高IQ者の苦悩について 高い知性はコミュニケーションを阻害するか

「IQ が高い人は孤独を感じている」「IQ が20違うと話が合わない」等よく言われている。果たして、高IQ者(ここでは上位2%以内としておく)はその高い知性ゆえに人と関われないのだろうか。

私自身、IQ132ある。これは、心理士を目指す学生の練習台として、研修医の時にWAIS-Ⅲをやってもらったスコアである。当時はWAISを把握してなかったので、知識によって修飾されていない数値と考えてよいだろう。その後、精神科医として多くの患者さんにIQ 測定を施行してきた。なので、自分自身と会話相手のIQを把握しながら対話を行うことが出来る稀な立場である。一方、学生時代も職場でも、数多くの医学生・医師と交流をしている。もちろん医師にも様々な方がいてIQも其々だろうが、医学部に現役合格し、大学でも部活に励みながらストレートで国家試験に合格できる人たちは大体が高IQ者だろう。

というわけで、知的能力障害から高IQまで幅広くの方とお付き合いさせて頂いているが、大抵の方との会話はかみ合っているし、うまく疎通を取れていると思う。例え、相手と私のIQが60以上離れていても、だ。

精神症状の強く出ている急性期を除いて、会話の特にかみ合わないと感じる集団は、やはり神経発達症の患者さん達だ。もちろん、彼らも日常的に他人と分かりあえない苦悩を多かれ少なかれ感じていることだろうし、その苦悩ゆえに受診される方も多い。中には「私は頭の回転が速すぎて、会話がかみ合わない」「ギフテッド故に結論に飛躍してしまうから会話が合わない」と自己分析されている方もいる。そう言ってはいるが、知能検査をやってみると、そこまで飛びぬけてよいわけでもなかったこともある。つまり、高IQ者が感じるものと同質の苦悩を、神経発達症の方々も感じているのだろう。

少々脇道に逸れるが、高IQ集団であろう医学生や医師たちを見ると、ほとんどの方が神経発達症といってよさそうだ。ただし、この群は総じて社会適応はよく、非障害性自閉スペクトラム症が大多数を占めているだろう。

以上から、私なりの仮説を立ててみた。

ギフテッドあるいは高IQ者のほとんどは神経発達症の特性を持っている」

なお、ギフテッドと自閉傾向についての研究は調べた範囲では見つからなかった。なので、機会があれば、メンサの会員の皆様にAQ(自閉スペクトラム症指数)を是非やってみたい。一つの簡単なペーパーに出来るかもしれない。

高いIQで悩んでいる方。この記事をみて、自分自身を考える一つの材料にしていただければ幸いだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?