習出来る時間もほとんど無い。どうするんですか。。。
とここで神の声というかおにく先生のアドバイスがあり、マイクにぎりぎりまで近づいてなんとかマイクで音が出始めました。
そのあともむっこーさんにご相談して微調整です。

・・・
(本番の事は緊張しすぎたのかなにも書かれていない。ただし第2部の始まる前にメンバーからへんなプレッシャーがかかり、冒頭で一部盛大に入るタイミングを間違えたようだ)

ふりかえってみて

素晴らしいギラヒムサウンドを出すために今回足掻いてきましたが、正直言って綱渡りというかある意味奇跡的な部分が多々ありました。

素晴らしい譜面がなければ音として表現しようが無く、
良い楽器で無ければ大きな音に幅広い表現を持たせることができず、
音程のリスクを背負ってでも悪い弦を交換しなければ当日は良い音が出ず、
おにく先生やむっこーさんのアドバイスがなければマイクにできるだけ近づくという発想がなく、
暗譜をしていなければマイクと楽器の位置関係をうまくコントロールをすることができなかった。

それにしても編曲者りゅうさんや運営のあいらさんはすごいと思います。
悪い言い方になりますが得体の知れないぽっと出の一般募集ヴィオラ奏者に高難度の譜面を演奏させるなんてなかなか決断できません。
今回はおそらくむっこーさんというジョーカーというか最終手段があったからかもしれませんが、それでもその手段を準備しておくことができた事が良かったのだろうと思います。

逆に今回の演奏を聴いてアマチュアでヴィオラソロを入れようとされる方がいたらお伝えしておきたいことが一つ。
「見知らぬヴィオラ奏者に絶対に無理させないように。下手したらお互い後悔するかもしれませんよ?」

まあ、僕は楽しかったですけどね。
関係者のみなさま、またお会いしましょう。


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