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「早期発見」という言葉の圧力

ホテルで大出血をした時、「ああ、子宮癌だ。なぜこうなるまで気づかなかったんだ!私は…」と思いました。
レディースクリニックで癌だと診断された時も「看護師のくせにこんなになるまで気づかなかったなんて!看護師失格だ!」とまで思いました。

レンタカーに戻り、夫に電話をしました。
癌だと告げると、夫は「○〜ちゃん(娘)の一番大切な時期に!」と言って嘆きました。
それが一番正直な気持ちでしょう。
私もそう思いました。

私の母にも電話しました。
地元の病院をすぐに受診するために新幹線の駅まで迎えに来てもらう必要があったからです。
母は「女は忙しくて自分のことを後回しにしてしまうから、こんな事に…」といって嘆きました。
この年になって親に心配をかけるなんて、私はなんて親不孝なんだと泣けてきました。

娘には心配をかけたくなかったので、その時は癌であることは話さず、「お母さんは地元の病院で検査をしないといけなくなったから、お父さんと交代するからね。」と伝えました。

検査の間も、大出血で緊急手術をして退院するまでの間もずっと自分を責め続けました。

「看護師なのに」と。

でも、折り合いもつけ始めました。
娘が大学受験をする時に私が病気で手術になっていたら、娘は私のことが気になって大学に入学できなかったかもしれない。
娘が高校を卒業できるか否かの瀬戸際だった時に私が病気で手術になっていたら、娘は私のことが気になって卒業できなかったかもしれない。

あの時で良かったんだよ!

手術をして退院する日に娘は帰ってきました。
ホームシックになって。
痩せ細っていました。
娘の気持ちが落ち着いてきた時に癌であることを伝えました。
これからしっかりと生きていってほしいと思ったからです。

色々話しました。

娘は「看護師だから癌にならないってことはないよ。」と言いました。
「看護師だからって早期発見できるわけでもないよ。」とも言いました。

確かにそうです。

私は医療従事者というプライドから自分を責め過ぎていたのです。
気持ちが少し楽になりました。

8月、娘は夏休みで帰ってきました。
ホームシックでボロボロだった5月とは違って、しっかりとしていました。

私の病気は娘が大人の階段を登り始めるきっかけになったのかもしれません。

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