晴れの日も、曇りの日も、雨の日も

 こんな絵本があります。元の題名は、「年取った豚」( OLD PIG)というのですが、翻訳では「ぶたばあちゃん」になっています。
 ぶたのおばあさんが孫娘といっしょに暮らしていました。ある朝、おばあさんはベッドから離れることができなくて、ごはんを食べずに、そのまま眠り続けます。昼ごはんの時も、夕ごはんの時にも、起きてきませんでした。
 翌朝おばあさんは、ほんのわずかでしたが、おかゆとお茶を口にしてから、図書館に行って、借りた本を返し、次のはもう借りませんでした。銀行に寄り、預けておいたお金を全部引き出して、口座を閉じました。それから、いろいろな支払いをすませて戻り、残ったお金を孫娘の財布にしまいます。
 用事が終わると、おばあさんは孫娘といっしょに散歩に出ました。おばあさんは何度も休まなければなりませんでしたが、日の光を浴びてきらめく木の葉、ゆっくりと流れる雲、池に映る家、途中で降りだした雨も、立ちのぼる土の香りも、そのすべてを心ゆくまで味わいました。疲れて家に帰ったおばあさんは、孫娘に抱かれて眠り、静かに息をひきとります。
 この絵本のおばあさんは、世を去る時が来たことを感じて、いのちの恵みを最後のひとしずくまで味わいつくしました。これは、おばあさんがその生涯をどのように過ごしてきたか、表わしているように思います。
 このおばあさんのように、晴れのような日も、曇りや雨のような日も、嵐のような日も、ひと時ひと時にいのちの恵みを見つけることができるなら幸せです。

 


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