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「書楽」のあとに

都内で所用があったついでに、阿佐ヶ谷駅で途中下車をして、南口の八重洲ブックセンターに立ち寄った。
ここは今年(2024年)の1月まで「書楽」という名前の本屋さんだったところで、私もしばしば立ち寄っていた。阿佐ヶ谷の人たちに長く愛された本屋さんがついになくなってしまうというニュースを聞いた時は、その後はどうなってしまうのだろうと気になっていた。
「書楽」閉店後に八重洲ブックセンターがそのまま書店を引き継ぐらしいと知ったのは、TBSラジオ「武田砂鉄 プレ金ナイト」のアフタートーク(YouTube配信)である。あの砂鉄さんが、阿佐ヶ谷の「書楽」のことを気にかけていて、「とりあえず書店が続くことになりホッとした」と言っているのを聴いて、「書楽」閉店の影響が思いのほか大きかったことを実感したのだった。

もともと東京駅の八重洲口にあった八重洲ブックセンターには、学生時代によく通った。その当時は国内最大の書店として知られていて、私も通うたびにワクワクしたものだった。が、丸の内口に丸善ができると、もっぱら丸善の方に行くようになり、自然と足が遠ざかってしまった。…と思っていたら、2023年3月に、周辺エリアの再開発のために東京駅の八重洲ブックセンターは営業を終了することになってしまった。そのときのニュースによれば、営業終了を惜しむ声が多く、最終日には多くの人が駆けつけたということだったが、私もまた寂しかった。
「書楽」を引き継いだのが、その八重洲ブックセンターだというのだから、そのめぐり合わせの妙に感嘆せざるをえない。

書店に入ると、「書楽」の雰囲気そのままで安心した。決して広い書店ではないが、それがまたよい。書店の中をぐるりとめぐりながら考える。書店はさながら小宇宙だ、と。

私は中央線沿線の駅前書店が好きだ。阿佐ヶ谷駅南口の書楽、西荻窪駅北口の今野書店、吉祥寺駅北口のBooksルーエ、国立駅南口の増田書店。チェーン店も入れてよければ、三鷹駅前の有隣堂書店と啓文堂書店、武蔵小金井駅北口のくまざわ書店、など。気兼ねなく時間が使えるとすれば、中央線沿線の書店めぐりをしたい。もちろん、古本屋さんも含めてである。

さて、阿佐ヶ谷の八重洲ブックセンターの店内をめぐっていて、例によって私の悪い癖が出た。つい本を買いたくなってしまう癖である。「時間のかかる終活」と銘打って、最近は蔵書を少しずつ整理し始めたにもかかわらず、まだ本を増やそうとする。
何を買ったのかだって?
頭木弘樹『口の立つやつが勝つってことでいいのか』(青土社、2024年)と、小林聡美『茶柱の立つところ』(文藝春秋、2024年)の2冊である。いずれも私の好きなエッセイストだ。
頭木さんは、「絶望」をキーワードに多数のエッセイを書いている。小林聡美さんは、私が10代の頃からファンの俳優である。
私のここ最近の情報源は、もっぱらラジオで、ラジオで紹介された本を探して読むことが多いのだが、本屋さんをめぐっていて偶然出会う本こそが「邂逅」と呼ぶにふさわしい。
2冊の本を同時に読み始めたが、どちらも今の自分のコンディションにフィットする。いずれこの場でも感想を書くかもしれない。

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