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SURREALISM:15

SURREALISM VERSION:15

生還論 過誤死魔から愛を込めて/黄泉一労
「死魔に侵された老婆の逸話」
アカシア病院 観察室。腹痛を訴える、ひとりの老婆が居る。
誉田千恵子 年齢不詳 入院歴3カ月/1回目

誉田さんは空腹だから腹痛が起こっているのに
頭で理解出来ないせいか、上げ膳据え膳を無下に断った。
時には日々の配膳食を、
熱血親父のようにちゃぶ台返しの要領でひっくり返すことも。
「食べられんっちゃあねえ~~~!」悲痛な叫びを
「食べられんっちゃあねえ~~~!」何度も繰り返す。

完全に過誤であり、死魔に侵されたCASEである。
アカシア病院に入院経験があると言い張る黄泉は
観察室で、誉田さんと相部屋になった記憶が残る。
誉田さんは黄泉とトモダチになりたかった様子で
実際に口に出してそう言った履歴も残っている。

黄泉は誉田さんの不調時には、随時、ナースコールを押して
処置対応を求めた。彼女はナースコール自体を欲しがったが
きちんと黄泉に対しても、感謝の念を抱いていたようだ。

老婆 は一日にして奈落、面白半分に見出しを付けるなら
ローマは一日にして成らずのもじりがこの状況に付随する?
黄泉が振り返るに、誉田さんは真綿で首を締めるように
一日一日と病状が進行して行った印象が拭えない。
事実、彼女は入院の後半を車椅子に乗って過ごした。
自力歩行出来ないほどに、両脚の筋力が落ちたと見ていいだろうか?
***
SURREALISMの直訳は「超現実(主義)」である。
老婆の闘病記は「超現実」のカテゴリに該当する?
極限まで追い詰められた感じは「超」を付しても良いような気も。
死魔と表現する病気の進行具合からの生還は、言葉以上に難しい。

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