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読書メモ・せきしろ「7つの方法」(藤岡みなみ『超個人的時間旅行』タイムトラベル専門書店、2023年)と、思い出のラジオCM

今日(2024年8月23日)のTBSラジオ「武田砂鉄 プレ金ナイト」のゲストは自由律俳句俳人のせきしろさんだった。私はこの対談を聴いて初めて知ったのだが、せきしろさんはコントグループ・シティボーイズが所属する芸能事務所「ASH&Dコーポレーション」に所属しているのだという。しかも若手漫才師の「十九人」と同じ日に事務所入りをしているようで、私よりも2歳下のおじさんが若手芸人と肩を並べて事務所入りしたというのは、私にとっても希望を与える(何が?)。
せきしろさんについて、もちろん名前は知っていたが、このラジオを聴くまでよくわかっていなかった。でもそういえば、以前にせきしろさんのエッセイを読んだことがあるなあと記憶をたどっていったら、藤岡みなみさんの『超個人的時間旅行』というZINEにエッセイを寄せていて、それを読んだのだった。
このZINEのコンセプトは、そのタイトルにあるようにタイムトラベルに関するエッセイを集めたアンソロジーで、執筆者は多種多様の切り口で、このZINEのコンセプトに合うエッセイを書いている。
せきしろさんの「7つの方法」と題するエッセイは、本書のコンセプトに比較的忠実な内容で、自分は未来にはまったく興味がない、タイムトラベルをするとすれば過去に戻りたい、という願望のもとで、「7つの方法」を提示する。

①財布の中のレシートを見る
②ポケットを漁る
③ストリートビューを見る
④昔住んでいたところに行く
⑤古い雑誌を読む
⑥古い曲を聴く
⑦ラジオCMを聴く

たしかにどれも過去に戻るための重要な方法だ。いま私はおもに⑥を実践しているのだが、それよりもあらためて読み直して私の心に響いたのは、「⑦ラジオCMを聴く」だった。これについてせきしろさんはこうコメントしている。

「私は一時ラジオばかり聴いていた時期があって、深夜放送が拠り所になっていたのだが、その頃のラジオCMを聴くとタイムトラベル感が味わえる。それはプレイガイドのCMだったり参考書のCMだったり缶コーヒーのCMであったりするわけだが、どれも強烈に記憶に刻み込まれていて、時にはラジオ本編よりもタイムトラベル度が高くなることもあるのだ」

私はこのコメントに大きく頷く。当時のラジオCMを聴くことが、その当時のラジオの本編を聴くよりもタイムトラベル度が高くなるというのは、実によくわかる。
私にとって「過去にタイムトラベルできるラジオCM」として筆頭にあげられるのは、「春日井ののど飴」のCMである。15秒ほどの短いCMなのだが、そこで流れている、なんとももの悲しいメロディーと女性の歌声は、私をたちどころに過去に引き戻してくれる。深夜1時からの深夜放送の中でこのCMが流れると、なんともいいようのない孤独感に苛まれて、それがまた心地よかったりしたものだ。
深夜放送ばかりではなく、私が明確に憶えているのは、TBSラジオで夕方に放送していた「若山弦蔵 東京ダイヤル954」という生放送の番組でもこのCMが流れていた。若山弦蔵さんのあの渋い声と、「春日井ののど飴」のもの悲しいメロディーは、いまでもセットになって私の心の中に残り続けている。
動画サイトで「春日井ののど飴 CM」と検索すると、あのCMをいまでも聴くことができる。そのたびに私は、過去にタイムトラベルしている。


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