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私のテコンドー 三話

三話「なりたくない」
「お前、何で姫乃に付きまとってんだよ。見え見えなんだよ下心が。」
「・・・・・・へ?」
「とぼけんじゃねーよ。ゲスが。」
「いや、・・・・・・あ!そろそろ3時だよ!閉まっちゃう前に着替えたいな~。なんて・・・・・・。」
「あ?・・・・・・・・・・・チッ。さっさと着替えろ。というか何で着替えてねぇんだよ。このウスノロ。」
・・・・・・はぁー!!??さっきから口悪くないかこいつ。くっそ、あいつなんてワイヤレスイヤホン駅のホームで落としちまえ!!!それか目薬永久に失敗しろ!!!
なんて、他人の靴下の柄くらいに下らないことを考えながら俺は着替えて道場を後にした。

・・・・・・・・・・・・・・。
「姫乃はもう帰ったぞ。今度こそ聞かせてもらうからな。なんでお前みたいな奴が姫乃とつるんでいるんだよ。」
・・・・・・ですよね。居ますよね。
「・・・まず、前提がおかしいでしょ。質問に質問で返しちゃうけどなんで俺は姫乃に関わったらいけないのさ?」
「お前みたいな奴がいると迷惑なんだよ。お前みたいに、『誰か』を目的にしてスポーツする奴は大抵すぐへばる。姫乃はそういうのが何より許せねぇんだよ。」
何言ってんだこいつ。自論押し付けやがって。
「じゃあお前の目的は何なんだよ。さぞかし立派なんだろうな。知り合いでもない奴にこんな説教できるんだから。」
「俺?俺はな、ある人を守りたい。」
「他人関わってんじゃねーか。」
「違えしバカ野郎。守るのは俺の勝手だ。相手の望みじゃない。」
・・・・・・?
「意味不明なんだけど?」
「あっそ。じゃあもう来んな。姫乃にも関わんな。」

何なんだよ何なんだよ何なんだよ何なんだよ何なんだよ何なんだよ!!!!!!!!!!!!!!
脳にあの声が木霊している。
スポーツする理由なんて、どうだっていいだろ!!!なんで制限されなきゃいけないんだよ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・でも、納得してしまう自分も居た。 『誰か』に影響され、何かを始めてみてもすぐやらなくなる。実際、このようなことは何回もあった。そして辞めるたび言う。
「自分には向いてなかった。」
「この人も難しいって言ってるし。」
って投げ出す。そして、いつしか何も挑戦しなくなる・・・・・・。
今回もそうなるのかな・・・・・・。

「・・・・・・ってなりたくねえわバーカ!!!!!!」

これ以上魅せられたまんまで終わるかよ!!!これ以上自分を変えるきっかけを失ってたまるかよ!!!!!!もう、諦めたくない。もう、時間を無意味に過ごしたくない。もう、もう二度と!!!!!!自分に嘘をつき続けたくなんかない!!!!!!!!!
「決めたぜ。俺がテコンドーをする理由。」

そして来た土曜日、道場に向かっている途中であいつに会った。
「・・・・・・なんで来たんだよ。」
「お前に決意表明をしに来た。」
「いや、だから何回も言って・・・」

「俺さ、姫乃のことが好きなんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・やっぱり『誰か』が関わってんじゃねぇか。」
「話聞けよ最後まで。俺さ、小さい頃から何も好きなことがわからなくて毎日適当に生きてたんだよ。そんで最近、嫌なことから姫乃が助けてくれて、自分のしたいことに忠実な姫乃がかっこいいって思ったんだ。」
「・・・・・・つまり、何が言いたいんだよ。劇的に言っても感動しねえし。」

「だから俺は、俺がテコンドーやりたい理由は、姫乃に『かっこいい』って言わせること!かっこいいって思うのは姫乃の意思だから俺は関係ないしな。」
「・・・・・・・・・・・・いや、もう姫乃っていう好きなものあんじゃねーか・・・・・・。」
「あれ?凰翔と結弦。珍しい組み合わせで何してんの?」
姫乃!?うわあっっっっぶね!!!!!!告白まがいの俺の決意表明聞かれるところだった!!!
「・・・てか、あんた結弦って名前だった・・・・・・」
結弦の顔が薔薇色に染まっていた。
・・・・・・これは、ひょっとして・・・・・・・・・?
「結弦、もしかして俺のこと姫乃の彼氏だって勘違いしたの?」
「は、はあ!!!????ば、ばかばか違うし!断じて違う!!」
「ほーーーーーーーう?そうですかそうですか。」
「・・・・・・ライバルで悪かったな。ちなみに俺の名前は森田結弦だ。簡単に結弦なんて呼ぶなよ。俺のこと名前で呼んでいいのは姫乃ちゃんだけなんだからな!」
なんだよ。ただのガキか。

「これ申請書です。」
「はーい確かに受け取ったよ。みんな〜集合。」
ぞろぞろと人が集まってくる。
「改めて自己紹介して?凰翔くん。」
「っ皆さんはじめまして!渡辺凰翔です。これから、よろしくお願いします!!」
もう二度と、適当に生きようとしない。今はこれしか考えれなかった。

森田結弦 設定


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